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農政:創ろう食と農 地域とくらしを

【インタビュー】「農協改革」の真意 所得増と地域貢献 森山 裕・衆議院議員2014年7月10日

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・協同組合の精神生かした改革を
・組合員のために地域のために改革
・社会政策を担う「農協」も重視し
・中央会の見直しは歴史と成果ふまえ
・自主的な努力で経営の健全化へ
・協同組合らしさを経済事業でも核に
・農村問題の視点で准組合員を考える
・農協活動への参加広く促す改革も
・新農政の推進には営農指導が不可欠

 農協改革については6月24日に閣議決定された「規制改革実施計画」や同日改訂された「農林水産業・地域の活力創造プラン」をふまえて今後具体的な検討が進むことになる。これらに盛り込まれたのは6月10日に決定された与党の「農協・農業委員会等に関する改革の推進について」が基本となっており、JAグループでの討議をふまえて結論を出していくことが大前提となっている。本紙ではこの問題を特集としてさまざまな企画を通じて考えていく予定で、今回は皮切りに自民党のPT座長としての改革方向をとりまとめた森山裕衆議院議員に改めて改革の目的とJAグループの論議への期待などを聞いた。(聞き手は梶井功・東京農工大名誉教授)

森山裕衆議院議員(右)と梶井功・東京農工大名誉教授

(写真)
森山裕衆議院議員(右)と梶井功・東京農工大名誉教授

 

◆組合員のために 地域のために改革

 梶井 最初に、今回取りまとめられた「農協・農業委員会等に関する改革の推進について」のなかでとくに農協問題についてここがいちばん勘所だ、という点からお聞かせください。
 森山 農協改革については自民党では昨年9月からプロジェクト・チームをつくって議論を重ねてきました。
 まず農協改革の目的ですが、ひとつはやはり農家の所得をどう向上させるかですが、もうひとつは地域サービスの安定的な提供をどう農協が果たしていくのかです。この2つが農協改革の大きな目標だということです。
 そのために農産物を有利に販売する仕組みをどう構築していくか、高く売るというのではなくて有利に売るということですね。それから生産資材は極力適正な価格でどう農家が利用していくか、それを考えるということだと思います。
 また、金融事業については負担やリスクを軽減化することも考えなければいけないということもあります。ただし、これは最終的には単位農協が選択をしてもらえばいいわけで、代理店業務になりなさいと決めつける話ではありません。
 しかし、単協がどの道を選ぶかというとき、今のところもし農林中金の代理店となった場合、あるいは窓口業務だけ請け負ったとき、どれくらいの収入があるかが示されていないものですから、これを農林中金にできるだけ示していただいて、選択の材料をはっきりさせたほうがいいのではないかということです。
 単協については理事の構成も、担い手農業者、あるいは販売や経営のプロ的な人たちが積極的に就任ができるような仕組みと、そして青年、女性もしっかり理事になっていかなくてはならないのではないかと提起しています。

 

◆社会政策を担う「農協」も重視し

toku1407100404.jpg 森山 一方では地域のインフラとしての農協のサービスを考えると、組合員だけではなかなか考えられないのが実態です。北海道では准組合員のほうが多いわけですから、いろいろな問題がありますが少し時間をかけて議論をしないと、ますます過疎化が進んでいきます。非常にデリケートな問題ではありますが避けて通れないと思っています。
 ですから農協が産業政策としての面だけを受け持っていればいいということであれば、これは農協も非常に楽なんでしょうが、そうもいかないということです。やはり農業は集落機能とつながっていますから、社会政策といいますか地域政策、そこも農協が担っていかなければいけない。
 私の地元でもいわゆる限界集落と言われるような地域には商店がないものですから、車にいろいろなものを積んで週に何回か回って生活を助けているということまで農協がやっているわけですね。そういう現実がありますし、その傾向はまだ強まるような気もしますから、そこで農協がしっかり役割を果たせるようにしておかなければならないと思っています。
 自民党でも一時、地域マネジメント法人といったものを作って地域政策、社会政策はそっちで受け持ってはどうかという議論をしたこともありました。それはいい方向性ではありますが、現実にはなかなか難しい。かなりの予算も必要とするでしょう。それよりもやはり農業が多面的な機能を果たし続けるという意味からも、そこはやはり農協にがんばってもらうことがいいのではないかと思っています。

 

