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農政:時論的随想 ―21世紀の農政にもの申す

(81)農政改革、真意を問え2014年2月6日

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【梶井 功 / 東京農工大学名誉教授】

・農家不安で支持率低下
・交付半減で現場は打撃
・首相の発言、国会論戦を

 昨年12月末に行われた日本農業新聞農政モニター調査結果が、1月15日同紙に発表された。1・17付同紙論説は"安倍内閣の支持率は53.3%と、2012年12月の第2次安倍内閣発足以降5回の調査で最も低くなった""第2次安倍内閣の支持率は、発足時の66%を最高に、60%前後の高水準を保ってきた。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加表明に前後する昨年3、4月の調査でも大きく下げることはなかったが、今回は前回6月からマイナス8ポイントと落ち込みが際立つ"と指摘、"急展開した経営所得安定対策の見直しなど一連の農政改革に対する農業現場の不安が、支持率低下の大きな要因となった"と論じていた。

◆農家不安で支持率低下

 このモニター調査で、私などが特に関心を持ったのは、「農業者の方にお聞きします。米の直接支払交付金の単価が半減になることは、あなたの農業経営や、あなたが関わっている集落営農や農業生産法人などの経営に影響しますか」という問14と、「米を生産している農業者の方にお聞きします。2014年産の生産数量目標が大幅に削減になりますが、今回の見直しを受けてどう対応する考えですか」という問15に対する答えである。こうなっていた(1・15付同紙より)。

日本農業新聞農政モニター調査問14、問15の回答結果

◆交付半減で現場は打撃

 飼料米には10a当り最高10万5000円、最低5万5000円の数量払い助成金を出すことになっている。この措置で飼料米10a当りの所得は5万5000円になるイメージだと農水省は試算している。直接支払い交付金が半減される食用米の10a当りの所得イメージ、3万5000円とならべて提示していたが、飼料用米等の本作化がこれでやれるし、直接支払い交付金半減も打撃にはならないというのが農政当局のイメージ提示の意図だったのにだろう。
 が、現場の受取り方は全くちがっていることを、この“大きな打撃である”とする者が52.6%を占めるモニター調査の結果は示している。
 飼料米重視政策への転換について、全農林刊「農村と都市を結ぶ」の昨年12月号の時評は次のように論じていた。

 “水田農業の救世主としての飼料用米の役割を高く評価し、その長期的・安定的な拡大を願ってきた時評子にとっては、飼料用米自体の推進方向には異論がない。だが、今回もまた札束で顔を殴るかのような政策誘導の仕方には一抹の不安を覚える。そこには金の切れ目が縁の切れ目といった将来の安易な政策転換をの可能性の影がちらつくからだ。”

 農村の現場では“将来の安易な政策転換の可能性”がより強く受け留められているのではなかろうか。“一抹”どころではない“多大の”不安を感じていることが「大きな打撃である」とする者52.6%という数字が示しているとしていいし、「主食用米の作付面積は変えない」44.8%に“札束で顔を殴るかのような政策誘導”には安易に乗れないという農業者の意志が示されているとしていい。“安易な政策転換”をさせないような保証をどうやってつけるか、国会で議論してほしい重要課題がそこにある。

◆首相の発言、国会論戦を

 “安易な政策転換”を許さない保証に関連して、安倍首相のこのところの発言をそのままにしていいのか、を問題としておきたい。
 1月22日スイス・ダボスでの世界経済フォーラム年次総会の基調演説で、安倍首相は生産調整問題にふれ、“日本では久しく不可能と言われてきたことだ”が、これを“民間企業が障害なく農業に参入し、作りたい作物を需給のコントロール抜きに作れる時代が来る”ようにすると述べたそうだし、1月24日通常国会冒頭の施政方針演説では明確に“40年以上続いてきた米の生産調整を見直す。いわゆる「減反」を廃止する”と宣言した。
 この首相発言に、減反廃止ではなく生産調整の手法の見直しというのが党としての考え方であることから“自民党農林議員に困惑が広がっている”(1・25付日本農業新聞)という。本当に持続性のある施策立案を考えているとしたら“困惑”しているだけでなく、首相に訂正を求めることをやるべきではないか。今までのところ、どの党からもこの発言を問題視したということは聞こえてこない。

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