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農政:与野党の政策責任者に聞く「どう進める? 今後の農政」

水田フル活用政策 複数年助成を検討 参議院議員・野村哲郎自民党農林部会長2019年8月8日

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 7月の参議院議員選挙では、成長産業化を掲げて農業・農協改革と、TPP協定など通商交渉も進めてきたアベノミクス農政も争点となった。各党とも農政公約を掲げた選挙を通じ、選挙結果や現場の声をふまえて今後、どう農政に取り組むのか主要政党の農業政策担当者に聞く。

◆中山間地対策に力


--参院選では地方、農村の現場について改めて何を感じましたか。

参議院議員 野村哲郎自民党農林部会長 まず、日米協議がどうなるのか高い関心がありました。これは国会で安倍総理も答弁していますし、われわれも公約のなかできちんと書きましたが、TPPや日EU・EPAといった過去の経済連携協定以上に譲らないという基本線ははっきりしています。そこはきっちり守ってくれということはみなさんから言われましたが、二国間の首脳が文書で交わした約束事ですから、われわれは1ミリたりとも譲らない。そこを譲ってしまうと国会以前に、まず党を通りません。われわれ農林幹部としても通さないと強く訴えました。
 それからみなさんが心配していたのが、中山間地域が衰退していることで、集落機能がなくなってしまう、なんとか再活性化する仕組みづくりをといわれました。
 これは森山農相時代にわれわれも強く要請して実現し、今は中山間地域ルネサンス事業となっていますが、最初は農業予算のなかで中山間地域を対象に400億円の優先枠を設けてもらったという政策です。今年の予算は440億円になっています。
 一時期、産業政策として強く言われたのが大区画化など大規模経営づくりを中心にした事業でした。しかし、それでは中山間地域がますます衰退していくということから、中山間地域枠を設けたわけです。事業を申し込んでも大区画化などの事業のほうが点数が上がってしまい、中山間地域が置いてきぼりを食う。だから枠を設けて、たとえば中山間地域の数ヘクタール規模の土地改良事業でも採択されるようにするということです。
 中山間地域直接支払い制度などと組み合わせながら、集落機能も維持し、みなさんの活動をこれからもバックアップしていこうということです。


--この秋からは基本計画の見直しも議論されます。どう対応しますか。

 われわれは審議会のメンバーではありませんから基本計画についてなかなか直接的に話ができませんが、党の部会でも、でき上がった基本計画を承認するだけなくわれわれの意見も入れるべきだという話が出ています。当然のことだと思います。審議会メンバーだけの議論というよりも、むしろ現場をいちばん走り回っているのが地方出身の国会議員で、そういう議員がいちばん地域の課題を把握していると思います。
 自給率がまた下がるなか、今、世界ではいろいろな通商問題が惹起されていて、日本人の食料安全保障は本当に大丈夫かということは国民のみなさんが懸念している。どう自給率を高めていくのかも課題です。狭い国ですから他の国のように一挙に自給が確保できるような国ではないことは重々承知していますが、輸入も含め食料安全保障をどうするか議論をしなければいけない。
 その際、自給率目標は高ければいいというものではなくて、本当に達成可能な目標数値をきちんと設定しながら、それに向けてどういった取り組みをしていけば自給率は上がるのか、具体的にやっていかなければならないと思います。どの品目を伸ばせば自給率が上がるか分かっているわけですから、そういう品目を中心に具体的な議論をしていかなければならないと思います。


--今年は米政策の見直し2年目です。課題と今後の方向はいかがですか。

 私がいつも言っているのは、米・コメ複合だということです。単品専作型ほどリスクの高いものはないと思っています。主食用米の需要が年々減っている中で、主食用米と飼料用米、加工用米などに分けていく。
 非主食米については国からの交付金があるわけですから、収入はほぼ安定しています。しかし、主食用米は全部市場価格に委ねられているわけですから、過剰になると安くなるなど価格の変動もある。それができるだけないようにと、水田フル活用政策として非主食用米を作ってもらうことを支援するということです。とくに飼料米、備蓄用米に取り組んでいただきたい。
 それには今のように単年度ごと取り組んでもらうのではなく、3か年契約、5か年契約というかたちでの契約栽培に取り組む必要があると考えています。そういう契約栽培を進めないと飼料用米を利用しようとする飼料工場や畜産農家も安定しない。
 備蓄米も含めてこういう仕組みを検討していきたいと考えています。

◆改革で成果 農協は脱皮


--JAグループの改革の取り組みはどう評価しますか。

 農協改革は規制改革会議から提言や答申が出され、農協法改正にまで至りました。これには組織内外から批判のあることは十分分かっていましたし、党内でも組織の皆さんとも議論しました。しかし、今回の改革のすべてが悪とは思いません。
 ヒナが孵るときはヒナが中から突き、なおかつ外から親鳥が突いて殻を破る。今回はまさしくそれに似ているのではないか。というのも私も組織の中にいたとき、ここは変えなければおかしいと内側から殻を突きましたが、なかなか変らなかった。それが今度は外から突かれて、やはりそうだったかと、農協のみなさんも非常に改革に力を入れていただきました。
 まだまだ足りない部分があると思いますが、評価を受けている1つが全農改革だと思います。肥料、農機を従来より低価格で提供しており、やればできるじゃないかということですが、これまではやはりこういう自己改革の取り組みは弱かったと思います。
 官邸農政と野党の人たちもよく言いますが、それがあったから目覚め、非常に自己改革が進みつつあると思います。農協法改正のときの代表質問で、私は、脱皮できない蛇は死んでしまうと言いましたが、ようやく脱皮し始めたというのがわがJAグループの自己改革ではないかと思います。
 准組合員の問題は、全国のJAが全組合員の意向調査をしたら、まだ中間段階ですが、やはりこの制度は必要だという結果が出ています。
 郵便局と駐在所、そして農協は地方のインフラです。このインフラを壊してはいけない。農協は合併が進んで支所がなくなっていく。それで交通弱者の人たちはモノも買えない、貯金も利用できないということになりかねないので、農協は移動購買車などで対応していますが、これはサービスなどというものではなく、農協であれば当たり前の役割だと思います。
 そのことは准組合員も含めて分かっていますから、准組合員のあり方については農協の自主判断に任せればいいではないかと、二階幹事長からも言ってもらいましたから、われわれも力強く思っているところです。農協が自ら判断しても、准組合員の仕組みはなくせとか、制限をしろという声は絶対出てこないと思います。

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