農政:農は国の宝なり
【農は国の宝なり】第7回 地産地消で農工両全を目指す 群馬県太田市清水聖義市長に聞く2019年12月13日
今回は群馬県太田市の清水聖義市長へのインタビューを紹介します。
全国でも珍しい市運営の精米センター(2016年12月の落成式)
関東地方の北部、群馬県南東部に位置する太田市は、自動車メーカーSUBARU(旧富士重工業)の企業城下町で、人口約22.4万人、世帯数約9.7万世帯の関東内陸工業地域を代表する工業都市です。
農業は、東が米麦中心、西に野菜(施設・露地)、北西部に畜産、と幅広く農畜産物の生産がなされています。特産物としては、やまといも、小玉スイカ、高糖度トマトなどがあり、モロヘイヤは全国1位の生産高を誇っています。
市内には、JA太田市(太田市の旧太田市地区と藪塚地区を管内)、JAにったみどり(みどり市に本店を置き、太田市の旧新田町、旧尾島町を含む)、東毛酪農業協同組合(専門農協)があります。
◆注目すべき太田市精米センター
小松 農業施策の目玉として「地産地消」を推進されていますね。
清水 そうです。まずご紹介したいのが、太田市精米センターを核にした取り組みです。当センターは、安全安心で新鮮な米を米飯給食に提供することで、米の地産地消と消費拡大を目指しています。
市が精米センターを運営するのは全国でもあまり例がないそうです。2016年12月に完成し、翌年の1月から稼働しました。対象校数は、公立幼稚園4、公立小学校26、中学校16、太田養護学校1、対象人数は2万0896人(教職員1251人を含む)。1日当たり精米生産必要量は約1.8tで、米飯給食が1ヶ月13日で年間130日実施予定ですから年間234tを提供しています。
(写真)清水市長
◆乳幼児検診者に精米引換券
小松 米が子育て支援にも活躍していますね。
清水 「誕生祝米配布事業」という事業名で、4ヶ月検診時と1歳半検診時ごとに、精米5キログラムの引換券をお渡ししています。もちろんお祝いのプレゼントですが、これによって、受診意欲を高めるとともに、受診の有無から児童虐待や育児放棄のサインを見ることになります。そんな副次的効果も狙っています。
◆地域に根ざした学校給食
小松 学校給食には米以外でも太田市産の農産物が使用されているのでしょうか。
清水 2016年頃から「学校給食おおたを食べよう」に取り組んでいます。「おおたを食べよう」の実施を知らせる「給食だより」(2018年1月号)には、次のように書かれています。
「日頃から、太田市産の農畜産物を使用した学校給食を実施しておりますが、さらに地元農業への理解を深めるとともに、地元食材(野菜)の地産地消の良さを理解してもらおうと、特にこの時期、多くの種類の野菜が採れる冬に実施することになりました。......メニューは、太田市産の米を使用した米飯、牛乳、白菜を使用したあったま汁、大根を使用した大根サラダや、太田市で開発したやきそばソースを使用しての、やきそばを、提供させていただきます」(要約)
「地域に根ざした給食」を意識してくれていますよね。
それから、つくることにも関心を持ってもらうために、米づくり体験事業や農業体験活動事業(サツマイモの苗植えから収穫まで)に取り組んでいます。
サツマイモ苗の植付に向かう児童(2019.5.31)
◆6次産業化と農福連携
小松 6次産業化にも力を入れておられますね。
清水 給食だよりで紹介されていた学校給食用ソースも、原料比ベースで市内産75%、県内産25%のものを開発しました。それから、センターで精米された地場産米を原料とした商品開発に取り組み、2018年7月から農福連携事業の商品"毛野国(けぬのくに)おおた薄焼き煎餅「穂之歌(ほのか)」"を販売しています。
小松 どのような農福連携でしょうか。
清水 市内の障害福祉サービス事業所「ありさんち」が精米をセンターから購入し、県外の米菓会社に生地生産を委託します。その生地を買い戻して、「ありさんち」がせんべいに焼き上げます。「道の駅おおた」などで販売していますので、ぜひお買い求めください(笑)。
◆フードバンクは行政の仕事
小松 フードバンクへの取り組みも興味深いですね。
清水 県内のNPO法人での取り組みを見学し、「フードバンクは住民の暮しや命を守るもの。行政のやるべき仕事」と思い、2016年に「フードバンクおおた」を立ち上げました。市が直営するフードバンクは珍しいと聞いていますが、生活困窮者の支援と自立促進の一助になればと思っています。
◆JAの貢献は大。JAグループの今後には課題あり
小松 JAとの関係は良好なようですが。
清水 これまで紹介してきた取り組みの多くに、JAの貢献は大です。また市の農業がつつがなく取り組まれている訳ですから、パートナーとしてこれからも連携していきたいです。ただ、連合会になると、かなり遠い存在に見えますので、その辺がJAグループの課題かなと思います。
◆農政への注文と今後の地域づくり
小松 農業政策についてご意見をお聞かせください。
清水 土地改良事業などのハード面の整備は、農家がやる気になっている時に迅速にやり遂げて欲しいですね。時間がかかりすぎます。それから現場が求めている事業と、国が示す事業とがピタリとはまらないことが多いですね。国の事業に現場が合わせても良い結果は生まれません。最近では、「収入保険」制度がその典型かな。
小松 最後に、地域づくりの展望をお聞かせください。
清水 国内外の友好関係を構築している都市との交流を深め、補完関係を創り上げることで、今まで以上に暮らしやすい工業都市にしていきたいです。そこで働く人やその家族にとって、農業が身近にあることは極めて健康的なことですから、もちろん農業を守り、均衡の取れた都市づくりをめざします。
小松 太田市が農工両全のモデル都市になることを願っています。
小麦畑から望む金山
本シリーズの一覧は下記からご覧いただけます
【シリーズ・農は国の宝なり】聞き手:小松泰信(一社)長野県農協地域開発機構研究所長
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