農政:自給率38% どうするのか?この国のかたち -食料安全保障と農業協同組合の役割
誇り持って国民の食料を担う 農への理解を盟友一丸で発信(1)【インタビュー水野喜徳・JA全青協会長】2018年10月30日
JA青年部は自ら政策提言をするポリシーブック活動に取り組んできた。基本政策の見直しや、新たな日米貿易交渉が開始されるなど重要課題が目の前に迫る時期に、この国の将来を担う青年農業者たちの発信力が期待される。水野喜徳JA全青協会長に聞いた。(聞き手:大金義昭 文芸アナリスト)
大金 会長就任から5か月、まず立候補にあたって、どのような思いでこの困難な時代に手を挙げられ、就任されてからこれまでに、どんな思いをお持ちでいらっしゃるか、お聞かせいただけますか。
水野 農協改革の集中推進期間が来年の5月までというなか、われわれ青年部としても長期的に考えればJAグループは地域になくてはならない存在であり、地域の農業、JAを後世まで発展させていかなければならないというのがわれわれの使命でもあります。30年度はその過渡期であり、自己改革の結果を出さなければならない年であることから、将来にわたって農業を続け、JAの運営にも参画していかなければならないわれわれが、JAのことを考えなければいけない、その考えを6万人が持たなければいけないと考えました。
それが立候補の理由で盟友一人ひとりの意識改革、一人ひとりがJAはわれわれのJAなんだという意識を持とう、この一言に尽きます。
(写真)水野喜徳・JA全青協会長
大金 JAの自己改革と併行して盟友の意識改革を進め、JAが果たす地域での役割、農業に対する役割をみんなで共有していくということですか。どんなかたちで進めていきますか。
水野 やはり都道府県の代表者会議などの場でのしっかりとした話し合いや、7年にわたって取り組んでいる政策提言策定運動であるポリシーブック活動を核にして進めていくということだと思っています。
大金 ポリシーブックの取り組みは、多くの人が高く評価しています。青年組織の基本的な考え方に基づく政策課題や地域の課題を積み上げ方式で整理し、自らの課題には自らが率先して取り組み、そのうえでJAや行政に提案・要請していく格好になっていますね。
一方、国の食料・農業・農村基本計画の見直しが来年から議論される見込みです。これまでにも何度か見直しを図り、自給率の向上や食料の安定供給、農業の多面的機能の発揮、農村の活性化などを柱に計画を策定してきました。これについて、JA全青協は課題をどのように整理しているのでしょうか。
◆家族経営が地域の支え
水野 基本計画はわれわれ農業者にとってはひとつの理想だと思います。基本法施行から20年経って、現在の日本国内の状況をふまえて改訂されると思いますが、われわれがポリシーブックのなかで提起していることは、食料・農業・農村基本法がめざしていることと結果的には合っていると思います。
今回は自給率が低い問題と、日本が食料の大量輸入国であることを国民、とくに地域の人々に知ってもらうことが大事だと考えています。農業は地域に農地があって、そこでわれわれは農業をしているのですから、地域と切り離すことはできません。その意味では各地域の青年部が作成したポリシーブックがそれぞれの活動の基本だと考えています。その積み上げで県段階、全国段階のものを作成していますが、それがメインではなく、あくまでも主役は単協青年部のポリシーブックです。地域のポリシーブックを地域の農業とJAをよくするためのツールにしていくということです。
最近は強い農業づくりの風潮があると思います。6次産業化や輸出などが重視されていますが、そうした国が言う強い農業以外は努力をしていない農家だという位置づけを感じたこともあります。しかし、6次化商品も輸出産品も地域の農地でつくっているわけで、そこではわれわれ盟友のような家族経営が努力をしています。われわれはこうした地域、現場を最優先し、そこに立ち戻って活動を積み上げていくことが大事だと考えています。
大金 JA青年組織に結集する6万人の盟友は、日本農業の次の時代を正面から受け止め、これを担っていく「正規軍」であり、大いに期待しています。
水野 これから先、グローバルな視点で考えると食料危機が来る可能性が高いと思います。そうすると国際貿易で日本は工業製品を売って外貨を稼いだとしても、食料を売ってくれる国がなくなるのではないか。そのときに国民は何を食べればいいのかということになります。日本の農業が衰退し切って自給率38%がさらに下がっていったときに、誰が食料をまかなうのか。そこをまずは消費者のみなさんに理解していただき共有していただきたいと思います。
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