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農政:JAは地域の生命線 国の力は地方にあり 農業新時代は協同の力で

総合農協支える 全国組織改革を JA全中 奥野長衛会長インタビュー(上)2016年10月5日

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共同購入、共同販売で結集力を高める

 来年、2017年は農協法が施行されて70年となる。農協組織は時代に合わせて組織、事業を改革してきたが、今はまさに農業所得の増大、農業生産の拡大、地域の活性化をめざした創造的自己改革の取り組みを進めている。また、9月8日にはJAグループの生産、販売、購買事業の改革を中心とした「魅力増す農業・農村の実現に向けたJAグループの取り組みと提案」を決めた。JAグループの基本的な取り組みの視点を、改めて奥野長衛JA全中会長に聞いた。

◆皆で助け合い 地方を支える

 ――農業協同組合は2017年11月に農協法施行70年の歴史を迎えます。農協は食料増産と安定供給、農村と地方経済の発展など戦後の日本社会に大きな役割を果たしてきたと思います。改めて農協の存在、役割をどう思われますか。

JA全中 奥野長衛会長インタビュー 私は農業協同組合法と同級生ということになります。戦後すぐは、いろいろな生産手段が破壊されましたから第二次産業は壊滅状態で、農業をはじめ第一次産業は重要だったと思います。その後、朝鮮戦争などの特需もあって第二次産業も復活し、日本は貿易立国をめざし、どんどん工業化していきました。
 高度経済成長期に向けて、田舎の労働力をどんどん吸い上げるというかたちで経済が伸びてきた。そのときに農村が明らかに変わっていったという歴史だと思います。
 この70年の間に経済発展して今は就農者は200万人を切ったわけですが、これは先進工業国の宿命です。ただ、こういうかたちになる過程で農協が果たしてきた役割は大きいし、これからも重要です。農協はその前には産業組合という法的な基盤もあったわけですが、法律ができる以前から田舎には助け合いがきちんとあったのだと思います。農作業の助け合いを"結(ゆ)い"と言いますが、みんなで助け合いながら集落を大事にしてきた。やはりそれが農協の基礎になっていると思います。
 とくに今、地方は疲弊していますから、それを支えていくためのしっかりとした芯を持っているのがJAだと思っています。たとえば限界集落での買い物弱者にもいろいろな生活物資を届けるなど、JAは地方の生活を支えているインフラそのものだと思っています。

 ――農協組織70年の歴史は時代の変化に合わせて自らの力で組織、事業、運動を改革してきた歴史でもあると思います。
 しかし、今回は政府から「農協改革」が提起され、この4月には改正農協法が施行されました。会長はこれを"新農協法"だと指摘されていますが、その意味を改めてお聞かせください。

 私が新農協法だというのは、あれだけ農協改革に反対してきて"改正"という言葉を使うことにものすごく違和感があったからです。新しい農協法が今年の4月1日に施行されたと表現するのが正しいのではないかという私の問題提起です。

 ――法律のどこがどう変わったかというよりも、突きつけられているものはもっと重い、と受け止めるべきだということでしょうか。

 そうです。実は第1回の農協大会が昭和27年に伊勢(当時、宇治山田町)で開かれています。そのことがずっと頭にあったものですから、今年の4月、新農協法になったのだから新しい出発だという思いを込めて全国の中央会会長会議を三重県で開催しました。
 70年間、そのときどきの時代の要請に合わせて事業の形態を変え、それにともなって組織も変えてきています。まだ完全に理想の組織形態になっていないと思いますが、全国一律にできるものでもなく、逆に地域ごとに特徴がある日本の良さも考えなければならないと思います。
 北海道から沖縄まで細く長大なこの国ですから、地域によって農業のあり方は違う。それを最大公約数的に、こうだ、というように言ってしまうのはよくない。各地域にあった、適地適作をしっかりやっていくことが、その地域の地域興しにつながると思います。少子高齢化のなか、とくに中山間地域と海岸部における人口減少が課題ですが、そうした地域でもしっかり農業が展開されている地域はそんなに昔と変わっていません。そういう姿をもう一度きちんと取り戻さないといけないと思います。
 そうしたきめ細かいことに取り組み、そこから上がってきたいろいろな意見を集約していくのが中央会や連合会の仕事だと思っています。 
 各JAでは総合事業としていろいろな事業が回っているはずです。ところが県、あるいは東京ではこれがばらばらになっている。そこにきちんと横糸を通して結びたいということを言ってきましたが、その努力をしなければならないと思います。


◆地に足を着け 運動、事業を

 ――県や全国段階でも総合性をどう発揮するかがJAグループの課題になるということでしょうか。

 そう考えています。今回、規制改革推進会議などでもたぶんこれから議論になってくると思います。自民党の骨太方針策定PTでも話題になってくると思いますが、地方から東京まで全国できちんと共通の目標を持って事業が動いていくという姿を早く作りあげなければならないと思っています。
 いちばん大事なのはJAです。地べたでしっかりとした運動、事業を展開していかないと、JAグループは持たないという認識を持つ必要があります。JAの事業がどれだけその地域の方々に支持されているかです。先日、「あったほうがいいJA」から「なくてはならないJA」にどう変わるかだ、と指摘された会長さんがおられました。まさしくそうだと思います。
 地域からJAという組織がなくなったら、生活に非常に支障をきたすと思われるような事業を、地に足を着けてやっているかです。
 新農協法は一言でいえば農業という職能組合にしなさいということですが、JAが農業をその地域できちんと展開していくことはその地域の経済にどれだけの波及効果があり、地域を支えることになるかということだと思います。
 それは結局、信用、共済、生活事業も含めた購買事業、販売事業の全部に関わってくるということです。

・JA全中 奥野長衛会長インタビュー (上) (下)

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