農政:守れ! 命と暮らし この国のかたちを
【座談会】今こそ「協同」に挑戦 地域への関与をさらに 2015年7月23日
第27回JA全国大会に向けて
<出席者>
阿部雅良・JAみどりの専務理事
小内敏晴・JA佐波伊勢崎前常務理事
宮永均・JAはだの専務理事
石田正昭・龍谷大学教授(司会)
JAグループは10月に開く第27回JA全国大会に向け、全JAで大会議案の組織討議に入った。68年ぶりに農協法が大きく変わり、組合員との丁寧な討議が、今回は特に求められる。JAはどのような状況にあり、組合員は何を求めているか、また将来を展望し、JAはどうあるべきか。本紙が展開する「地域創生の主役は農業協同組合」のキャンペーンの一環として、日常的に組合員に接している3JAの役員に登場してもらった。
◆国の改革に違和感
(写真)いま何が問題かーJAの現場から意見が続出
石田 討論の大筋としてJAの自己改革と政府の農協改革の違いは何かから始めたい。政府の改正の意図と、JAグループの自己改革、この2つの脈絡をどのようにつけるか。
小内 全国大会の組織協議案は、全中が出したJAの自己改革の流れにある。昨年、国が改革を言い出したのは唐突だった。農業が危機的状態にあることは事実だが、その原因がすべて農協にあるという認識はなかった。それがにわかに役割を果たしていないとして、農協の責任論に発展してきた。
では政府のいう改革が斬新かというと、いままでの施策の焼き直しに過ぎない。担い手の育成や規模拡大、それによる農業者の所得増大など、大多数の農民の感覚とズレた農民不在の改革である。職能組合化を志向しているが、戦後の専門農協の経過を知っているわれわれには違和感がある。
大規模な専業農家と農協の経営感覚はイコールではない。われわれは「農業」よりも「協同」を優先する。従って農業経営者が農協の経営者としてふさわしいかというと必ずしもそうではない。農協の理事を特定するというのは問題がある。
また准組合員は農協のメンバーだ。国は第2組合員のような捉え方をしているが、その区別には違和感がある。JAの窓口で正、准組合員の差をつけることなどできない。
◆狙いは農村市場に
石田 国の狙いはどこにあるのか。
阿部 政府の改革は、安倍首相を先頭に資本家や民間企業が農村市場を取り込もうとしている。またTPP(環太平洋連携協定)で、アメリカに対する約束がある。
TPPにはJAグループが徹底して反対した。改革はまず全中からと考えたのではないか。すべて安部首相の意向が入っている。
小内 その通りだ。TPPは最初、学者だけでなく、多くの組織、団体が反対していた。しかし、そのうち新聞などで反対する学者の意見は取り上げられなくなり、医師会なども腰が引け、大きな団体は農協だけになった。そして農協改革で農協の政治活動はまかりならんとなった。すべてではないが、TPPがかなり関わっている。
石田 自己改革では、JA独自の取り組みが求められているが、どのような施策が必要か。
阿部 政府は、全中が単協の自主性を阻害しているというが、現実は全く違う。単協はみんな自分の判断でやっている。ただ、准組合員を含め、いまや農協の組合員は1000万人を超えており、組織も農業も大きく変わった。
農業の法人経営が増えたのもその一つで、今日、日本農業法人協会の会員だけで全国生産量の3、4割を占める。だが、法人経営にするには農業機械だけでも何千万円の投資が必要だ。米の価格が下がるなかで将来は厳しい。一方で農協は地域を守る役目がある。
そこで、JAの取り組みとして集落営農が出てきた。管内の農業従事者の平均年齢は66.2歳で高齢化しているが、40歳代の後継者も頑張っている。これから彼らとどのような関係をつくっていくかが農協の課題だ。
(写真)阿部雅良 氏(JAみどりの 専務理事)
◆法人とは協力関係
石田 農協は法人経営とはどのようにつきあうべきか。いいとこ取りされる心配はないか。
阿部 現在、管内には88の集落営農、55の農業法人がある。法人になると経営感覚が高まり、生産資材の価格などで農協への注文が厳しくなるが、こうした経営が発展するのはいいことだ。だが、その存在はまだ「点」であり、地域を守ることはできない。点をまとめて面にするのが農協の役目だと考えている。もっと法人のことを研究しなければならない。