◆中央会の見直しは歴史と成果ふまえ

 森山 こうしたことをよく考えて、どう改革を進めていくかですが、ひとつは中央会についてです。中央会制度は昭和29年に議員立法で農協法改正をして制度化したという歴史があります。
 当時はおそらく大変な経済状況でしたから、一日も早く成立をさせて農協が破綻することのないようにということだったのだろうと思います。そこでかなりの権限を中央会に与えて今日までやってきたということですが、この政策は私は成功だったのではないかと思います。というのも昭和29年以降、農協の破綻はどこにもありませんから。必ず合併をさせるか、あるいは県内で支えてうまく処理するか、さらに県内で支えきれない場合は全国で支えて、ということをずっとやってきた。そういう意味で中央会が果たしてきた役割は大きかったと思います。

 中央会が監査機構を持っていることも非常にいいと思っています。数字だけならどの監査法人が監査をしても同じですが、中央会監査というのはすべての農協を横並びで見ることができますから、非常にいい監査意見書が書けるのだと思います。そこは評価しておかないと間違うのではないか。
 ただ、この法律ができたときと現在では農協の数が1万2000から700になったし1県1農協も3県できて、さらに4県め、5県めも見えてきていますね。連合会も共済連は平成12年に県共済連は全共連とすべて統合を済ませていますし、農林中金と県信連との統合も12県で終わっています。経済連も残っているのは北海道を含めて8県です。(文末図参照
 その意味では組織自体が大きく変わってきていますので、このことはやはり頭に入れて、全中、全農、全共連、農林中金はどうあるべきかという議論はこの際、しっかりやったほうがいいだろうと思います。
 このことについて今からはどう法律をつくっていくかが議論になるわけですが、象徴的に語られているのが中央会を法的に位置づけるか、位置づけないのかということです。私は個人的には法的に位置づけたほうがいいと思います。
 法的に位置づけて何が悪いのかという議論はしなければならないと思いますし、逆に中央会の指導が強過ぎて単協の自由度がないといった批判があるとすれば、そこはしっかり検証して、単協がしっかりやっていけるように、またいい取り組みは横展開できるようにしていくことは大事なことだと思ってします。ただ、一部だけを取り上げて、それがすべてであるかのような議論にならないよう、慎重でなければならないと考えています。

 

◆自主的な努力で経営の健全化へ

 梶井 今、さまざま指摘された点は日本農業・農村全般に通じることであって、そこに農協問題が重なっているということだと改めて思いました。
 ただ、中央会制度については改めて振り返っておく必要があると思います。実は産業組合時代から中心的な指導組織は自主的に作られたという歴史があります。産業組合法が制定されたのは明治33年(1900)ですが任意の中央会組織である大日本産業組合を自主的につくったのが5年後です。そしてそれを制度として強化しようと法律に位置づけた産業組合中央会が明治43年(1910)にできたという経過があります。
 戦後も農協法は昭和22年に公布されますが、中央会制度ができる前に各県で指導連をつくり、さらにそれを束ねる組織として全国段階には全指連(全国指導連)がありました。
 一方、当時、農協が経営危機にあったことは確かですし、その打開策として再建整備法(昭和26年)や整備促進法(同28年)といった法律が昭和29年以前にできているわけです。それに基づいて農協の負債整理などを進めており、指導連が指導していたわけですが、その指導力をさらに強化しなければいけないということから昭和29年に中央会制度を法制化する農協法改正が成立するわけです。
 ですから、必ずしも当時、経営危機になった農協の指導のためにできたというよりも、その前から農協への指導は行っていたけれども、さらに法的裏付けをもって強化しようということから中央会制度が導入されたわけです。
 森山 たしかにそうですね。中央会制度ができる前に農協の合併促進や経営破綻させないための法律ができていて、それをダイナミックに進めていくために中央会制度がかなり役割を果たしたのだと思います。
 梶井 こうしたいきさつを考えれば今の中央会について制度として問題にしなければいけないことはそれほどないような気がしますが。

 

◆協同組合らしさを経済事業でも核に

 森山 そこをやはりよく冷静に見て議論をしなければいけないのだと思います。
 われわれは中央会制度を法律に基づかない組織にするとか、あるいは中央会制度をやめるといった方向で決めているわけではありません。今からしっかり議論をしなくてはいけないことです。
 梶井 ただ、安倍総理は農協法に基づく現行の中央会制度は存続しないことになる、と発言していますが。
 森山 いや、ご発言をよく読みますと断定的に言っているのではないと思います。それぐらいの改革をやろうという気持ちだろうと思います。
 いろいろなところが変わってきているから改革しなければいけないところはあると思いますが、ただ法律に基づかない中央会でいいのかというとちょっと違うような気がします。

 

◇   ◇

 

