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農政:農は国の宝なり

【農は国の宝なり】第10回 JAと二人三脚で創る全国屈指の施設園芸産地 楠瀬耕作須崎市長インタビュー2020年4月13日

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小松泰信(一社)長野県農協地域開発機構研究所長

 今回は高知県須崎市の楠瀬耕作市長へのインタビューを紹介します。

須崎市農業の代名詞ハウス栽培ミョウガは全国シェア90%須崎市農業の代名詞ハウス栽培ミョウガは全国シェア90%

 須崎市は高知県のほぼ中央に位置し、県都高知市から西に約30㎞。市の西部には1979年にカワウソが我が国で最後に発見された清流新荘川が流れています。
 1950年代後半には人口約3万5000人でしたが、 少子高齢化が進行し、2020(令和2)年1月末現在、人口2万1445人、世帯数1万0815戸です。 
 農業は本市の主要産業です。ハウス栽培によるミョウガ、キュウリ、ピーマン、シシトウ、花きなどが主要作物です。
 市内には、須崎市全域と高岡郡津野町、同郡中土佐町それぞれの一部を事業区域とするJA土佐くろしおがあります。


◆やはりミョウガです
 小松 須崎市の農業といえば、年間市場売上が約68億円のミョウガですね。

 楠瀬 ミョウガの全国シェアーは約90%で、須崎市の代名詞となっています。高知県の園芸を支える戦略品目の1つですから、栽培技術の向上、安全・安心の確保、コスト削減、さらには流通・販売の強化に努めて、県内の各産地を牽引していく責任産地と自負しています。

 小松 JAの果たしてきた役割は大きいですよね。

 楠瀬 もちろんです。系統出荷率100%がすべてを物語っています。1980年に入って、価格低迷にあった当時の基幹品目キュウリの後継作物として本格的に栽培されることになりました。1999(平成11)年に導入された養液栽培の急速な普及により県内一の産地となりました。

 小松 その後も新技術の導入が積極的に取り組まれたようですね。


楠瀬須崎市長楠瀬須崎市長

 楠瀬 2012年以降、燃料高騰対策リース事業としてヒートポンプ、夏期の温度低下と湿度制御を目的とした粒径の小さな細霧発生装置、さらには炭酸ガス施用装置やハウス環境測定装置などがJAの強力な指導で導入されました。

 小松 行政としても積極的に産地づくりに取り組まれたのでは。

 楠瀬 JAの組合長さん、JAが事業区域にされている中土佐町と津野町の町長さんとご一緒にトップセールスをしています。ミョウガに限らず、農業が持続的に営まれるよう、長期的展望に立った取り組みを行っています。主な農業振興策としては、園芸用レンタルハウス整備事業、産地パワーアップ事業としてミョウガ養液栽培用循環装置整備、集落営農組織などにトラクター、コンバインの導入を補助する複合経営拠点整備事業などです。

 小松 園芸用レンタルハウスの整備は、新規就農者に好評でしょう。

 楠瀬 ここ数年、毎年10名以上の新規就農者を迎えています。産地としてのまとまりや勢いに加えて、レンタルハウス効果もあります。


◆JAとは二人三脚
 小松 JAとの関係は良好のようですが。

 楠瀬 これまでの話から、悪いわけはないですよね(笑い)。ミョウガに限らず、こまめに圃場やハウスを回り農家の声に耳を傾けておられます。それから、JA100%出資の子会社「村営みのり」を設立され、水稲生産を受託されています。設立の目的は、水田をお持ちの農家の方々が施設園芸などに集中できるようにとか、高齢化による水田の耕作放棄地化を防ぐといってた目的のためです。心強いパートナーです。だから、県1JAに参加されなかったことに、正直ホッとしています。われわれも二人三脚のつもりで農業振興に努めますので、単独で行けるところまで行ってほしいです。


◆第一次産業を衰退させない農政を
 小松 国の農政についてはいかがでしょうか。

 楠瀬 施設園芸地帯ですから、稲作に重きを置く自治体ほど農政に対する要望や意見はありません。できるだけ国の制度を上手に利用して農業を振興していくつもりです。もちろん、目立った第二次産業がなく、第一次産業に多くを依存する自治体としては、第一次産業を衰退させるような政策はとってほしくないですね。


◆地域づくりと地域おこし協力隊
 小松 人口減少下での地域づくりにおいて、地域おこし協力隊の存在も大きいようですね。

 楠瀬 人口減少に対する即効薬はありませんが、現在地域おこし協力隊を6人採用し、活躍してもらっています。1人は英語の堪能な方。海外からの農業研修生や留学生(明徳義塾高校)が多いので、その人たちの相談役になってもらっています。必要に応じて外国からの観光客への対応もしてもらいます。本市には国際的にも評価の高いカヌー場があり、チェコ共和国カヌー代表チームの東京オリンピック直前の合宿地となっています。そこを活用したイベントや大会開催の企画運営をカヌーの競技経験者を含む2人に取り組んでもらっています。さらに、全国ゆるキャラグランプリ2016において本市のキャラクター「しんじょう君」がグランプリを獲得させていただき、現在、国内をはじめアジアやヨーロッパなどで、その「しんじょう君」による須崎市をPRする取り組みに2人、そして南海トラフ地震などへの防災対策の啓発活動などを1人の方に取り組んでもらっています。


◆自然環境と第一次産業を大切にした地域づくり
 小松 最後に、これからの農業振興や地域づくりについての抱負をお聞かせください。

 楠瀬 第一次産業が基幹産業であるということは、自然が豊かであることを意味しています。その逆もしかりです。だからこそ、食べ物も新鮮で美味しいわけです。110㎞の海岸線は絶好のドライブコースです。磯釣・船釣りなども楽しめます。先ほど紹介したカヌーやわら焼きかつおのタタキ体験など体験型教育旅行も可能です。
 この恵まれた自然環境を保全しながら第一次産業を振興する。保全と振興を両立させることを基本としたうえで、そこに第二、第三次産業をいかに絡ませて地域全体を盛りあげていくかが課題ですね。

 小松 須崎名物「鍋焼きラーメン」が注目され、週末には県内外から多くの観光客が訪れているとのこと。美しいリアス式海岸と新荘川に代表される美しい川は心安らぐ環境です。農林漁業の底上げを基本に置いた、須崎市ならではの地域づくりを期待しています。

 
本シリーズの一覧は下記からご覧いただけます
【シリーズ・農は国の宝なり】聞き手:小松泰信(一社)長野県農協地域開発機構研究所長

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