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農政:世界の食料・協同組合は今 農中総研リポート

【世界の食料・協同組合は今】2025年は2度目の国際協同組合年(1) 農中総研・重頭ユカリ氏2024年9月4日

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農林中金総合研究所の研究員が世界の食料や農業、協同組合の課題などを解説するシリーズ。今回のテーマは上下2回に分け来年の「国際協同組合年」について理事研究員の重頭ユカリ氏が解説する。

農中総研て理事研究員・重頭ユカリ氏農中総研理事研究員・重頭ユカリ氏

来年2025年には、2012年に続く2度目の国際協同組合年を迎える。そこで、今回と次回の2回にわたり、日本を含む国際社会における協同組合の現在の状況や、国連が2度目の国際協同組合年を定めるに至った背景等について紹介していきたい。

国際年制定に至る流れ

国連の「国際年」とは、特定のテーマについて各国や世界全体が1年間を通じて取り組みを促すよう呼びかけるものである。一つの年に複数のテーマが設定されることもあり、2023年は「国際雑穀年」、「平和の保証としての対話の国際年」であった。2024年は「ラクダ科の国際年」、2025年は「国際協同組合年」であるとともに、「氷河の保護の国際年」でもある。

2025年を国際協同組合年とすることは、モンゴル政府が提案した。モンツァメ(MONTSAME)というモンゴルの国営通信社のオンラインサイトは、1980年代からモンゴルは国連総会で2年ごとに採択される「社会開発における協同組合」と題する決議を提案しており、2012年に国際協同組合年が宣言されたのも、その枠組みにおいてであると伝えている(注1)。つまり「社会開発における協同組合」と題する決議は、2年ごとにモンゴルの提案によって国連総会で採択されており、2023年にもモンゴルは同様の決議の提案を行った。そのなかで2025年を再び国際協同組合年と宣言することを求め、同年11月に決議が採択されたという流れになる。そして2024年6月の国連総会では、2025年の国際協同組合年のテーマを「協同組合はよりよい世界を築きます」とすることが宣言された。

協同組合の現状と課題

モンゴルの提案が行われる前の2023年7月には、2021年に採択された決議に従って、「社会開発における協同組合」と題する国連事務総長報告が提出されている(注2)。この報告書では、世界には約300万の協同組合があり、世界の労働者の10%が協同組合に雇用されているか協同組合内の労働者かつ所有者となっていると紹介されている。

また、2023年版の世界協同組合モニターによると、 協同組合と相互組合の規模上位300組合における2021年の総売上高は2兆4094億ドルにのぼる。この額は、同年のフランスの名目GDP2兆9583億ドル(世界第7位)よりは少ないが、イタリアの2兆1563億ドル(同8位)を上回っている。これらを踏まえて、上記の国連事務総長報告では、「多くの国で、協同組合は市場の失敗に対処し、社会から疎外された人々に力を与え、雇用機会を創出し、持続可能な開発を支援することによって、国民経済に大きく貢献している」と述べている。

一方で同報告書では、「協同組合が潜在能力を最大限に発揮するには、依然として大きな課題に直面している」としており、具体的な内容として、協同組合が国レベルで社会的・経済的発展に貢献していることを記録するためのデータが不十分であること、協同組合のビジネスモデルについての知識や教育が不十分であること、協同組合の法的・規制的環境が複雑で協同組合の資金調達能力に影響を及ぼす可能性があることを挙げている。

こうした課題については、報告書が「依然として大きな課題に直面している」と表現しているように、長年にわたって指摘され続けている。前回の国際協同組合年も、こうした課題に取り組むことを各国や世界全体に呼びかけており、実際にICAや各国の協同組合関係機関は様々な取り組みを行った。

例えば前述の世界協同組合モニターは、2012年から世界の協同組合に関するデータを公表する唯一のレポートであり、これによって協同組合の経済活動における重要性をデータで示すことが可能になった。

先に示したように上位300位の協同組合を合計しただけでもイタリアのGDPを上回る規模なのだということを、協同組合論の授業で大学生に話すと、意外そうな反応が返ってくることが多い。データによって、経済・社会において協同組合がどのような役割を果たしているかを示すことは、認知度を高めていくにあたっても重要になる。

協同組合の認知度

しかし認知度の向上が難しいこともまた、データによって示されている。日本国内の状況をみてみよう。全労済協会は、2011年から定期的にアンケート調査を行い、その結果を『勤労者の生活意識と協同組合に関する報告書』として公表している。直近の調査は20~64歳の一般勤労者に対して2022年10月に行われ、4871人が回答した。

そのなかで、各種類の協同組合についての認知状況(「知っている」「聞いたことがある」「知らない」から一つ選択)を質問している。農協(JA)について「知っている」と回答する割合は、他の協同組合よりは高いのだが、その比率は年を追うごとに低下している。2016年には、「知っている」と回答する割合は67・1%だったが、2018年67・0%、2020年64・3%、2022年60・6%となった。

一方で、「(農協を)聞いたことがある」の回答割合は2016年の25・0%から徐々に上昇して2022年には30・9%となり、よくは知らないが、CM等で見聞きはしたことがある人の比重が高まっている可能性がある。農協(JA)に次いで「知っている」の割合が高い、こくみん共済coop(全労済)、都道府県民共済、コープ共済も、その比率は2016年の64・8%から2022年には61・4%に低下している。

さらに、各団体の名称を挙げて「協同組合だと思われる」団体を選択してもらう質問においては、農協(JA)を挙げる割合は2016年の46・4%から徐々に低下し、2022年には37・7%となった。他の団体も2020年に比べて割合が下がっており、報告書は「2012年国際協同組合年以降の協同組合陣営の積極的な認知度向上の取り組みにもかかわらず「いずれも協同組合だと思わない」層が約4分の1を占めるのが実態である」と述べている。

そして、多くの回答者は協同組合自体についてもよく理解しておらず、「協同組合はどのような団体だと思うか」という質問に対して、「分からない」と回答する割合が38・0%と最も高く、「民間の営利団体のひとつである」(26・7%)がそれに続き、「民間の非営利団体である」と回答したのは17・6%にすぎなかった。

これらのことからは、協同組合それぞれの認知度を高めるだけでなく、そもそも協同組合とは何かを知ってもらうことが前回の国際協同組合の時よりも必要になっていることが分かる。

最後は国内の調査をもとに認知度の向上が難しい課題であることを示したが、次回は2025年を国際協同組合年とすることに至った国際的な情勢などを紹介していきたい。

【世界の食料・協同組合は今】2025年は2度目の国際協同組合年(2)

<注1> モンツァメウェブサイト https://montsame.mn/en/read/346383

<注2> UN Document, A/78/187, Cooperatives in social development, July 2023 https://documents.un.org/doc/undoc/gen/n23/209/11/pdf/n2320911.pdf

<注3> EURICSE, ICA (2024) World Cooperative Monitor 2023 Exploring the cooperative economy https://ica.coop/sites/default/files/2024-01/wcm_2023_3101.pdf

<注4>大高研道(2023)「勤労者の生活意識と協同組合に関する調査報告書<2022年版>」全労済協会 https://www.zenrosaikyokai.or.jp/shared/pdf/thinktank/research/enquete/enquete_10.pdf

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