 梶井 全農や経済連は協同組合としての事業をさらに促進するために、必要な限りで子会社をつくって事業を展開しています。しかし、共同販売や共同購入といったシステムがなおかつ必要だとすれば、やはり独禁法の適用除外にしておかないといけないだろうと思います。
 その意味で今回の全農の株式会社化の検討という提起は、もう独禁法適用除外にしておく理由はないのではないかという判断があるからですか。 森山 そこは違います。協同組合と株式会社は全然違うと思うんですね。協同組合は、万人は一人のために一人は万人のために、お互いに助け合って補い合ってがんばっていこうという精神ですが、株式会社は株主に対する配当が義務づけられていますから、儲からないことをしてはいけない、ということだと思います。

 

◆農村問題の視点で准組合員を考える

 森山 そうすると離島や中山間地域など条件不利地域を抱えるところで全農や経済連が株式会社になったときに、本当に農業資材が今のような価格で供給されるだろうかということがあります。
 いつ また、いつまでも肥料がある時代は続かないかもしれません。全農は協同組合ですから農家のみなさんから要求されるものは何としても供給していかなければなりませんので、世界的にチャンネルを張って供給体制をつくっていると思います。ですから、ここはやはり協同組合という組織を生かさなければなりません。
 ただ、全農にしても経済連にしても株式会社化したほうが効率のいいところはかなり子会社でやってきているということですから、今回の文書では今後の組織形態はみなさんで決めてください、としているわけです。
 梶井 先ほども指摘された准組合員の問題については「正組合員の事業利用との関係で一定のルールを導入する方向で検討する」とされましたが、准組合員の事業利用を制約しようということでしょうか。
 森山 これは相当時間がかかる問題だと思います。今の農村集落での生活の実態をみますと、いい知恵がそう簡単に出てこないと思います。
 梶井 規制改革会議が当初とりまとめた「意見」では准組合員の事業利用は正組合員の半分以下に、ということでした。
 森山 そうです。しかし、それでは農村の実態にそぐわないです。これは農協問題というよりも農村集落問題なんですね。
 梶井 その意味でいえば、准組合員制度があるのは日本だけという点を考える必要があるのではないでしょうか。全中は1970年代に「生活基本構想」を打ち出したときに准組合員制度をどう考えるか提起しましたが、改めてその方向を考えてもいいのではないかと思います。たとえば、共益権については正組合員は1人1票、准組合員は3人で1票だとか、そういうかたちの共益権付与の仕方もあると思います。

 

◆農協活動への参加広く促す改革も

 梶井 今は各地域での集落座談会に准組合員も集まって自由に発言しているわけですね。正規の議決権は准組合員にはないわけですが、こうした実態からすればむしろ准組合員制度のあり方を検討することを今度の改革では考えたほうがいいのではないか。つまり、事業利用の制約といった排除の方向ではなく、もっと農協の協同活動に一緒に参加してもらうためにどういう道がいいのかを議論する。
 森山 そういった視点も含めれば少し時間をかけて議論をすることが必要だろうというのが今回の整理です。
 梶井 改めて中央会改革の問題をお聞きしますが、「現行の制度から自律的な新たな制度に移行する」とされました。この自律的な制度とはどういうイメージでしょうか。 森山 「新たな制度」というのも非常に定義が難しいところですが、ただ広く議論をしなければなりませんから、あまり狭めた議論にならないように表現したと思います。ですから、かなり広い角度で議論できるのではないか。やめますよ、というような話ではなくてですね。ただ、「新たな」というのは、この法律ができたときと現状は大きく違ってきましたね、という認識はしようということです。
 “自律”についていえば協同組合の精神が生かされれば自律ができるということだと思います。 梶井 現状の中央会は自律的ではなく他律的になっているから、ということですか。
 森山 いえ、そこまで言っているわけではなく、本当に協同組合の精神が生かされていく中央会になることが自律につながると私は思っています。 梶井 先ほども監査についてご指摘されましたが、中央会監査とは協同組合としてのあり方をふまえ、そして協同組合のあり方からいってこの単協の経営については どうか、ということを指
導しながら監査をしているわけですね。その点が単なる会計上の公認会計士監査とは意味が違うわけです。
 森山 中央会については、繰り返しますが法的な裏づけがないと調整機能も果たせないと思います。何も法的な裏づけがなければ、何の資格でわれわれ単協に言うのか、と言われても何も言えない。そこが非常に大事ではないでしょうか。
 梶井 農地中間管理機構も動き出しますが、これが機能するためにはやはり「人・農地プラン」をふまえて農地の利用集積を進めるべきだと衆参の農林水産委員会が付帯決議をしました。
 その「人・農地プラン」を現場で実際に動かしているのは、農協の営農指導員や農業委員など農家と接触している人たちが中心だと思います。そこに中央会の機能がおかしくなるようことがあるとすれば、農地中間管理事業もうまくいかなくなるのではないかと心配になります。
 森山 これは非常に大事な政策ですから、ご指摘のようなことは十分に配慮しなければなりません。実は、今回の農協改革の議論では自治体から中央会を残してほしいという要望がずいぶんたくさん来ました。中央会がなくなって、いちばん最初に激痛が走るのは県なんでしょうね。各県の農業政策をつくるのに大変なことになるのだと思います。したがって、全中がなくなれば農水省が大変になると思いますよ。
 梶井 とくに農水省は地方の出先機関をどんどん整理してきましたから現場の情報が入らなくなったと言われていますからね。現場で指導している中央会の機能は地方にとってはとくに大事だろうと思います。

