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農政:東日本大震災から5年

大型・法人化を支援 JA名取岩沼 佐藤 富志雄代表理事組合長インタビュー2016年3月10日

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 5年前のテレビ実況で高速道路まで押し寄せた大津波を記憶している人も多い。そのとき被災地である名取・岩沼地区では、いま大区画ほ場整備の重機がうなりをあげている。JA名取岩沼の佐藤富志雄組合長に、農業再興への取り組みを聞いた。

◆米依存を減らし 複合で強い農業

JA名取岩沼 佐藤 富志雄代表理事組合長 JA管内で冠水した農地のほぼ90%は復旧した。面的には整備され、見た目には田んぼになっているが、客土した耕土が栽培に適しているかどうかはこれからであり、さらに土壌改良が必要になるかもしれない。従って、実質的には農業の復興は道半ばというところだと思っている。
 震災後、農地のがれき撤去から除塩と、復旧の経過のなかで、どうせなら大型ほ場にという動きが出て、再度基盤整備となった。農家は津波で農業機械から乾燥調製施設まですべて流されたので、農作業の受け手がいれば任せようという気持ちが強く、県の方針である大区画化のほ場整備を受け入れた。
 県は津波被災農地すべてについて1ha以上の大区画化を打ち出しているが、それを使う組織として集落営農や法人組織による大型の経営体づくりを進めている。そのための復興支援で無料リース事業があり、被害前の農機具や施設を国が貸し出すが、それは生産の組織化が前提となっているので、被災地では一斉に法人化に取り組んでいる。事業主体は市町村で、JAは組織化のための意見調整やノウハウの提供などソフト面の支援を強めているところだ。
 その後の地域農業をどうするかが大きな課題だが、管内は基本的には米、麦、大豆の土地利用型農業でいくべきだと考えている。だが経営としては米に過度に依存しない農業を目指したい。それが結果的には強い農業への道であり、具体的には複合経営をめざすべきだろう。
 特に、低米価の今日、地域の自然・社会環境を生かした農業を、それぞれの地域、法人で確立するよう指導している。花きや園芸など、災害前の経験者がいればその人を中心に米以外の作物の栽培を再開するよう勧めている。


◆担い手育つ経営 自ら範を示して

 2年前に組合長になったが、それまでは会社法人で農業経営していたので、その経験を活かし、JAとして指導したい。特に法人経営は経営のガバナンスが重要で、これがないと成功しないことは自分の経験でよく分かっているつもりだ。法人に取り組む以上は自分で経営に責任を持ってもらわなければならない。こうした内容についてJAとしてアドバイスしていきたい。
 併せて経営を継続させるためには後継者となる担い手の育成が必要だ。ただこれは第三者ではできない。法人自ら育てること、それがガバナンスだ。一例として、私の会社では役員定年を65歳とし、2年前に社長を辞めた。早すぎるとの見方もあるが、会社の職員の平均年齢は30歳代半ばで、主要なスタッフは40歳に満たない。社長も40歳代だ。
 これは後進に道を譲り、組織を滞りなく継承させるためのものだが、これから地域農業の中心になる大型経営の法人は、こうしたガバナンスを身につけて、経営が失敗しないようにしてほしい。
 震災前に会社では76haの経営規模を持っていたが、震災復興で県が被災地の新しい農業の形として大型経営法人化を打ち出したのはうちの会社がモデルと一つになったと自負している。
 会社の経営する農地は津波で90%が使えなくなって、その年は稲作を放棄。しかし幸いにも育苗ラインが残り、やはり冠水で壊滅したJA管内の育苗施設に代わり、管内の育苗をすべて賄った。また栽培ノウハウを持っていたことから、被害を免れたあちこちの水田の大豆作を請負った。この面積が約60ha。社員を解雇することなく、経営を続けることができた。
 そして1年目の暮れから除塩作業が始まり、平成24年には全体の6割で水稲の作付けができるようになった。その間、会社は被災農地の復旧作業の受託などもあり、パートを合わせ15人ほどの雇用を維持し、労災や福利厚生などを、一般の会社に負けないくらいにはしている。


◆担い手確保には 収入確保の道を

 大震災のように個人の力ではどうしようもないことがある。しかしわれわれはそこで生きていかなければならない。ベストでなくともせめてベターな選択ができるように、ネガティブでなくポジティブに考えることが大事だと思っている。
 自然災害は特にそうだが、TPPや米価の低迷などもそうで、嘆いていても仕方がない。そのためにはリスクマネジメントが必要で、法人経営で常に意識してきた。JAの経営でも同じだと思う。
 組織としての経営体ができても、それをどう運営し、継続するかが問題だ。とくに農業の将来を考えると、担い手をどう確保するかだが、きちんと経営し、収入が確保できると後継者はおのずと張り付くものだ。そのためには、現在の法人に経営感覚を身に着けてもらわなければならない。笛や太鼓でも呼び掛けても担い手は育たない。


◆自立意識が大切 JAも意識改革

 現場はいわば農業のプロ集団だから、栽培技術は十分ある。問題は経営だ。自己責任の経営感覚を身に着ければ、自ずと自分で勉強するようになる。まわりから言われたので法人組織をつくり、国や県の支援頼みで「赤信号、みんなで渡れば怖くない」では、これからの荒波に振り落とされてしまうだろう。出来上がった組織に魂を入れる。そうした経営の環境づくりをするのがJAの役割だと考えている。そのためにはJA職員の意識改革も必要だ。
 5年間の復旧・復興の過程で、国と現場の感覚、考えの差を感じてきた。一度現状に復旧させて、さらに大区画ほ場に整備するなど、無駄なことだ。縦割り行政のなせる事かもしれないが、1年くらい作付を休んでもいいから、最初から大区画にする方が効率的であり、経費も安くて済む。
 農業再建のための公的機関の融資についても、担保主義だけでなく、その人物と能力を見て判断するようにしないと、能力のある担い手が育たない。経営は常にリスクを覚悟して行うものであり、この点でもJAの意識改革が必要だと感じている。
 被災地に対して支援や応援をするのが当たり前、支援を受ける側は、受けるのが当たり前と考えては駄目だと思う。被災地が自ら立ち上がり、それを見て外部からの支援があるのであって、初めから支援を期待しては達成できない。それがリスクマネジメントであり、その方が成功する確率が高い。いざとなると人間は力以上の力を発揮するものであり、この5年間でそういう例を見てきた。常に前向きに行動したい。
(写真)JA名取岩沼 佐藤 富志雄代表理事組合長

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