農政:緊急企画:TPP11 12月30日発効-どうなる、どうする日本農業
【緊急特集:TPP11 12月30日発効】日本の食は、世界を幸せにする!【下小野田寛・JA鹿児島きもつき代表理事組合長】2018年11月7日
12月30日にTPP11が発効します。それに続けて日米FTA交渉が1月半ばに開始され、日本農業の「総自由化」時代が始まろうとしています。そうした中で「この国のかたち」をどう守り、日本農業をどうすればいいのか、本日は下小野田寛・JA鹿児島きもつき代表理事組合長の提言を掲載します。
1.TPP11年内発効が意味するもの
今年12月30日にTPP11が発効される。年が明け、来年の4月1日には2年目に入り、3か月であっという間に、牛肉の関税も2段階引き下げられることになる。そして日本政府は、来年3月下旬までに日EU経済連携協定(EPA)の発効を目指している。さらに米国との間で物品貿易協定(TAG)交渉に入ることに合意している。日本農業にとってはまさに大きな環境変化であり、風雲急を告げる状況である。今回のTPP発効は、今から次々と起こる急激な環境変化を日本農業に迫るぞという号砲であり、私たちは、『安心安全で、おいしい日本の食を何としても守ること』をあらためて心に期する必要がある。
2.食料自給率とは、
今でも世界有数の農産物輸入大国である日本にさらなる市場開放を迫る一連の協定に、生産現場の立場から大いに不安を感じる。食料自給率(カロリーベース38%)向上が叫ばれるなか、農村・地方の現場で想像以上に少子高齢化が進むなか、日本農業の生産力・生産基盤を維持していくことが喫緊の課題であり、そのことはまさに国民の利益につながる日本の国益である。食料自給率とは、国民生活に不安を与えないための大きな指標であり、医療保健と同じように私たちの生活に密接にかかわっていることを受けとめなければならない。
3.和食と地理的表示保護制度(GI)
和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本の食に対する注目も高まっている。このところ急増している外国人観光客の来日目的に、日本の食、和食を食べたいということがあげられる。私たちは、国民のみならず世界の人々の期待に応えるために、日本の食のベースをしっかりと守っていかなければいけない。安心安全で、おいしい食が日本にはあり、しかもそれぞれの個性がとても豊かであり、いろいろな地方の特長が発揮されている。そのような個性豊かな日本の食をしっかり守り、発展させていく気概を持ちたい。そのためには農林水産省が進めている地理的表示保護制度(GI)はとても有効であり、日本が地方の個性豊かな食を大切にしていることを世界に発信することになる。
4.日本の食が世界を幸せにする
先日、フランス、パリのユネスコ本部でGIに登録されている、鹿児島黒牛と辺塚だいだいをパリ市民に紹介した。それぞれ試食してもらったところ、皆さんにっこりと笑顔になり、大好評であった。大げさな言い方だが、日本の食は世界を幸せにすると感じた。私たちは日本の食が世界を幸せにするという自信と誇りをもって、農家の皆さんといっしょにがんばっていきたい。そしてそのことを一番わかっているのがいま、安心安全でおいしい、個性的な日本の食を食べている日本の国民であり、政府はもっとそのことを誠実に受けとめてほしい。
5.農業で生計を立てるとは、
そして農家が農業で生計を立てるとは、どういうことか考えてほしい。農業で生計を立てるということは、農家が安定的に農業生産をするということである。農業生産が安定的に行われることが重要であり、私たちの大切な日本の食を守ることになる。地震、台風、高温、豪雪等様々な気象災害を受けやすい農業であり、ただでさえ生産が不安定になりやすいからこそ、あらゆる政策を導入して農業生産を安定させることは、国民も大いに望むことであり、世界に誇れる日本の食を守ることにつながる。
6.農業生産の安定と農協
農家が農業で生計を立て、農業生産が安定するために、私たち農協の役割が重要である。農協は、それぞれの産地の特徴がよくわかっており、それぞれの農家組合員の個性もわかっている。それぞれの産地の特徴と農家組合員の個性を活かし、安定的な農業生産をプロデュースすることが私たち農協の使命である。そのことを私たちはしっかりと国に訴えて、これからも農業者と国民の利益を守るために活動していく。そこに協同組合が和食とともにユネスコ無形文化遺産に登録されている歴史的意義があると私は信じている。
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