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農政:時論的随想 ―21世紀の農政にもの申す

(70) 選挙公約はどう25年度予算に反映されたか2013年2月7日

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【梶井 功 / 東京農工大学名誉教授】

・「非公共」予算は減少…
・米の「直接支払い」、算定方式になお問題
・新規就農支援、内容充実はかれ

 1月29日、13年度農水予算概算決定額は2兆2976億円だとようやく発表された。前年度対比5.7%の増である。本欄(67)で図示しておいたように、2000年以降減り続けていた農水予算の13年ぶりの増である。政権交代がもたらした画期的変化といっていいかもしれない。
 が、この額は、前政権が置いていった13年度農水予算概算要求額2兆3166億円(12.9.5民主党農水部会了承)を190億円下回るし、民主党に政権を譲ったその年の農水予算2兆5605億円より2629億円も少ない。

◆「非公共」予算は減少…

 1月29日、13年度農水予算概算決定額は2兆2976億円だとようやく発表された。前年度対比5.7%の増である。本欄(67)で図示しておいたように、2000年以降減り続けていた農水予算の13年ぶりの増である。政権交代がもたらした画期的変化といっていいかもしれない。
 が、この額は、前政権が置いていった13年度農水予算概算要求額2兆3166億円(12.9.5民主党農水部会了承)を190億円下回るし、民主党に政権を譲ったその年の農水予算2兆5605億円より2629億円も少ない。この概算決定額で自民党は、衆院選で公約に掲げたさきの“政権交代後に大幅減額された予算を復活”した、と胸を張れるのだろうか。
 “政権交代後に大幅減額された予算”は、公共事業費、そのなかでも農業農村整備費だったが、14年度概算決定額の中で確かに公共事業費は、前年対比132.9%という大幅増となっているし、09年度予算との対比では、補正と合わせて09年度を上回ることを示す次のようなが付け加えられている。

農業農村整備費について

 “土地改良団体が自民党支持基盤になっているとの小沢判断による削減と巷で噂された削減”を真っ先に復活したのは如何にも自民党らしい、といえるのかもしれない。が、公共事業費が前年度対比で32.9%も伸びたが、全体の増が5.7%にとどまるということは非公共事業費は減だということであり、3.1%の減となっている。これでいいのだろうか。

◆米の「直接支払い」、算定方式になお問題

 非公共事業で前年対比減になった諸事業のなかで、その減少額の大きさで特に注目を要するのは経営所得安定対策のなかの「米の直接支払い交付金」の減である。この予算は前年度予算では「米の所得補償交付金」といわれていた予算だが、1929億円から1613億円へ、316億円の減となっている。経営所得安定対策ではもう一つ、これも米についてだが前年度294億円だった「米価変動補填交付金」が84億円へ、210億円の減になっていることが目立つ。下がり続けていた生産者米価がこのところ持ち直してきていることが反映されての措置である。
 “所得補償から農地を農地として維持する支援策に振り替えて拡充(多面的機能直接支払い法)”が自民党の選挙公約だったが、制度変更は14年度以降とし、13年度予算では“戸別所得補償制度は生産現場の混乱を避けるため、名称を「経営所得安定対策」に変更するが、米の10アール当たり1万5000円の交付金単価などは据え置いた”(13.1.30付「日本農業新聞」)のだという。それでも米価変動の影響は前述の交付金予算の大幅減をもたらしているのである。当然、仕組みの検討が必要になろう。「米の所得補償交付金」の補償単価算定方法には、その基礎になる“標準的な生産費”が全生産費を使う他作物とちがって米だけは“経営費+8割の自家労働費”をとるという問題があった。(46)回の本欄で表示しておいたように、07年米生産費調査全国平均値で計算すると60kg当たり全算入生産費1万6412円に対し経営費+8割自家労働費は1万2972円でしかないことを、改めて吟味してもらいたいものである。

◆新規就農支援、内容充実はかれ

 前年対比増になった非公共予算のなかでは、前年度21億円が244億円になった「強い農業づくり交付金」、2284億円が2517億円になった「水田活用の直接支払交付金」、136億円が239億円になった「新規就農・経営継承総合支援事業」の3つに、私は関心を持つ。
 “国産農畜産物の安定供給のため、生産から流通まで強い農業づくりに必要な共同利用施設の整備等を支援する”「強い農業づくり交付金」は、09年度予算では244億円組んでいたのに、民主党政権になっての10年度予算で144億円に減らされ、以後民主党政権下では減少に減少を強いられ12年度予算では21億円になってしまっていた予算である。それを民主党に政権を譲った直前の予算規模に復活させたわけである。自民党農林族の執念との所差といっていいかもしれない。
 “産地の工夫を生かしつつ、水田で麦、大豆、新規需要米等を生産する農業者に対して主食用並みの所得を確保するための交付金”を行う「水田活用の直接支払交付金」は、これあってこそ“米の独往性”(金沢夏樹)がこわれ、水田農法の変革が可能になる。(この点については拙著「『農』を論ず」農林統計協会刊を参照いただければ幸甚)。今後とも手厚い予算配分を望みたい。
 「新規就農・経営継承総合支援事業」の重要性は改めていうまでもないだろう。“フランスにおける若者の就農支援策を参考にしながら”つくったとされるこの事業の重要性、是正してもらいたい点など、本欄でも数回((52)(58)(64)等)取り上げたので繰り返さないが、予算増と同時に支援内容も検討してほしい。

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