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農政:緊急企画:TPP11 12月30日発効-どうなる、どうする日本農業

【緊急特集:TPP11 12月30日発効】国内農業を自動車輸出の犠牲にさせてはならない【村田武・九州大学名誉教授】2018年11月5日

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 12月30日にTPP11が発効します。それに続けて日米FTA交渉が1月半ばに開始され、日本農業の「総自由化」時代が始まろうとしています。そうした中で「この国のかたち」をどう守り、日本農業をどうすればいいのか、本日は村田武・九州大学名誉教授の提言を掲載します。

まるで蟻地獄のよう。いたるところで土砂崩れが起こったミカン園(宇和島市喜佐方で)(写真)まるで蟻地獄のよう。
 いたるところで土砂崩れが起こったミカン園(宇和島市喜佐方で)
 ※クリックすると大きな写真が表示されます。

 

 去る7月7日から8日にかけての豪雨で愛媛県の農業は多大な被害にあいました。
 宇和島市や松山市島しょ部では土砂崩れにともなうカンキツ園の流出、JAの選果場や集出荷施設、直売所などの浸水が相次ぎました。とくに宇和島市吉田地区は約2000haのカンキツ園のうち、160haが土砂崩れで崩壊しました。加えて、農道の寸断、モノレールの損壊200か所以上、スプリンクラーは39ブロックのうち6ブロックが損壊というありさまです。
 また、四国随一の酪農地帯である西予市野村地区では、緊急放流で下流に大水害を引き起こした野村ダム直下にあった変電所が水没したために、7月7日の午前7時ごろから8日の夜まで、30時間余りの停電に酪農家42戸が見舞われました。自家発電機で対応できたのは3~4戸で、搾乳機がストップした農家には、野村町内の土建会社4社から計7台、その他県酪連、西予市がリース会社から借りたもの合わせて合計10台の発電機を大慌てで配置しました。搾乳機は何とか動かせたものの、バルククーラーの冷却まで手が届かなかった農家が出て、7日、8日に絞った生乳100トン余りが廃棄の憂き目を見ました。また浄水場も水没し、7日から何と17日まで10日間も断水しました。大半の酪農家は上水道を利用していましたからたいへんです。乳牛は1頭当たり1日に約100リットルの飲料水が必要です。県酪連は、集乳車に本社工場で水を詰め、9日から給水を始めました。12日からは16tトレーラーで給水したといいます。吉田地区では、収穫期を迎えた温州ミカンの収穫に一人でも多くのボランティアの参加を求めています。えひめ南農協の吉田営農センターを拠点にカンキツ園の復旧計画がようやく立てられようとしています。野村の酪農家を1戸でも離農させてはならないと、東宇和農協の酪農課と営農センターの職員は走り廻っています。

 そこに飛び込んできたのが、12月30日にTPP11が発効するというニュースです。オレンジは現行の関税率7%~17%が6~8年目に撤廃され、牛肉の関税率は38.5%が16年目以降は9%になります。これは豪雨災害から何とか立ち直ろうというカンキツ農家や酪農家を暗澹たる気持ちにさせる以外の何ものでもありません。
 さらに、開会された臨時国会で安倍首相は、「今回は日米共同声明で、農林水産物については過去の経済連携協定で約束した内容が最大限であるとの大前提を米国と合意した。この点が最大のポイントであり、この前提の上で今後、米国と交渉し、わが国の基である農林水産業を必ずや守り抜く決意だ」と31日の参院本会議で答弁しています。安倍首相は、岡山理科大学獣医学部設置で、内閣府から圧力をかけさせ、加計学園に90億円も貢ぐのを今治市に強要しながら、ごまかし答弁を弄したままです。どうしてという答弁を信じることができるでしょうか。
 愛媛県では、この11月18日投票の県知事選が始まりました。伊方原発を止め、廃炉に追い込みたいという新人候補者に求められて、私は、県農政に関する愛媛新聞アンケートへの回答の案を作成しました。以下のとおりです。
 1.日米FTA協議で国内農業を自動車輸出の犠牲にしないこと、農業者戸別所得補償制度の復活などを県として国に強く求める。
 2.地域農林業を振興し、地元産品の地産地消の取り組みを支援して、農林漁業と農山漁村の再生を図る。
 3.新規就農者を本格的に増やすために、既存の農業大学校に加えて、県立農業高校に農業大学校を併設する。政府の農業次世代人材投資事業を県として補強し、新規就農者に対する支援を強化する。
 4.高校生の夏期休暇時における就農体験制度を設け、受入れ農家を補助するとともに、高校生には日当を支給する。高校生の農業と食料への関心を高めるために、県立高校における給食の実施を検討する。

 さて、安倍政権は2015(平成27)年3月に閣議決定した「食料・農業・農村基本計画」で、2025年の食料自給率目標を45%としました。これは、民主党政権が設定した目標50%を大幅に値切るものでした。ところが、本音ではトランプ政権に迫られた農産物市場の開放やむなしの安倍首相ですから、「農林水産業を必ず守り抜く決意だ」も大言壮語であって、その証拠に、この値切った食料自給率目標も不都合とばかりに素通りのありさまです。安倍首相には即刻退陣してほしいというのが、豪雨災害被災地の農家の切なる願いです。

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