農政:時論的随想 ―21世紀の農政にもの申す
謙虚で真摯な農政を2017年11月12日
日本農業新聞は、衆院選開票が行われ、自民党の大勝が判明した翌日の10月23日「敵失による自民大勝。今回の衆院選はそれに尽きる。安倍晋三首相への強い支持の結果ではない。政権に求められるのは国民の声に耳を傾け、意見が分かれる問題には熟議を尽くす謙虚な姿勢である。農政も同様だ。」という一節を冒頭にして「敵失の自民大勝謙虚な政権運営求める」と題した社説を掲げていた。
◆敵失が選挙の勝因
同じことを安倍首相御自身も感じておられたのかもしれないが、同日行われた自民党本部の記者会見で、"今後の政権運営において「今まで以上に謙虚で真摯(しんし)な政権運営に努めないといけない」と改めて強調した"(10・24付「同紙」)という。首相のこの発言を踏まえてなのかどうか判らないが、翌24日の閣議後の記者会見で齋藤農相も、"自民党の大勝した衆院選について「数におごることなく謙虚に政権運営を果たしていく」と述べ、丁寧な農政運営に取り組む考えを強調した"(10・25付「同紙」)そうだ。
◆規制会議 また極論
"謙虚で真摯"になっているかが当面問われるのは、規制改革推進会議が今取り上げている卸売市場法見直しの問題であろう。10月27日の農業新聞ニュースアイの記事を拝借しよう。
"同会議は(10月)25日に会合を開き、同法見直しの議論に着手。農水省から同法の取引規制について説明を受け、委員の間で意見を交わした。会合終了後、事務局の内閣府が行った説明によると、委員から早速、過激な意見が相次いだ。
ある議員は「『受託拒否の禁止』の廃止の是非は議論の余地はあるが、その他の規定は当然要らない」と発言。...『受託拒否の禁止』を除き、他の主要な取引規制は廃止すべきだと主張した。
複数の委員からは「(同法は)ゼロベースで見直すべき」との意見が続出。農水省が「必要なもの(取引規制)は最小限にしつつ、見直しを行い成果を得たい」と応じる場面もあったという。
議論がほとんどないまま、いきなり大胆な取引規制の廃止論が飛び交う展開に、自民党農林議員は「これまでと変わらぬ廃止ありき。謙虚な政権運営とは真逆で、批判は免れない」と反発する。"
◆立法府の存在意義は?
"謙虚な政権運営とは真逆"な政権運用になり勝ちな首相座長の規制改革推進会議等のありかたについては、再三、国会から与党も含めて批判的な決議が行われている。随分前になるが、"立法府の存在感示せ"と題して第80回本欄(13・12・20)で紹介した次の一文「アドバイザリー・グループである産業競争力会議・規制改革会議の意見については参考とするにとどめ、現場の実態を踏まえ現場で十分機能するものとなることを第一義として、制度の運用を行うこと」などは一番早い公的文書での批判だろう、これは13年11月8日成立の「農地中間管理事業の推進に関する法律」成立の際つけられた15項目にわたる附帯決議の最後の一文である。この附帯決議にはもちろん与党の先生方も賛同していた。
同様の決議は、今年も二回行われている。一回目は5月25日衆院農水委員会での畜産経営安定法改正案可決の際に全会一致でつけられた附帯決議であり、"規制改革推進会議の意見は参考にとどめ、現場実態を踏まえ、制度の運用を行う"とあった。
もう一回が6月10日付本紙でも報じていた"参院決算委決議 与野党全会一致"の"規制会議の運営 改善要求"である。この参院決算委員会の「措置要求」中の関係箇所(10項目中の第3項)を引用しておこう。
「3 規制改革推進会議による各府省等設置の審議会等における検討状況の把握について
政府は...経済社会の構造改革を進める上で必要な規制の在り方の改革に関する調査を行う規制改革推進会議を内閣府に設置している。同会議は、各府省等における規制について、各般にわたる意見を述べているが、各府省等に設置された審議会等での提言や議論を十分に把握した上で検討、提言する運営になっていないとの懸念もある。
政府は、規制改革推進会議を運営するに当たり、各府省等の審議会等で関連する議論が行われている場合には、これを十分に把握して審議すべきである。」
"「措置要求決議」とは、行政の制度や事業実施の枠組みなどが、不正や無駄の原因になっている場合に、政府に対して国会が是正措置を求めるもの"(本紙記事より)だそうだ。こうした措置要求決議に素直に対応してこそ"謙虚で真摯な政権運営に努め"たことになるのではないか。
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