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農政:田代洋一・協同の現場を歩く

【田代洋一・協同の現場を歩く】2世代かけた集落営農法人化 山形県真室川町「ひまわり農場」2019年7月30日

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 集落営農、農協、生協といったさまざまな「協同」の取り組みの現場を訪ね、その息吹を伝える田代洋一横浜国立大学名誉教授の新シリーズ。第1回は、集落営農の現場を訪ねた。

ひまわり農場の構成員のみなさんひまわり農場の構成員のみなさん

 

◆24年前-任意組織

 秋田との県境のどんづまりの集落・塩根川を三度お訪ねした。1995年にお会いした地域のリーダー、佐藤亮一さん(今年5月に84歳で逝去)は、満蒙開拓で「共同」の良さも悪さもかみしめてきた。その教えを踏まえ、94年、本家筋の40代の後継者5人による部分作業受託組織「ひまわり農場」が設立された。
 「ひまわり」には、「地域を日の当たる場所にしたい」という気持ちをこめた。育苗、田植、収穫、無人ヘリ防除、伊豆方面へのコメ販売など担当を決めて行い、大豆転作は協同で行った。

 

◆14年前-法人化せず

 設立趣旨文は「部分的な生産組織でいいのか」、「周年就業できる新しいタイプの組織を育てるべき」としていた。その首尾をみようと2005年に再訪した。結果、法人化は見送り、それぞれの担当が自立する方向をたどっていた。無人ヘリ防除は1500ha受託の「ヒマワリ企画」となり、米販売も独立した。しかし地域は一つの「ひまわり農場」とみていた。つまり「ひまわりグループ化」だ。役場担当者も含め酒を飲みながら将来について語りあかした。組合長の高橋清一さんは、どの家も後継者がいないので法人化が必要と力説する。いや、法人化すると条件の悪い田も借りねばならない、農地をまとめると「やませ」の被害を受けやすいといった反論も強く、結論はでなかった。法人化は難しい印象だった。

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◆ついに法人化

 しかるに今年、県農協中央会担い手サポートセンターに見せていただいた集落営農法人協議会リストに「ひまわり農場」の名があった。しかも有数の大組織として。さっそく再再訪し、前回お訪ねした直後から事態が動いたことを知った。2007年、及位(のぞき)北部地区(塩根川・新及位・朴木沢)で特定農業団体を立ち上げ、4年後の2010年に任意組織の構成員4人で「農事組合法人ひまわり農場」が設立された。折からの品目横断的政策や特定農業団体、その法人化といった政策が背景にあろう。しかしそれだけでない。05年には作業受託は30ha程度で横ばいだったが、各メンバーの借地は合計20haに伸びていた。地域自体の作業受委託から賃貸借への機が急速に熟しつつあったのだ。
 法人の2代目組合長になった高橋さん(前出、2年前に65歳で逝去)は、佐藤亮一さんの息子の孝和さん(現49歳)の引き抜きを農協に直談判し、孝和さんが昨年3代目組合長になった。他の構成員3人もそれぞれ代替わりしている(1人は女性で農業委員)。水稲・大豆、ブロッコリ、事務とみつばをそれぞれ担当している。

 

◆法人の農地と作付け

 法人の経営面積は190ha、うち農地法3条の賃借権76ha、これは塩根川集落が多い。その他は全作業受託が主で集落外が多い。塩根川では1戸を除いて全て集積(45ha)、及位北部をとっても農地の9割は法人が管理している。
 賃借権は期間10年で小作料は現物で1俵(全体の7割)、作業受託は小作料1万円で1年ごと。小作料は、燃料費も上がったので、遠いところは徐々に下げたい。なぜ3条かは不明だが、貸し続けるつもりなので法定更新をむしろ是としているようだ。その点も含めて貸借については「難しい土地柄」だという。
 地権者は197人、1980筆にのぼり、最遠で片道1時間以上かかる。最近では耕作放棄地の借入が多く、年に数㌶を復旧している。地区内には耕作放棄地はないという。規模拡大するほど遠距離となり条件が悪くなるので、そろそろ歯止めをかける時期に来た。
 作付けは主食用米21ha、飼料用米27ha、大豆97ha、牧草19ha、子実用デントコーン13ha、ブロッコリ11ha(量販店との契約栽培、25haまで拡大意向)、ミニトマト、みつばなど園芸作が1haほどだ。
 水管理が難しく主食用米は近場しか作れず、反収も6.8俵と低い。飼料用米は大豆の連作障害対策でもあり、籾米サイレージ化している。大豆3年―子実コーン3年―ブロッコリ3年の輪作である。また耕畜連携で、稲わらを収集し代わりに堆肥をもらい雪上施用している。
 出荷先は農協、資材も8割が農協から。収入保険には積極的に入った。

 

◆各年齢層にまたがる雇用

 雇用は14人、うち男性が11人で、20代と60代が各3人、50代2人、30、40、70代が各1人と年齢的に分散している。うち5人は12~3月は町の臨時職員として除雪に従事する。理事の1人がそれに携わっていて、仲間を連れてきた。通年雇用者は、冬場は堆肥散布、機械修理、女性はみつば栽培に携わる。女性1人が隣町からの他は全員が町内出身だ。人手は不足しており、あと3人ほど雇用したい。賃金は日給、ボーナス1カ月程度と通勤手当が付く。
 水管理は、近場は法人で行い、他は地権者3人に地区を決めて委託し、10a4000円弱を払う。畦畔管理は従業員の「雨の日」仕事だ。

 

◆これから

 過去2年平均の収支は、売上額4800万円、営業赤字が9600万円になる。営業外収益(助成金等)1.1億円で、基盤強化準備金を積み立てつつ、黒字にしている。条件不利は否めず反当粗収益が低く経営は厳しい。役員報酬等・労務費・支払地代といった農業所得相当部分を合計すると7000万円弱で、助成金は所得のみならず物財費も補填している。
 「ひまわり」はほ場未整備のハンディを覚悟で法人化したが、このたび及位北部地区100haのほ場整備事業に取り組む合意形成ができた。これで最大50a程度のほ場が生まれ、地域は一変する。法人の理念は、耕作放棄地を出さない、米単作から脱却する、交付金に頼らない農業、耕畜連携(自然循環)、である。日本水田農業の課題への真正面からのチャレンジだ。「ひまわり」の名には、「農場が集落の様子をよく見渡して仕事する」「集落から農場を認めてもらえるように」の願いを込める。「ひまわり」とは農場でもあり地域でもある。
 四半世紀の歳月と二世代をかけて実現した法人は、雇用型の少数精鋭の生産者組織だが、それを支えるのは「地域を守る」集落営農の精神だ。東北の集落営農は枝番(経理・出荷一元化)が多いが、中山間地域はどこでも協業集落営農だ。それはいずれ山から里に降りていく。

本シリーズの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

田代洋一・協同の現場を歩く

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