農政:薄井寛・20大統領選と米国農業
拡大するコロナ禍の農業被害―追い打ちをかける原油価格の急落【薄井寛・20大統領選と米国農業】第2回(上)2020年5月12日
ワシントンではコロナウイルス感染収束前から、大統領選挙の前哨戦が激化している。そこには、コロナによる農業被害の拡大と原油価格下落に連動したエタノールの下落と生産半減など、中西部農業州を襲う深刻な問題があると、薄井氏は指摘する。
5月11日までに47の州が経済活動の再開に踏み切ったが、中西部の農業州では感染拡大に歯止めがかからない。福祉施設や食肉加工場でのクラスター発生に加え、刑務所などでの集団感染が続いているためだ。
5月10日までの2週間、ニューヨーク州の感染者と死者はそれぞれ16%、19%の増に留まったが、中西部12州の増加率はそのほぼ3倍(59%、56%)。同地域最大の農業州で人口315万人に過ぎないアイオワ州では、感染者と死者が5868人、127人から1万1959人(2.0倍)、265人(2.1倍)へ増えた(人口1395万人の東京では10日現在、それぞれ4868人、180人)。
◆主食の食肉が購入制限へ
農業被害は甚大だ。農業団体の試算によると、2~3月だけで大豆とトウモロコシの先物市場価格と牛肉・豚肉価格はそれぞれ8~14%、25~30%下落。消費者の飲食費総額(1兆7000億ドル、約180兆円、2018年)の55%も占める外食需要(日本での外食費は食料支出の約20%)が、3月13日の非常事態宣言で急減したからだ。学校給食の停止も牛乳価格を25%以上低下させ、青果物にも深刻な打撃を与えた。
出荷先を失った農産物の大量処分にメディアは注目する。4月には全米で毎日1万4000トン(生産量のほぼ6%)の牛乳が棄てられ、フロリダ州やカリフォルニア州では50億ドル(約5500億円)もの青果物が未収穫のまま処分された。メキシコからの合法的な移民労働者が感染を恐れ、収穫農家へ十分に集まらなかったからだ。
5月初めまでに38カ所の食肉加工場が最大600人規模の集団感染で閉鎖に追い込まれ、牛肉供給の10%、豚肉の25%以上に影響が及んだ。5月10日現在、都市部では多くのスーパーが食肉の購入制限を続けている。
供給減で食肉の小売価格が上がる一方、苦境に陥る畜産農家は増えた。カーギル社などの食肉加工場は家畜の出荷適期を農家へ提示し、その重量と肉質に応じて買取価格を決める。だが、加工場の閉鎖で多くの農家は出荷の適期を逃し、家畜の重量オーバーで肉質は劣化。余分な飼料代が増え、販売価格は下落した。また、多くの加工場は近日中に事業を再開するが、労働者の感染防止のために加工ラインでの作業は減速。農家の出荷頭数の抑制は続くと懸念されている。
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