法人経営が経営危機になるのは、代金回収の滞りによる資金ショートだ。総合事業を展開している農協は信頼がある。ただ、その強味を農協は自覚せず、生かし切れていない。きちんと話のできる職員を育て、法人との信頼関係をつくることが重要だ。
当然、法人経営には競争原理が入る。だが農協にはこれと折り合いをつけ、地域づくりをコーディネートする役割がある。法人だけでなく、行政や商工会などと協働していかなければならない。そうした機会には積極的に参加するよう職員に働きかけている。
宮永 法人が独立すると、どうしても農協との関係は希薄になる。そこに「改革」で国が手を伸ばしてきた。地域をマネジメントするのは、農協のことが分かる人でないと。
小内 法人はしばしば鬼っ子になる。ただいったん農協から離れても、一人ではやっていけず最後は農協に戻るケースが多い。一度はその過程を経ないと駄目かもしれない。いまは我慢時だと思う。
石田 いいとこ取りは協同組合では許されない。農村では抜け駆けが嫌われたが、豊かになって「自分が有利ならいいのではないか」という考えが出てきた。農協があるのは当たり前で、潰れるはめになるのは想像もしない。
阿部 潰れっこないという考えはこれからも通用するかどうか。法人を意識して、どう農協の経営を変えていくかを考えなくてはならない。
小内 農協の資材価格が高いという問題は、農協経営安定を第1に考え、本来の協同活動をおろそかにしてきた結果だと思う。全農自体のマージンも決して大きくはない。仕入れで商社に負けているからだ。大きくなったので、血の通った仕入れができなくなった。単協の仕入れと全農の仕入れ機能を一体化し、商社と交渉する仕組みが必要だ。
25億円の生産資材を扱っているが、それを2、3人の仕入れ担当でこなしている。有利な仕入れなど絵に描いた餅だ。
石田 全農まかせでなく、自分でということか。
宮永 JAはだのの購買高は38億円余り。規模が小さいので全農なくして事業はできない。ずっと共同購入を守ってきた。これまでも経済事業の改革に取り組んできたが、これも農家を有利にするためで、経済事業の赤字解消はできていない。
(写真)小内敏晴 氏(JA佐波伊勢崎前常務理事)
◆「公平」の説得を
石田 少量多品目と大量少品目を全農としてうまくさばくことができていないのではないか。
小内 全農の抱えている問題はJAと同じ面がある。大口、小口の両方に対応しようとするから難しい。スポット的に安く仕入れるスタンドプレーはできるが、他にも多くの資材があり、農協の業務としてはできない。
阿部 これは平等か公平かという考えになるが、大口へは7%還元している。公平の基準をどのようにつくりあげていくか。それが自己改革だと思う。
小内 平等から公平へはいいが、実務では難しい。組合員から「差別するのか」と抗議されて、「あなたは小さいから」とは言えない。
阿部 厳しいが、それをやらねばならない。そこで、公平を理解してもらうための組合員教育をしたいと思っている。農家経営は、わずか5反歩でも機械を一通りそろえると2000万円くらいかかる。農家の所得を増やすにはそれをやらなければならない。平等で農家の経営が続くのか。信念を持って農協も変えなければならない。
小内 協同組合の本質を保ちながら、どうやって最大公約数の組合員の理解を得て、円満にできるかが問題だ。
石田 法人は法人だけの部会をつくり、共同購入するなどの方法もあると思うが、そうした議論が現場でできるのか。
阿部 還元のルールは組合員は知っているが、特に苦情はない。
小内 若手の間で議論している。ただ平等から公平へは極端に解釈する人もいる。農協はどうして高齢者の離農を奨励しないのかと。高齢の農家は優れた技術を持っているのだが、技術や農村文化の伝承が関心を持たれなくなった。
阿部 JAや地方自治体、それに農家が徹底的に話し合って農地の集約を進める「人、農地プラン」(地域農業マスタープラン)が機能しなくなった。この制度では企業の農業参入が難しいためだが、これが機能すれば地域の農協も加わって農業について話ができる。だが、国は農協を外して、農業法人を相手にするようになった
石田 国は、農協の理事に認定農業者が入ることを促し、農協を変えるよう期待しているが、現実性があるのか。