 

◆新農政の推進には営農指導が不可欠

農協改革案をとりまとめた自民党の合同部会、6月10日 森山 営農指導機能がなんとか維持されているのは農協なんですね。もう地方自治体もここは非常に手薄になっています。農協に頼っていますが、農協にがんばってもらうことが私はいちばんいいと思います。
 営農指導というのは、きょう指導に行って、指導料はいくらです、といった話ではありません。農家が長期にわたって利益につながるようにというのが協同組合としての農協の営農指導だと思います。この役割が本当に大事だということをしっかり理解をして、営農指導がしっかりできる農協のあり方ということを考えないと、日本の農業の将来はないような気がします。
 梶井 その営農指導については、信用・共済事業の収益で補てんして成り立っているとよく言われます。営農指導は賦課金を取れることになっていますが、営農指導のために賦課金を高くするということはどこもやっていませんね。
 森山 それは現実的ではないからです。この問題に関しては、郵政事業と農協がよく似ていると言われます。郵政事業も簡保と郵貯でいくらか利益を上げて、本来は国がやらなければいけない郵便事業の赤字分を埋めているわけです。
 農協もそうで信用事業と共済事業でいくらか利益を上げて、営農指導というすぐには利益につながらない事業をみているということです。ここはわれわれもよく説明をして間違いのないようにしなければいけないと思っています。

(写真)
農協改革案をとりまとめた自民党の合同部会、6月10日

 

◇   ◇

 

 梶井 今日のお話を伺うと、制度ありきが前提ではなくJAグループ自らがまず改革を考えることが前提だということですね。
 森山 そうです。みなさんでよく考えていただく。それは協同組合だから当たり前なんですね。
 梶井 自己改革のための議論にこれからJAグループも取り組みますが、どんな議論のあり方を期待していますか。
 森山 できるだけスピードを上げてやっていただきたいと思います。協同組合ですから、下部組織での議論の積み上げが大事であることはその通りですので、そこはわれわれが理解をしなければいけません。トップダウンというわけにはいかずボトムアップだということですが、そのやりとりをスピーディにやっていただきたいと思います。
 梶井 どういう予定で検討しますか。
 森山 来年の通常国会に法案を出すという約束になっていますから、年内には法案の議論が終結しないといけないと思います。法案についていえば来年の1月15日ぐらいまでだと思います。それに間に合うようにしなければいけないと考えています。ただ、准組合員の問題などはそれまでに結論を出せる問題ではありませんから、もっと長期に議論する部分は残さなければならないと思いますが、タイムスケジュールだけはしっかり示せるようにはしなければなりません。
 梶井 ありがとうございました。


【インタビューを終えて】
 “中央会制度については…法的な裏付けがないと調整機能も果たせない…。法的な裏付けがなければ、何の資格でわれわれ単協に言うのか、と言われても何も言えない。そこが非常に大事ではないか…。”という森山議員の発言、党農協問題PT座長のこの発言は重要である。是非ともこの見解を党内多数の見解とし、“農協法に基づく存在はあり得ない”(6・25付「日本農業新聞」)という甘利経済担当相のような見解が政策を左右しないようにしてもらいたいと思う。
 “農協法に基づく現行の中央会制度は存続しない”という安倍首相の発言は、“断定的に言っているのではないと思います”と森山議員は受け取っておられるが、“60年ぶりに農協の抜本的改革を断行する”という記者会見での発言ともあわせて考えると、どうも“断定的に言っているのではない”とは受け取り難い。中央会制度ができて丁度60年目が今年なのである。森山議員に頑張ってもらいたい。

農水省の説明資料より

 

 

 

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