農政:世界の食料は今 農中総研リポート
【世界の食料は今 農中総研リポート】欧州のアフリカ豚熱との戦い(2)水際検疫の重要性 北原克彦理事研究員2024年1月31日
「世界の食料は今」をテーマに農林中金総合研究所の研究員が解説するシリーズ。今回は理事研究員の北原克彦氏が「欧州におけるアフリカ豚熱との戦い」をテーマに解説する。
【世界の食料は今 農中総研リポート】欧州のアフリカ豚熱との戦い(1)感染力強く厳戒続く 北原克彦理事研究員 より
ワクチンと変異株
農中総研理事研究員
北原克彦氏
これまでASFウイルスへ有効なワクチン開発は困難であった。遺伝子数・構造タンパク質が多いため、標的タンパク質が見つけにくいことや、感染しても血中で中和抗体が産生されない等の理由からだ。
そのなかで、遺伝子編集により一部遺伝子を欠損させた、遺伝子欠損型弱毒ASFウイルス株由来ワクチンの開発が進められてきた。22年にはベトナムの会社が米国の協力を得て、弱毒生ワクチンウイルス候補株が安全性試験に合格し、23年7月にベトナムでワクチンの商業使用が認可された。今後、その効果に関する報告が待たれているところだ。
ところが、23年に中国で交雑種と思われる新しいASFウイルス変異株が見つかり、このウイルスが開発されたワクチンを回避できる可能性があるとの見方がでてきた。ワクチン開発はウイルス変異を追いかけなければならないが、今後も感染動向の注視が必要だ。
水際検疫の重要性
農水省動物検疫所による水際検疫では、アジア各地のASF発生国から空港・海港へ到着した旅客に対して、肉製品等の違法な持ち込みがないか、口頭試問や検疫探知犬による携帯品の探索を行っている。持ち込みが認められない豚肉製品の一部について、動物検疫所ではASFウイルスのモニタリングを行っており、ASFウイルス遺伝子陽性事例は、18年10月から23年2月の期間で109事例にのぼる(図2)。
2018年から19年前半は中国とベトナムからの携帯品による陽性事例が多かったが、19年後半からは、フィリピン・ラオス・カンボジア・インドネシア・ミャンマー・タイから陽性事例が出ている。これはアジアでのASF感染拡大と軌を一にしており、そのエリアでASF感染豚が食肉加工されたことを示している。
足元のインバウンド入国者数は、19年の8割まで戻ってきた。ますます水際検疫の重要性が高まるとともに、万が一、国内でASF感染が発見された場合は、欧州と同様に迅速な対応が必要だ。
【参考文献】
▽農林水産省 家畜衛生部会(2021)「ベルギー王国のアフリカ豚熱清浄性に関するリスク評価報告書概要」
▽農林水産省 牛豚疾病小委員会(2022)「最近のアフリカ豚熱の研究状況について」
▽農林水産省 動物検疫所(2023)「アフリカ豚熱ウイルス遺伝子検査陽性事例」
▽国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 疾病情報 「ASF(アフリカ豚熱)」
▽独立行政法人農畜産業振興機構(2023)「スウェーデン国内のイノシシにアフリカ豚熱が発生」
▽独立行政法人日本貿易振興機構 (2023)ビジネス短信「アフリカ豚熱(ASF)ワクチンの商業使用、ベトナムが世界初の承認」
▽米国農務省(USDA)HP(2022)「African Swine Fever Virus Vaccine Passes Tests Required for Regulatory Approval」
▽Feed Strategy (2023) 「Chinese researchers report new variant of ASF virus」
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】冬春ピーマン「斑点病」、冬春トマト「すすかび病」県内で多発 宮崎県2025年1月27日
-
鳥インフル 米バージニア州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月27日
-
「農林水産業と食文化の発展は世界をもっと豊かにつなぐ」大阪・関西万博に出展 農水省2025年1月27日
-
「サステナアワード2024」各賞が決定 農水省2025年1月27日
-
JA全農協賛「全日本卓球選手権大会」男女シングルス日本一が決定2025年1月27日
-
【今川直人・農協の核心】協同から協働へ2025年1月27日
-
三重県オリジナルイチゴ「うた乃」フェア みのるダイニング名古屋店で開催 JA全農2025年1月27日
-
JA全農協賛「全日本卓球選手権大会」ジュニアのシングルス日本一が決定2025年1月27日
-
「だいすきシリーズ」から使いやすい容量、保管しやすいサイズのmini(ミニサイズ)新発売 マルトモ2025年1月27日
-
農薬散布など最新ドローンとソフト紹介 無料実演セミナー 九州3会場で開催 セキド2025年1月27日
-
農文協『みんなの有機農業技術大事典』発刊記念 セミナー「耕さない農業」開催2025年1月27日
-
横浜のいちごイベント&スイーツ紹介「いちご特集」公開 横浜市観光協会2025年1月27日
-
移動スーパーとくし丸 マイヤと提携 岩手県花巻市東部エリアで移動販売再開2025年1月27日
-
【人事異動】クボタ(2月1日付)2025年1月27日
-
豆乳の栄養素と鉄分が一緒にとれる「キッコーマン 豆乳+鉄分」新発売2025年1月27日
-
全国から382品が集合「第3回全国いちご選手権」開催 日本野菜ソムリエ協会2025年1月27日
-
神戸・元町の名店の味を再現「町中華 中華カレー」新発売 エスビー食品2025年1月27日
-
モスバーガー&カフェ限定 栃木県産「とちあいか」いちごソースに使用 春の定番ドリンク発売2025年1月27日
-
カーボンニュートラルに貢献する廃熱ソリューション「ENEX2025」に出展 ヤンマー2025年1月27日
-
【役員人事】ヤマタネ(2月1日付)2025年1月27日