小内 正組合員7000名のうち、主業農家は1割の700名でこれに重点を置くというのだが、総代550名の1割は55名。農協の方針を決めるには総代の過半数の270名の賛同が必要で、単純に当てはめると、55名のために270名の賛同を得るのは難しい。この1割を優遇しているのが実態だが、これを言うと過半数は取れない。だがこのことを理解してもらわなければ、これからの農協はやっていけないだろう。
ただ、小さい農家も農協への帰属意識は高い。規模の大小ではない。そこをどのように整理するか。協同組合としての道筋を立てなければならない。
阿部 農協は存続させる使命がある。それには現状分析して対策を立てることだが、集落営農の実際の構成員は65~70歳で後継者がいない。しかし法人化すれば、その法人へ仙台からも大阪からも若い人が来る。准組合員に入ってもらえば、地域農業は成り立つ。
そのため、農協も職員がエンジンとなって支援する。今は100ヘクタール、200ヘクタールの経営が出ており、まとめて小さかった昔と比べ、経営の基盤が違う。農協の自己改革は、自ら環境に合せてフロントラインが力をつけて、法人といっしょにやれるかだ。
協同組合の基本は助け合いであることに違いはない。しかし、農業の環境が変われば、農業協同組合論が変わってもいいのではないか。
石田 すでに総合農協は「マス」で捉えるのは無理ということか。法人への対応はどのように。
阿部 パーツパーツに農協のフロントラインが対応できるようにする。小さい経営にも、法人経営にもそれぞれ対応できるように。そうしないと、准組合員だけ、金融共済事業だけで、農業には関係しませんよという協同組合がでるのではないか。そして農業振興は法人だけでやるよとなるのが怖い。
農業用水路は法人の勝手にはできない。その対応をJAが行う。現実のニーズにあった対応だ。このような対応は、大きい経営と小さい経営で違い、「平等」ではないと思う。
小内 10売上げの農家に5のサービス、100売上げの農家に50のサービス、それはいい。しかし100の人に70のサービスをすると10の人のサービスは3になる。つまり、大きい農家へのサービスの付け替えが起こる可能性がある。
石田 簡単に言うといいとこ取りか。全員参加という形で解決しないと、他の人は納得しない。
小内 農協には農村、農業を守る責務がある。それには経済事業の収益改善などを追求しても根本的解決策にならない。総合事業によって、10の農家に対して7返す、1の農家に0.7返す。それは金融、共済の収益で返す。だれも損をしていないという仕組みがないと。それが総合農協だ。
阿部 後出し、先出しの問題でもあるが、100万円の予約購買で7%、初めから引いている。農協が採算がとれるものなら、これを続けることで継続的に地域の人につきあってもらえるかなと思っている。国の農業ビジョンのない中で法人がだめになったら、農協が抱えこんで一緒に伸びていくイメージを持っている。
(写真)宮永均 氏(JAはだの専務理事)
◆大きい准組の存在
石田 准組合員の問題は、5年先送りされた格好だが、これをどうみるか。
宮永 都市部ではいろんな農家がある。30アール、50アールから、大きくても3ヘクタールで集落営農、法人もある。貯金残高は2100億円あるが、710億円が正組合員で、准組合員は950億円を占める。
改正農協法で、農協は儲けろ、儲けを配当すればいいというが、組合員から利潤を追求して農協の事業ができるだろうか。ファーマーズマーケットで地域の農産物を消費者に供給しているが、地域の人が新鮮な農産物を安く買えて、生産者は売って喜ぶ。それで地域を守る。その関係が崩れると地域や国はどうなるのか。
阿部 年金が98億円、農産物の販売高は103億円だ。農産物は年1回だが、年金は年間で、土日も稼いでいる。
現在の1万3000名の正組合員が7000から8000名になるとどうなるか。スマホの普及した今日、農協のあり方、そして経営者の力量が試されるときだ。地域は絶対に守らなければならない。そのために戦わなければならない。准組合員から「農協を潰すな」という運動が起きるような農協でありたい。
小内 市街化区域には農協の貸し出しの35%を占める支店があるが、その支店は損益でも断トツのプラスになっている。その収益をマイナスの支店につけかえている。市街化区域の組合員は今のところ承諾しているが、これ以上は駄目だというだろう。
