農政:世界の食料は今 農中総研リポート
【世界の食料は今 農中総研リポート】米国の鶏肉生産と需給見通し(1)片田百合子研究員2024年4月1日
「世界の食料は今」をテーマに農林中金総合研究所の研究員が解説するシリーズ。今回は片田百合子研究員が「米国の鶏肉生産と需給見通し」をテーマに解説する。
生産横ばい 大手の寡占進む
1. 世界の鶏肉需給における米国の立ち位置
【画像】農林中金総合研究所 片田百合子研究員
2022年において、世界では鶏肉(ブロイラー)が1億t生産された<注1>。このうちの2割に当たる2100万tは米国産で、生産量は世界最大である。米国は鶏肉消費量も世界第1位で、国産の約8割は国内に仕向けられる。とはいえ、残る2割といっても、米国の輸出量は332万tと大きく、ブラジルの445万tに次ぐ第2位でもある。この米国の輸出先は140カ国超と多く、主にもも肉が輸出されている。
このように、米国は世界の鶏肉需給の要である。今回は、2022年農業センサスを基にした米国の鶏肉生産の構造変化、それと24年2月に米国農務省(USDA)が開催した「第百回年次農業アウトルック・フォーラム(The 100th Annual Agricultural Outlook Forum)」での講演等を基に24年の鶏肉需給の見通しについて解説し、世界の鶏
肉需給への影響を考察する。
2. 2022年農業センサスからみる、米国の鶏肉生産の構造変化
2022年農業センサスによると、前回に相当する2017年農業センサスからの5年間で、米国農業では農業従事者の減少や高齢化や、農業経営体の規模拡大が進展した。ブロイラー等<注2>の生産についても、この間に経営体数は2.7%減少したが、販売羽数は3.2%増加し、経営体の規模拡大は進んでいる。
経営体数が最も減少した階層は販売羽数20万羽以上30万羽未満で、2022年には、17年対比で541経営体減(27.5%減)の1,424経営体となった(表1)。一方、最も増加したのは50万羽以上の層で、17年から2.7%増加し、7,406経営体に達した。
経営体数に占めるこの50万羽以上の層のシェアは07年の24%がピークで、12年以降は20%前後で横ばいである。しかし、同階層について、販売羽数に占めるシェアをみると、筆者が確認できた1997年センサス以降は増加し続けており、2022年は78.1%(17年比2.6ポイント上昇)である(図1)。すなわち、経営体数では22年においても
約2割にとどまる50万羽以上の層が、鶏肉全体の8割弱までを生産する構造となっている。
なお、日本でも規模の拡大はみられるが、年間出荷羽数が50万羽以上の生産者の飼養羽数のシェアは、23年でも50%未満にとどまる。両国で鶏肉産業の垂直統合は進むが、米国はその度合いが日本よりも高いと推測される。
<注>
1 USDA "Livestock and Poultry: World Markets and Trade"(2024年1月12日)
2 Broilers and other meat-type chickens
重要な記事
最新の記事
-
飼料用米多収日本一 山口県のあぐりてらす阿知須 10a当たり863kg2025年3月3日
-
【特殊報】ナシ胴枯細菌病 県内で初めて発生を確認 島根県2025年3月3日
-
政府備蓄米売り渡し 入札 3月10日に実施 農水省2025年3月3日
-
新潟県の25年産米概算金「コシ2.3万円」 早期提示に歓迎の声 集荷競争、今年も激化か2025年3月3日
-
米の集荷数量 前年比23万t減に拡大 農水省2025年3月3日
-
米価高騰問題への視座【森島 賢・正義派の農政論】2025年3月3日
-
【次期家畜改良目標】低コスト、スマート農業重視 酪農は長命連産、肉牛は短期肥育2025年3月3日
-
【改正畜安法の現状と課題】需給対策拡大が焦点 問われる「国主導」2025年3月3日
-
あなたたちは強い〝武器〟を持っている JA全国青年大会での「青年の主張」「青年組織活動実績発表」講評 審査委員長・小松泰信さん2025年3月3日
-
JA農業経営コンサルタント 15人を認証 全中2025年3月3日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年3月3日
-
農業用バイオスティミュラント「エンビタ」とは 水稲育苗期にも効果 北興化学工業2025年3月3日
-
アミューズメント施設運営「ティスコ」株式を譲受 農林中金キャピタル2025年3月3日
-
「2025ローズポークおいしさまるごとキャンペーン」でプレゼント 茨城県銘柄豚振興会2025年3月3日
-
福岡ソフトバンクホークスとのオフィシャルスポンサー契約更新 デンカ2025年3月3日
-
ファーマーズ&キッズフェスタ2025 好天で多数の参加者 井関農機は農業機械体験2025年3月3日
-
【今川直人・農協の核心】産地化で役割が高まる農協の野菜取り扱い2025年3月3日
-
野菜がたっぷり食べられるカレー味「ケンミンカレー焼ビーフン」新発売2025年3月3日
-
第164回勉強会『海外市場での植物工場・施設園芸の展開』開催 植物工場研究会2025年3月3日
-
春の山梨の食材の魅力を伝えるマルシェ 5日から国分寺マルイで開催 雨風太陽2025年3月3日