農政:自給率38% どうするのか?この国のかたち -食料安全保障と農業協同組合の役割
自給率向上は未来への責任(1)【加藤善正・岩手県生協連合会顧問】2018年10月16日
食料、農業政策は国の最重要性政策のひとつのはずだ。食料自給率38%に危機感を持ち、未来の世代のために持続する農業と食料の安定供給を実現する政治の役割が今こそ問われる。生協運動の立場から岩手県生協連顧問の加藤善正氏に問題提起してもらった。
許されない政治の無策
◆「食料自給率38% 食料安全保障」をいかに捉えるか
食料自給率38%(正確には38%弱)が2年続いた。政府はかつて50%を目標にし、それが自らの政策では不可能として、45%に引き下げたがそれさえ実現せず、遂に38%にまで低下させた。この結果を政権与党としてどのように評価、総括しているのか何らの見解もない。38%まで低下させた政策に対する批判や「ドンドン低下する自給率・食料安全保障の揺らぎ」に関する政策批判は地方選出の与党議員からも一切聞かれない。さらに、「TPP11」「日豪EPA」が強行採決され、「日欧EPA」が臨時国会で審議され、遂に実質的な「日米FTA」も目前である。
このまま自公政権が続くと、わが国の自給率は間もなく30%台前半、即ち3分の1しか自給できないという危機的状況に転落し、「食料安全保障」は崩壊の危機に直面する。
安倍首相の「世界一企業が活躍できる国づくり」「民間活力の最大限の活用」が何を目指しているのかは、明らかではないか。JAグループに対して「意欲のない非効率な組織」と決め付け、「農協改革」という官邸主導の不当な攻撃をかけている。
こうした不当な攻撃に対して「自己改革」という名の取り組みが、果たして自給率の引き上げや国民が安心できる「食料安全保障」を確立できるのであろうか。JAグループは安倍首相と政権与党を何処まで信用し続けるのであろうか。
「TPP断固反対!」とポスターを貼りめぐらし選挙で大勝し、「聖域なき関税撤廃が前提ではない」としながら、「重要5品目の合意内容は国会決議に反しない、再生産可能な対策をするから決議は守られた」と詭弁を弄した。さらに米国からの追加要求に対応するためとしてTPPを強行批准し、日米FTAを回避するためといってTPP11を進めた。日米経済対話やFFRは日米FTAの準備交渉であり、遂には自動車と引き換えに農業を差し出す日米FTA交渉入りをトランプ大統領と約束した。こうした本質を国内向けには誤魔化して「FTAではなくTAG」だと言い張る欺瞞は、以上述べたように何度も何度も国民、特に農民やJAを誤魔化してきた手法ではないか。
「わが国の安全保障環境が一変した」を繰り返し、北朝鮮の脅威を最大限煽り、Jアラートを鳴らして国民を洗脳し訓練までさせている。相次ぐ台風や地震による自然災害が人命を脅かし、山崩れ・川の氾濫、住宅・農業への被害は報道されるが「自給率低下・食料安全保障」に関する視点はない。
また、「食料安全保障」に関する議論も、日本は農水省の定義という狭い範囲(経済的安全保障)で捉え、アメリカなど国際的な「定義」である「人間の福利達成(人間の安全保障)の一部としての捉え方ではない。」
こうした深刻な事態においても、日生協もJA中央会もこの事態を招いた政治、政権与党に対する批判や抵抗・闘いを放棄して、生活者(消費者)、生産者(農漁民)の立場から、その危険性や政治責任を追及する取り組みは極めて曖昧なままである。
私は57年間の生協人生を通じて、こうした政治責任を厳しく批判しながら産消提携・産直運動・協同組合間提携などを通じて努力と実践をしてきた立場から、協同組合陣営のこの問題に関する取り組みに対して、忖度なしの批判を開陳したい。
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