宮永 その通りだ。資産運用部会に500名ほどの部員がいるが、都市部の農協ではそうした組合員がコアになる。准組合員の利用が事業に影響を与える。信用共済の利益を営農経済へ付けかえることが将来とも通じるのだろうか。
小内 准組合員といっても、元は正組合員だった人が多い。彼らは、自分は落ちこぼれだからいいよといっていた。だが、もうこれ以上は駄目、となるだろう。
石田 これまでは正組合員も准組合員も、ひとつの器に収まると思っていたが、平等と公平、これは大きな課題だ。
農協の経営は非営農部門の利益で埋め合わせする構造になっているが、改正農協法で監査が一般の企業と同じようになる。このやり方が許されるだろうか。施設を信用事業の貯金で建設し、他部門の運用ということになると、信用事業は譲渡しなさいとなる。金融機関並みの会計監査が入り、農業振興もできなくなる。
宮永 農協には部門別配賦の基準があり、それに基づいて赤字補てんをしている。公認会計士の監査ではそれができず、赤字は赤字で報告することになる。最終的にはすべて黒字でないと認められない。監査証明が出ないと、事業が継続できない。赤字があってもよいというわけにはいかなくなる。
小内 営農指導と経済事業は異なる。営農指導は収益は生まないもので、他部門から補てんすると言う暗黙の了解があった。それがいつの間にか一緒になった。昔は信用事業を「農業金融」といったが、それも聞かれなくなった。
石田 営農指導事業の黒字化、それは専門農協化への道だ。営農事業縮小である。
宮永 TACの指導で料金をいただくことになるだろう。そういうルールになる。
小内 営農事業は企業の研究所と同じだと思っている。営農が頑張るから信用、共済もできる。そこをきちんと押さえて理論化しないと。それに減損会計がある。営農や管理部門で認められている共有財産の「共有」の概念がなくなる。これは農協の経営にとって大変なことだ。青色申告や記帳代行などの支援もできなくなる。
阿部 業務監査もなくなるなど、会計監査の問題は奥深い。政府は農協の存立基盤が何であるのかが分かっていない。このままでは潰れる農協も出る恐れがある。このことが全国の農協で認識されているのだろうか。
石田 これまで認められていた農協独自の事業・経営ルールができなくなると、そうでない農協経営をやれということになる。
宮永 それはJAバンク法ですでに手を打っている。信用・共済は農林中金、全共連の代理店になれということだ。
石田 そもそも農林中金は協同組合ではない。しかし共済連は協同組合である。農協が代理店化して、准組合員がいっぱい利用すると、准組合員利用規制に引っかかり、最後には株式会社化せざるをえなくなる。そうではあるが、金融庁は、農協の金融機関はいらないといっている。
(写真)石田正昭 氏(龍谷大学教授)
◆「地域」あってこそ
石田 政府の「農協改革」には地域のことに一切触れていない。そこは農協の生命線であり、3、5年先、何をすべきか。
宮永 キーワードは「地域」だ。これまで農協の基本路線として取り組んできた食と農の協同組合をどうするか。全国の農協は農業地帯、都市部と、それぞれ事業のやり方がある。JAは地域づくり、そのための仕組みづくりをコアとし、准組合員や行政と一緒になって、事業、運動を展開してきた。
JA綱領にも地域に根差した協同組合と規定されている。准組合員の利用が制限されると協同組合ではなくなる。このへんで、国と農協の考えが大きくずれている。
石田 歴史的にみても、明治の産業組合は地域の人すべてを対象とした。准組合員が増え、正と准が逆転しても問題ないはずだ。
宮永 それがいま「農業者のため」となった。しかし、現実は地域のリーダーが農協のリーダーである。営農振興が地域の経済を支えている。農協の事業は農業振興だけにとどまらない。それを国は認めないとなった。そこは手放さないという理論が必要だ。
阿部 正組合員も准組合員も地域で生活している「生活者」である。地縁・血縁の関係の中に住み、そこに農地があり、生活者を守っている。それが駄目になると地方が壊れる。維持するには農協のエンジンがいる。准組合員が利用しないと成り立たない。准組合員にも、農協の役割を知ってもらい、地域はわれわれ農協が守るのだという意識を高めたい。
宮永 農地法改正で、農地は「所有」から「利用」重視になった。都市農業支援センターや市民農業塾で新たな担い手を育ててきた。組合員は7000名から1万名に増やし、さらに世帯加入運動を展開して2011年1万世帯、1万2000名を達成した。これから地域協同組合の時代をつくるという意識を持っている。
