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農政:欧米の農政転換と農民運動

【欧米の農政転換と農民運動】「農の多様性」米国でも焦点 家族経営が担う酪農の危機 佐藤加寿子熊本学園大学教授2024年4月15日

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今回は米国の農業政策や新自由主義下の家族農業の在り方などに詳しい熊本学園大学経済学部教授の佐藤加寿子氏に「米国の農民運動・中小家族経営が担う酪農の危機への農政転換の要求」をテーマに解説してもらった。

延期された次期農業法の決定

「酪農をともに(Dairy Together)」ホームページ上で家族農場への支持を訴える(提供=Wisconsin Farmers Union)「酪農をともに(Dairy Together)」ホームページ上で家族農場への支持を訴える
(提供=Wisconsin Farmers Union)

米国では2023年に、現行の「2018年農業法」に代わる新たな農業法が「2023年農業法」として制定される予定であった。しかし連邦予算をめぐる議会の対立・混乱から農業法は成立せず、2023年9月で失効する現行の「2018年農業法」の期限が今年2024年9月末まで1年間延長された。

米国の農業法は、理念法である日本の食料・農業・農村基本法とは異なり、農業法本体に具体的な施策の内容が書き込まれる。通常は5年を期限とする時限立法で、情勢の変化に応じた機動的な施策が用意されることはあるものの、農業法の実施期間中は施策の変更は基本的におこなわれない。そのため、米国内の農業団体は農業法の改定に向けて具体的な政策提言をおこなってきた。

ファームビューローによる次期農業法への政策提言

米国最大の農業団体で、比較的大規模な農場の利害を代表しているといわれる「ファームビューロー」(「米国農業界連合会」the American Farm Bureau Federation)は現行の「2018年農業法」の枠組みを支持したうえで、改善点を提言している。酪農政策で見ると、コロナ禍で生じた市場の混乱を是正する施策を提言しており、その他には、たとえば現在の貿易促進政策について予算の増額を求め、農村政策については「農村の経済的可能性を最大限にするような、透明で効率によって優先順位がつけられた長期にわたる一貫した市場指向型の農業政策を支持する」としている。

全国家族農場連合(NFFC)による次期農業法への政策提言―根本的転換を提唱

牛乳代に占める酪農家の所得がいかに小さいかを訴える農家。「Dairy Together」ホームページより(提供=Wisconsin Farmers Union)牛乳代に占める酪農家の所得がいかに小さいかを訴える農家。「Dairy Together」ホームページより(提供=Wisconsin Farmers Union)

ところが、ファームビューローとは立場を異にする農民団体では、まったく異なる政策提言がなされている。

NFFC(「全国家族農場連合」National Family Farms Coalition)は1986年に設立された31団体会員によって構成されている農民団体で国際農民組織ビア・カンペシーナの加盟団体である。穀作、園芸作、畜産の農家に加え漁業者と多様な生産者が結集している。農民にとっての公正な価格、柔靱(じゅうじん)な土地保全施策、食料主権、公正な貿易を求めて活動してきた。

NFFCは、次期農業法への政策提言をまとめたパンフレット「2023年農業法案に対する意見」(2023Farm Bill Platform)で、現在の米国の農業政策の枠組みを批判している。「終わりのない生産拡大を進め、それによる生産過剰は輸出市場に押し込んで解消し、同時に生産過剰によって引き起こされた低価格には不十分な水準の保障や保険制度しか用意されていない。それが公正で開かれた市場と農業信用の公平な利用を妨げている」というのである。そのうえで、次期農業法の策定はフードシステムの根本的な転換のチャンスであり、そのめざすところは農村社会・地域経済の繁栄と気候変動と生態系破壊に対する回復力を備えつつ、万人に、良い食を提供することであるべきだとする。同時にそのフードシステムはアグロエコロジーと食料主権に立脚し、地域社会に根づいた、農民主導のものであるべきだとされている。

パンフレットが求めている「2023年農業法」最優先事項は、①供給管理と最低価格による酪農改革②歴史的に行政サービスを十分に受けられなかった生産者や家族農業をおこなうものへの農地へのアクセス強化③農業信用へのアクセスの向上④米国農務省による公正な負債軽減の実施――の4点である。

それに続く優先事項として、①で掲げた供給管理とパリティ価格の設定を穀物にも広げること、ローカルフードシステムへの支援として「2018年農業法」のもとで策定された「農産物の地域販売計画」(Local Agriculture Market Program)への財政支出を増やすこと、同じく「2018年農業法」のもとで策定された新規農場開設者向けの教育プログラムの維持と拡充、食品の原産地表示義務の再開、食肉処理業者の独占的で不公正な行動を規制する「食肉業者・家畜飼育場法」(Packers and Stockyards Act)の強化と拡充、反トラスト法の強化――などが掲げられている。

最優先事項の第一に掲げられた酪農対策については、具体的には、(a)地域別・農場規模別の最低価格の設定とその保障、および(b)供給量の管理による需給調整の2点が提案されている。この酪農政策への提案は2021年にNFFCが法案化を提唱してとりまとめた「2021年家族農場からの牛乳法」案(Milk from Family Dairies Act 2021)に基づいている。

その内容を紹介しよう。政策は5項目ある。第一に、生産費をカバーできる水準の最低価格を設定し、各農場の生産量に対してその最低価格が保障されること。最低価格は農場の規模と地域による格差を調整して決定されるものとする。第二に、牛乳の需給調整をおこなうこと。酪農家によって組織される委員会で全国レベルの生乳需要量を予測し、それを各酪農家に割り振る。酪農家への販売量の配分は各農場の過去の生産量にもとづいておこなわれる。

第三に、乳製品の輸出入についても管理をおこなう。輸出をおこなう乳業メーカーへは輸出料を課し、輸入の際にも既存の貿易協定の枠内で可能な輸入料の引き上げをおこなう。第四に、市場の独占を解消、独占度を低下させるための措置の実施。第五に、地域の酪農インフラの再構築である。これらの政策提案のなかで、第一・第二項目が「2023年農業法」への提案に盛り込まれたのである。

「酪農を共に」(Dairy Together)の立ち上げ

熊本学園大学経済学部教授 佐藤加寿子氏熊本学園大学経済学部教授 佐藤加寿子氏

2018年には、「ウィスコンシン農民組合」(Wisconsin Farmers Union)を中心とした農業団体によって、政府の酪農政策の抜本的改善を求める運動団体「酪農を共に」(Dairy Together)(以下DT)」が組織されている。これは2015年の乳価暴落をきっかけに設立された団体で、NFFCも加盟団体となっている。DTは供給管理政策の必要性と有用性を訴え、その具体策を「酪農再活性化計画」(The Dairy Revitalization Plan)として提示している。ウィスコンシン農民組合は、米国の主要農業団体のひとつであり、比較的小規模な農場の利害を代表するとされる「ファーマーズ・ユニオン(「全国農民組合」National Farmers Union)のウィスコンシン州組織である。ただし、酪農再活性化計画の供給管理政策の検討においては「ファームビューロー」のウィスコンシン州組織の会員農家も参加しており、中小酪農経営の多い伝統的酪農産地ではより広範囲な計画への支持が形成されているようである。

こうした提言の実現をめざすうえで、供給管理政策の効果や実現可能性を検討する研究が、ウィスコンシン大学統合農業システムセンターを中心におこなわれている。これについては、稿を改めて報告する機会を得たい。

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