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農政:トランプの世界戦略と日本の進路

"強行関税"朝令暮改の様相 外交評論家 孫崎享氏【トランプの世界戦略と日本の進路】2025年4月18日

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「トランプの世界戦略と日本の進路」シリーズ、今回は外交評論家の孫崎亨氏に寄稿してもらった。孫崎氏は関税問題でトランプ大統領が「日本の米は関税が700%もある」と批判したことに言及したが、これは単なるブラフ(はったり)をかけたもので、「本質的に譲歩しなければならない問題ではない」としている。

外交評論家 孫崎享氏外交評論家 孫崎享氏

トランプの米問題と利上げは宣伝効果の狙い。真の標的ではない。

―トランプ大統領は「日本は米に対する関税が700%もある」と名指しで批判。トランプ大統領が真に米問題を重視するなら、日本の「食料安全保障政策」全体を揺らがす問題だ。だがトランプ大統領は米問題をプロパガンダ的に利用しているのであり、真の目的ではない。つまり、日本政府が健全なら、米問題で、面子的に対応しても、本質的に譲歩しなければならない問題ではないー

1:トランプ大統領の高圧姿勢

トランプ大統領は4月2日、「今日は解放の日だ」と語り、世界中の国を対象とする相互関税の詳細を発表した。各国別の関税はベトナム46%、中国34%、インド26%、日本24%、欧州連合20%等である。この関税には、「危機時の安全な金融資産」とされている米国債の売却が進んだこともあって、トランプ大統領は、「相互関税の上乗せ部分を90日停止」を発表した。

その後様々の展開があったが、結局①全ての国に当面10%の関税をかける②鉄鋼、自動車およびその部品には25%の関税をかける③米中は互いに145%の関税を課す状況となっている。自動車は対米輸出額 (21.3兆円)のうち、6.0兆円 (シェア:28.3%、137.6万台)、自動車の部分品は1.2兆円 (シェア:5.8%)であり、日本に深刻な影響を与えると想定される。 

日本が対象となった24%は今後の交渉に委ねられる。

この交渉が決して容易でないのは、トランプ大統領自身の発言にもうかがえる。

トランプ大統領は、4月1日共和党全国議会委員会夕食会という場で日本が交渉に駆け付けていると言及した後、次を述べた。ニュアンスをくみ取るため、原文を紹介しておく。

「 "I am telling you, these countries are calling us up, kissing my ass, They are dying to make a deal. 'Please, please sir, make a deal. I'll do anything sir,'"(貴方たちに言っておきます。これらの国々(日本も含む)は我々を訪れ、私の尻にキスをしている。彼らは死んでもディールをしようとして、"何でもします。閣下"と言っている。

これこそ、トランプ大統領が関税交渉に臨む日本をどう見ているかの核心である。ロイターは動画を付して報じているが、不思議なことに、本質をつくこの発言を報じている日本のメディアはほとんどない。

4月14日衆議院予算委員会に関する日経新聞報道は「首相、安易に妥協せず」と報じているが、トランプ大統領の述べた「何でもします。閣下」と大きな異なりがある。

これから、90日間にわたり、日米は関税を巡り交渉を行っていくが、この中に米の問題も含まれる。数字自体には問題があるが、トランプ大統領は3月11日、「日本は米に対する関税が700%もある」と名指しで批判している。

