農政:数字で見る日本の農業
担い手高齢化進む【数字で見る日本の農業】第2回 2020年5月12日
労働力は、農地と並んで、農業生産力を左右する重要な要素である。それは農家のあり方に大きな影響を与える。今回は、農業従事者や農家の数、規模から日本農業の特徴をみる。
労働力不足が深刻な野菜産地(群馬・嬬恋村で)
【労働力】担い手高齢化進む 60歳以上が7割に
日本の産業別就業者数(15歳以上)は平成30年で6664万人。うち農業従事者は203万人で、全就業者の3%に過ぎない。この5年間、ほぼ横ばいだが、中身は大きく変化しつつある。
実際の農業を支えている販売農家(145万人)の基幹的農業従事者(普段、仕事で主に農業に従事している者)の年齢をみると、最も多いのが65~70歳で、販売農家全体の27%を占める。次いで75歳以上が26%で、65歳以上の占める割合は68%に達する。地区別では北海道が約40%で中国地区は82%を占める。
前年に比べ、販売農家全体で6万人近く減少。年齢層で増えているのは65歳以上74歳までで、他はすべて減少している。特に働き盛りの50~59歳14万人、60~64歳25万人がいずれも1年で消えている。
政府が農業の担い手として期待する認定農業者も伸び悩んでいる。平成31年で23万9043の経営体が認定されているが、この5年間でほとんど増えていない。地区別で最も多いのは関東で約5万1000人。東北(約5万人)、九州(4万6000人)がこれに続く。
一方で、農家以外で農業経営を行うために農地を所得する「農地所有適格法人」は増えており平成30年で1万8236法人。うち株式会社が6194で、5年前より約2500増えており、全体の増加数4000の6割を占める。
ちなみに一般法人の農業参入は平成30年で3286。26年の1734に比べ約倍増となった。業種別では米麦が4割以上を占め、次いでそ菜、畜産の順となっている。さらに農業経営や農業施設などの共同利用、農作業の共同化を行う農事組合法人は平成31年で9416あるが、これも5年間でほとんど変化がない。
なお、新規就農者は平成30年で5万5810人。大半が新規自営就農だが、法人などで就農する新規雇用も9820人いる。さらに新規参入者が3240人おり、その中でも30~39歳が3分の1を占める。新規就農者全体では44歳以下と65歳以上が、それぞれ約3割、合わせて約6割を占める。高齢者のリタイア就農と若手の新規就農に2分化している。
中山間地域でもほ場整備は進んでいるが...(中国山地で)
【農家】10年で70万戸減る 販売農家も60万減
農業労働力、担い手の減少を反映し、この数年、農家数の減少が急テンポで進んでいる。総農家数は平成27年で215万5000戸。10年前の17年に比べ70万戸あまり減っている。うち肝心の販売農家は132万9000戸で、全体の6割強を占めるが、10年間で60万戸あまり減っており、減少農家の8割強を占める。
これに対して土地持ち非農家は急速に増えている。平成17年に比べ、27年は20万戸あまり増えて141万3000戸。農地は所有しているが、高齢化や担い手がいないため農業をやめた農家が増えていることを示す。自給的農家も減少しており、そうした農業から撤退する農家の農地を取得し、株式会社が参入するという構図が見える。
このように農業従事者、農家の兼業化・減少を補い、農業生産力を維持するために生まれたのが、法人化など生産の組織化だが、その一つに集落組織を単位に農家が組織する集落営農がある。内容は農事組合法人や株式会社などがあるが、全体で平成31年、1万4949ある。大半は農事組合法人だが、株式会社は4665で約4分の1を占める。兵庫県(918)、宮城県(855)、滋賀県(790)など米を中心とする集落営農が多い。
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