国や都道府県の発意で事業 土地改良法の見直し方向(1)2024年12月9日
農林水産省はこのほど土地改良法の見直しの方向性を明らかにした。標準耐用年数を超過する農業水利施設が大半を占めているなか、農業者からの申請だけでなく、国や都道府県の発意による事業実施も可能とする。
土地改良法は農地や農業水利施設の整備を実施するための手続きを定めている。事業は原則として受益農業者からの申請と3分の2以上の同意に基づいて国、都道府県、市町村、土地改良区が役割分担して、農業水利施設の整備や農地の大区画化などの工事を行う。
また、水路や水門など造成された施設の維持管理を行う事業もあり、土地改良区がその事業を実施している。
ただ、農村人口が減少するなど情勢が大きく変化するなか、土地改良事業について改正基本法では、防災・減災、スマート農業、水田の畑地化も視野に入れた農業生産基盤の整備、老朽化への対応に向けた保全などの方向を打ち出した。
農水省は土地改良区へのアンケートや意見交換会を実施して土地改良法の見直しを検討してきた。
その結果、このほど課題と対応方向を明らかにした。
課題は施設の老朽化だ。食料の安定供給を図るうえで重要な基幹的農業水利施設の約5割が標準耐用年数を超過している。
2万3539か所のうち、すでに標準耐用年数を超過した施設は53%(1万2413か所)に達しており、今後10年間で標準耐用年数を超える施設を加えると全体の69%(1万6248か所)となる。
それら施設の更新を進めるには受益農業者による手続きの負担を軽減する必要があるとして、農水省は農業者からの申請による事業だけではなく、国や都道府県の発意による事業も可能とする。国や県が事業計画概要を公告し、3分の2以上の同意徴集を行ったうえで事業計画を決定する。
人口減少で集落の共同活動が将来、立ち行かなくなる可能性があるが、現在は基幹的水利施設の維持管理はおもに土地改良区が担い、末端の水利施設は地域住民の共同活動で維持管理している。
土地改良区は受益面積300ha未満の小規模な土地改良区が7割を占め、約5割は専任職員がいない。
そのため今後は土地改良区を中心に集落、市町村、JA、農業委員会など関係者が議論する枠組みを設け、役割分担のもと、水利施設の保全を行うビジョンを策定する仕組みをつくる。農水省はビジョンの策定とその実践を予算や制度で後押しする考えだ。
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