2:トランプ大統領の要請で米問題はどれ位の比重を占めるか

こうした中で、トランプ大統領の関税問題では、米がどれ位の比重を有しているかを見極める必要がある。

私はトランプ大統領の関税に関する問題意識は次の4点にあると思う。

①製造業の復活:米国の産業、特に鉄鋼や自動車などの製造業を保護し、国内雇用を増やすため、関税を活用して輸入品との競争を抑える。

②貿易インバランスの是正:特に中国や日本、EUなどとの貿易赤字を問題視し、関税を通じて輸入を減らし、輸出を増やすことを目指す。

③国家収入の増大:関税は政府の歳入源となり得る。今日米国の国家財政での赤字は極めて深刻な状況にある。

④ 中国への対応:中国の経済的影響力を抑えるため、関税や技術輸出規制などを活用。特に中国への依存度が高いサプライチェーンを見直す動き。

これらのトランプ大統領の狙いと日本の米はどのように関連しているか。

日本のコメ関税(778%とされる)は、国内農業保護の象徴である。食料安全保障政策の核でもある。極めで日本政府にとって政治性の高い問題である。日本の米市場は輸入に厳しい数量制限(ミニマム・アクセス米)があり、関税率も高いため、米国産米の輸出拡大を求める米国側から批判の対象となりやすい。ただし、トランプ大統領の関税政策ではその比重は低い。

まず経済的規模に関して、日本の米市場は国内農業全体の約1.8兆円(2023年時点)程度で、自動車(数十兆円規模)や電子機器など他の貿易品目に比べると経済的インパクトは小さい。米国の対日貿易赤字(2024年で約700億ドル)の中で、米の寄与は微々たるものとなる。

米国の輸出戦略:米国はTPP(環太平洋連携協定)やUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)など通商協定を通じて日本市場への農産物(牛肉、小麦、乳製品など)のアクセスを拡大してきたが、米は日本の政治的重要性を勘案し、優先度が低かった。たとえば、TPPではコメの追加枠は限定的で、米国産米の競争力も日本の消費者のし好(短粒種 vs 長粒種)により制約される。

トランプの政治的意図:トランプ大統領が米を名指ししたのは、日本との貿易交渉で圧力をかけるための象徴的な例として利用した可能性が高い。日本の自動車や鉄鋼など主要品目への関税圧力を背景に、農産物も含めて「不公平な貿易慣行」を批判するレトリックと考えられる。

3:関税問題に臨むトランプ大統領の基盤は盤石か

トランプ大統領は政権発足時、盤石であった。彼は敵味方を厳しく峻別し、彼個人、及び政策と対立する組織、人物には厳しい制裁を課した。政治家、国防省高官等の政府職員、著名大学、ジャーナリスト等が標的となった。その傲慢ぶりは自らを王に例えたり、憲法では「何人も2回を超えて大統領の職に選出されてはならない」とあるにも関わらず、「3期目の可能性を模索している」と述べている。

だが関税政策で彼の基盤が揺らいでいる。

そもそも、米国産業における製造業の割合は低下し、1970年代、製造業(工業)は米国GDPの約25~30%を占め、自動車、鉄鋼、機械などの産業が経済の中心であった。現在製造業のGDPシェアは10%未満(おおよそ8~9%)に低下。サービス業(金融、IT、ヘルスケアなど)がGDPの約70~80%を占めるようになり、経済の主軸がシフトしている。トランプ大統領が行おうとする工業の復活よりも、GDPの約70~80%を占めるサービス業(金融、IT、ヘルスケアなど)が被害を受けるなら反対の声が勢いを増す。トランプ大統領は1970年代、1980年代の感覚で生きている人物で、現代の感覚で生きてはいない。

関税問題で、米国株式、国債、通貨の急激な下落で、「米国売り」が進行した。

トランプ政権誕生には金融、IT関係者が支持したが、このグループから関税政策への批判の声が出てきた。

トランプ大統領に牛耳られていた議会の共和党議員の中に造反者が出始めた。

今後物価高になるのは必然で、一般国民も被害に遭い、トランプ関税に対する疑問も出てくるであろう。

これに加え、各国との交渉も難航しよう。

4:米問題に対する我が国の対応について

米問題はトランプ大統領が問題点を指摘したが、彼の関税に対する姿勢中、米問題はさしたる重要性を持たない。

更に関税問題でのトランプ大統領の立場は弱体化する。

トランプ大統領にとって重要でない米問題でごり押しする可能性は低減する。

農業関係者に置かれては、交渉の妥結を急ぐことなく、日本側の立場を説明していけば、米問題は消滅すると思う。

日本の国内では自動車などの関税問題で「米で譲歩しろ」という声が出るかもしれないが、それに応じなければならない必要性はさらさらない。

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