石田 JAの自己改革は、従来のJAグループが取り組んできた方向を、さらに強めるのが本筋ではないか。
◆准組の参加機会を
石田 准組合員に共益権を与えるという考えはどうか。
小内 身分に貴賤はない。准組合員は農業やっていないが、よきパートナーだ。それを今度は1等国民と2等国民に分けるのか。これは協同組合思想にとって全く反対の方向だ。むしろ共益権を与えるべきだろう。1号、2号組合員とする方法もある。
宮永 同感だ。3000名の正組合員に対して准組合員は約1万名。総代制でなく、総会を開いているが、今年は1700名が出席したうち、700名が准組合員だった。准組合員全員に共益権を与えるのはどうかと思うが、さまざま形で農協の事業に参加することはできる。生産組合が122あるが、生産組合のないところは協力員をお願いし、農協の資料を配ったり、春と秋には准組合員を集めて座談会をやっている。そういう組織づくりをすれば、かなり乗ってくれるだろう。またコアの正組合員の多いところには准組合員も入っており、視察研修などにも参加する。仲間づくりとしての活動参加である。
石田 准組合員は必ずしも正組合員と同じ権利を持ちたいとは思っていないかも知れないが、まず、支店運営委員会などに入る仕組みづくりから、農協の活動への参加を促す必要がある。
これは正組合員も同じこと。規模が大きくなって、総代でないとなかなか意思反映させるのは難しい。参加の活動は農協本来の姿ではないか。
小内 准組合員は農協に関係ないわけではない。農協にシンパシーを持っている。戦後はいろいろな形態の農協が生まれた。いろんな形があってもいい。今までの農協はそれを許容してきたが、今回の農協法改正はこれを純化しようとしている。
一方で、農協を利用せざるを得ない地域もある。管内のある地区では葬儀の97%が農協の葬祭事業を利用している。それを利用できないとなると、准組合員は困る。
石田 ほかに事業者がいないなら仕方ないというのが政府の考えだ。他の業者がいて、競争があるところでの事業は控えなさい。そうでなければ別会社にしろということになる。農水省はそれをこれから5年かけて調べるという。
阿部 農協は地方創生のエンジンとして、地域の商工会などと連携し、新しい産業を創出すべきだ。行政や商工会のプロジェクトや会議に職員をどんどん入れていくべきである。政府は地方創生をいいながら農協の事業を制限しようとするのは矛盾しているではないか。
国は1000兆円の借金を抱えており、このまま地方が乾くと行政も縮小する。農協は経営者も職員も、意識を変えて挑戦しなければならない。
◆萎縮せず主張を
石田 いま、ここでJAグループが委縮することが一番怖い。
小内 日本の協同組合体系は遅れているように思う。フランスにはフランクな協同組合が数多くあり、組織がスリム化している。日本の協同組合セクターも理論化しながら、スリム化する必要がある。
石田 ここで腹をきめるのが大切だ。例えば生産資材共同購入の組合があってもいいのでは。
阿部 例えば全農。いまある組織をどう変えるか。組織を変えるのはボトムアップであるべきで、各農協は全農にはっきりもの申すべきだ。
宮永 全農の県本部制は暫定的だといっていたが、今も実質的には3段階ではないか。
石田 これまでみなさんの意見をまとめると、農協の自由な活動を阻害しているのは、むしろ国だと考えた方がいいのではないか。小さな農業協同組合でもいい。金融は別として、購買、販売などのできる組合設立の法体系をつくったらどうかということだ。
阿部 金融は基本的にとんとんで、農業振興に一生懸命な農協ほど経営が苦しい。農家も20ヘクタールくらいがよい。それ以上は生産費が下がらないうえに、米価の下落で規模拡大した法人ほど苦しい。特に東北でそうだ。いまは交付金でなんとかもっている。
石田 法人は国営農場のようなもので、農協は潰しても農業法人は守るということか。
阿部 農業をしっかりした産業にしたい。農業経営者をいっぱいつくり、農協はそのサービスに徹する。そのためにはいろんな形の協同組合があってもいいのではないか。
石田 長時間ありがとうございました。
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