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農政:自給率38% どうするのか?この国のかたち -食料安全保障と農業協同組合の役割

【対談】国民のための農業・食料 今、農協が存在感示せ(1)【村上光雄・JA三次元組合長、鈴木宣弘・東京大学教授】2018年10月24日

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 食料自給率の向上と食料安全保障の確立に向けてJAグループから国民的な議論を巻き起こす運動が期待される。欧州では消費者にも食料、農業の重要性の理解が広がり農業政策を進化させる成果につなげた。わが国では何が課題となるのか。農村の現状を話し合ってもらった。

◆自給率の危機感を

 鈴木 今日は食料安全保障をどう確保していくか、また農協はどんな役割を果たしていくべきかを話し合いたいと思います。まずは農業や食料について最近感じていることからお聞かせください。

 

 村上 私が農協に入った当時は、経済界や政治家と話すとみなさん農業、農村について非常に理解が深いと思ったものでした。やはり戦中、戦後の厳しい食料事情の体験や、あるいは疎開して田舎で生活したことがある経験から食料、農業は大切だ、がんばれとエールを贈ってもらったことは印象に残っているし心強かったです。ところが今は財界の人たちから、そういう話を耳にすることがなくなりました。

 

toku1810240601.jpg(写真)左から、鈴木宣弘・東京大学教授、村上光雄・JA三次元組合長、

 

 鈴木 まさに歴史や体験が十分に受け継がれていないという問題ですね。

 

 村上 山下惣一さんは本紙で日本国民は一度飢餓に陥らないと食料の大切さが分からないのではないかと指摘していましたが、食料の大切さ、農業の大切さをみんな忘れ去ってしまったのではないかという気がします。

 

 鈴木 一度、飢餓を体験しなければ分からないという議論がありますが、ヨーロッパは飢餓体験を歴史教科書で徹底的に教え込み、次世代に引き継ぐことで、日本と違って国民の命を守る農業、環境を守る農業、国土と国境を守る農業をみんなで支えていこうという流れを作り出しています。

 

 村上 その点で言えば、私たちが今、農村で取り組んでいるのが子どもたちへの食農教育です。小さいときに農業や農村の素晴らしい体験をする。米を作ったりイモを作ったりするなかで、命の大切さ、食料の大切さ、農業の大切さを原体験として持ってもらうことが大切なことで、われわれ農協がやらなければいけない仕事だと思っています。全国的にも広がってきています。

 

 鈴木 大事な取り組みですね。自由化をどんどん進めるために、輸入すれば安く買えるからそれでいいじゃないか、国産牛乳が足りないならバターと脱脂粉乳を追加輸入して水と混ぜて飲んでおけばよい、といった風潮が政策に強まってきていますから。
 政治・行政が食料自給率に言及することが極度に減り、食料自給率は「死語」にされてしまった感があります。食料自給率ではなくて、いざというときに数年持ちこたえるための自給力があればいいという視点も強まり、では具体的にどうするのかと白書を読んでみると、「校庭にイモを植え、それで生きながらえれば何とかなる」といったたぐいの話が書いてある。これが食料自給力ですか。これでは戦時中ですよ。

 

 村上 自給率は38%、問題なのはこの数字の捉え方です。38%あればいいではないかと受け止めるのか、それともこれでは将来、国として成り立たなくなる危機として受け止めるか。私は今の状況を考えると雪崩を打つように下がっていき、20%台にまで下がってしまうのではないかという危機感を持ちます。

 

 鈴木 自給率は下がっていくのが当たり前だ、という感覚にすらなっていないか。そこがいちばんの問題です。
 それから、今年は自然災害も多発しましたが、農業が持ついろいろな機能も見直さなければいけないと思います。農村で暮らしておられてその点をどうお考えですか。

 

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