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農政:ウクライナ危機 食料安全保障とこの国のかたち

【ウクライナ危機!食料安全保障とこの国のかたち】「農は国の本」日本は真の独立を 鈴木宣弘・東京大学大学院教授2022年3月18日

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ロシアがウクライナに侵攻して3週間となり、無差別攻撃による深刻な被害が広がっている。一方で穀物市場で小麦などの価格は急上昇し、日本への大きな影響は避けられない。日本は食料安全保障などの課題にどう向き合うべきか。鈴木宣弘・東京大学大学院教授 に寄稿してもらった。

東京大学大学院教授鈴木宣弘氏鈴木宣弘・東京大学大学院教授

ウクライナ紛争が勃発し、ロシアとウクライナで輸出市場の3割を占める小麦をはじめとする穀物価格、原油価格、化学肥料の原料価格などの高騰が増幅され、最近、顕著になってきた食料やその生産資材の調達への不安に拍車をかけている。

そして、ついに、3月8日、小麦のシカゴ先物相場は、2008年の食料危機の最高値を上回った。まさに、食料危機は現実のものとなってる。

小麦輸出

先物相場

農家の踏ん張りこそが希望の光

食料危機が眼前に迫る中、国内農業への期待は高まっている。筆者のツイッターにも、「ここまで頑張ってきた農家さんも、新たに就農する農家さんも、日本の宝。感謝しかないです。ありがとう!!」といった、国内の農家への感謝と期待の声が多く寄せられている。

世界一過保護と誤解され、本当は世界一保護なしで踏ん張ってきたのが日本の農家だ。その頑張りで、今でも世界10位の農業生産額を達成している日本の農家の皆さんはまさに「精鋭」である。誇りと自信を持ち、これからも家族と国民を守る決意を新たにしてもらいたい。

今を踏ん張れば、農の価値がさらに評価される時代が必ず来る。もう来ている。特に輸入に依存せず国内資源で安全・高品質な食料供給ができる循環農業を目指す方向性は子どもたちの未来を守る最大の希望である。

コスト急騰なのに低迷する農産物価格

それなのに、現場は苦しんでいる。肥料、飼料、燃料などの生産資材コストは急騰しているのに、国産の農産物価格は低いままで、現場の農家は悲鳴を上げている。こんなに輸入小麦が大変な事態になっているのに、国産小麦は在庫の山だという。

加工・流通・小売り業界も消費者も、国産への思いを行動に移してほしい。今こそ、みんなで支え合わなくては、有事は乗り切れない。

転作作物への交付金カットで農業つぶし

しかも、国会では、いまだに、「食料自給率」という言葉さえ、政府側からはほとんど出てこないばかりか、政府は、コメをつくるなと言うだけでなく、その代わりに麦、大豆、野菜、そば、飼料米、牧草などを作る支援として支出していた交付金をカットすると言い出した。

驚くべきことに、国産振興こそが不可欠なことは誰の目にも明らかな今、国内農業を立ち行かなくさせる愚策を打ち出した。このままでは農業をあきらめる人が続出し、耕作放棄地がさらに拡大し、食料自給率はさらに低下し、食料危機に耐えられなくなることは火を見るよりも明らかである。この期に及んで目先の歳出削減しか見えない亡国の財政政策が最大の国難とも言える。

「食料を自給できない人たちは奴隷である」

キューバのホセ・マルティは「食料を自給できない人たちは奴隷である」と述べ、高村光太郎は「食うものだけは自給したい。これなくして真の独立はない」と言ったが、2020年度の食料自給率が37・ 17%(カロリーベース)と、史上最低を更新した日本は独立国とは言えない。

農林水産業は、国民の命、環境・資源、地域、国土・国境を守る安全保障の柱、国民国家存立の要、「農は国の本なり」である。今こそ、日本の真の独立とは何か、国民の命を守るために必要なことは何かを見つめ直し、全国各地から、国民運動を展開すべきときであろう。

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