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農政:バイデン農政と日本への影響

【バイデン農政と日本への影響】第15回 中国人の農地取得禁止を可決した下院歳出委員会~注目は米中農産物貿易の今後の行方2021年8月31日

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就任半年を迎えたバイデン大統領は7月20日、「我々はいま、専制主義の未来を信じる中国などと、21世紀での勝負を決定づける競争のさなかにある」と述べ、対中強硬姿勢の堅持を改めて印象付けた。

「中国人の農地購入は"安全保障上の問題"」

2月のギャラップ世論調査によると、中国は「最も好ましくない国」と「非常に好ましくない国」の回答が38%と41%の計79%。18年2月(45%)の1.7倍以上だ。「中国は最大の敵国」の回答者も3年間に11%から45%へ激増した。

こうしたなか、農務省の予算案を審議中の下院歳出委員会は6月30日、「中国人による米国内の農地購入禁止条項」の追加提案を超党派で可決した。ハワイやアイオワなどの6州は外国人の農地購入を規制しているが、全米に影響が及ぶ今回の禁止提案は、農務省の22年度予算法案への追加条項だけに成立する可能性も否定できない。

ダニエル・ニューハウス下院議員(共和党)が提案したこの条項は、中国人や中国系企業による米国内の農地取得を禁止し、購入済みの農地を連邦政府等の補助対象から除外するものだ。同議員は提案理由を次のように述べた。

「中国人の投資家が米国内で19万2000エーカー(約7万7700ha)の農地を所有しており、これは国家の安全保障上の問題だ。この傾向は中国人による米国農地の独占をもたらしかねない」。

ただし、中国だけが特別多いわけではない。農務省によると19年末現在、米国内で最も多くの農地を所有する国は隣国カナダ。外国人所有の農地(約1420万ha、全農地の2.7%)に占める割合は29%に達し、これにオランダの14%、イタリアの7%が続く。中国人所有の割合は0.5%ほどだ。

しかし、"中国狙い撃ち"の姿勢は米国メディアも同じだ。「豚肉パッカー最大手のスミスフィールド・フード(中国のWHグループの子会社)などの中国企業は、(コロナ救済措置を実施する米国)農務省から多額の補助金を得ている」、「中国は"一帯一路"(ワンベルト・ワンロード)の世界戦略のもと、農林漁業関係の海外投資を急増してきた」など、中国批判の報道が目立つ(同海外投資は2010~16年の間に5億ドルから33億ドルへ、表参照)。

中国の農林漁業分野における海外直接投資額 の推移(2007-2016年)

中国政府による「バイ・チャイニーズ」の指示

他方、ロイター通信は8月2日に次の情報を配信し、米国の農業誌もこれを大きく報じた。
「中国政府が5月14日、医療機器やレーダー装置、畜産関連品など数百種にわたる工業製品について、最大100%の現地調達率を政府機関や民間企業へ義務付ける指針を551号文書(「輸入品の政府調達に関する監査指針」)で密かに示していた」。

バイデン大統領は就任直後の1月25日に「(米国製品の優先購入に関する)バイ・アメリカンの強化指令」を出したが、「バイ・チャイニーズ」はこれへの対抗措置。米中貿易戦争の激化を懸念する観測も伝えられる。

農業界の反応はまだ報道されていないが、米中関係の悪化が農産物の対中輸出へ悪影響を及ぼすのは何としても避けたい。それが米国農業界の本音であろう。

国連食糧農業機関(FAO)の世界食糧価格指数は5月まで12か月連続で上昇していたが、南米諸国での増産予測などによって6月と7月はそれぞれ3.2ポイント、1.5ポイント下落した。また、米国では複数の州で干ばつ被害が懸念されるものの、大豆とトウモロコシの収穫はいまのところほぼ順調との見通しだ。このため、米国内の大豆と飼料穀物の相場は本年上期に比べて勢いを失いつつあり、再び「対中輸出増」の予測へ敏感に反応し始めている。

こうしたなか、米国の農業界が注目するのはG20首脳会議。10月30~31日ローマで開催される同会議中に、バイデン大統領と習近平国家主席の米中首脳会談が実現し、貿易交渉の再開と対中農産物輸出のさらなる増加への道筋がつけられるか。トランプ前政権が締結した「第一段階の米中通商合意」(20年1月)が2年の期限切れを迎えるだけに、首脳会談への農業界の期待は強まっていくと予想されている。

この秋以降、米中関係の悪化のあおりを受けて対中輸出が伸び悩むようなことになるなら、米国の農業景気は一気に冷え込みかねない。中国では養豚収益の悪化で、7月の飼養頭数が21か月ぶりに減少へ転じ、飼料穀物等の輸入増は続かないとの予想を、一部の米国メディアが伝えた。米国の穀物農家はその危険を最も恐れている。

他方、政治活動を再開したトランプ前大統領はバイデン大統領の対中弱腰外交を強く批判しており、中国製工業製品等の輸入増へつながるような米中貿易交渉の再開は、白人労働者などの中間所得層の支持拡大をねらうバイデン陣営の中間選挙対策をいっそう難しくする。

アフガン撤退で支持率低下のバイデン大統領(世論調査分析のファイブ・サーティ・エイトによると8月30日、47.5%の不支持が47.2%の支持を就任後初めて上回った)。それだけに、対中強硬外交の必要性は増していきそうだ。10月末に向け、米中両国のせめぎ合いはさらに強まり、展開次第では米国農業界が期待するシナリオの実現が難しくなるかもしれない。

★本シリーズの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
エッセイスト 薄井 寛【バイデン農政と日本への影響】

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