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農政:持続可能な世界を拓く SDGsと協同組合

くれなゐの種子【農業・歌人 時田則雄】2020年1月7日

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 SDGs(持続可能な開発目標)について調べていたら、悲しい知らせが入った。医師の中村哲さんが何者かによって銃撃されて亡くなられたのだ。中村さんはアフガニスタンで医療に携わる一方、「水なくしては生きられない」という理念のもとに1600本の井戸を掘った。また砂漠に用水路を造り、1万6500haの農地をよみがえらせたという。この水路は永遠に大地を潤し、そして緑をあふらせてくれることだろう。「誰一人取り残さない」という志とともに。

ハルニレの木時田則雄氏作。写真は「ハルニレの木」(北海道豊頃町)
(画像提供元:LINEトラベルjp ナビゲーター かわい まゆみ)

 かくいう私の農場は、十勝平野のほぼ中央に位置する帯広の郊外にある。十勝とはアイヌ語の「トカプ・ウシ」で「乳房・ある処」であり、日本有数の畑作酪農地帯にふさわしい地名だと思っている。いま私は73歳。6年前に娘婿に経営を委譲したが、まだまだ現役の百姓だ。農場の総面積は67haで、耕作面積は40ha。残りの27haは山林で、自宅から約25キロ離れた日高山脈のふもとにある。

 栽培作物はコムギ、ダイズ、タマネギ、ニンジン、ナガイモ、スイートコーン。これらのうちダイズ、ニンジン、スイートコーンの茎葉はすき込んでいる。コムギの収穫跡地には緑肥としてヘイオーツやヒマワリを栽培し、チョッパーで刻んですき込んでいる。コムギわらは酪農家に牛の寝わらとして売り、その代金で牛糞堆肥を買い、十分に発酵させてから畑に散布するのだ。
 山林はカラマツの人工林が16ha。自然林が11ha。これらは30代の半ばに買ったものだ。先輩に「ヤマなんか買うよりも宅地を買ったほうがよかったべさ」といわれたこともあったが、私は木が大好きなので、地価が下がっても原木の値段が下がってもあまり気にしない。カラマツ林の半分以上は、農作業が一段落した11月の中下旬に父とふたりで2回枝打ちをした。残りは急傾斜地なので森林組合にやってもらった。2回の除間伐も「天然林改良」も森林組合にやってもらった。酸素供給、大気浄化、土砂流出防止、野生鳥獣保護など森林の果たす役割は大きい。ちなみに私のカラマツの樹齢は48年。伐採適齢は60年から80年という。仮に80年で伐るとしたら私の死後だろう。私はそれでもいいと思っている。


 ところで日本の食料自給率はカロリーベースで37%。目標の45%に向かうどころか後退している。日本は先進国の仲間入りをしてはいるが、これでは一人前の国とはいえまい。為政者の仕事はいかなることがあろうとも国民を飢えからまもることだ。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)によると、2015年の耕作放棄地は42.3万ha。これはほぼ富山県の面積に匹敵する。国民が安心して食生活を送るためには、こうした土地を再び農地として活用する方法を考えなければならない。それも為政者の仕事だ。

 掲出歌の「くれなゐの種子」と「くれなゐの花」は孫の拓馬に託した私の希望だ。孫の世代に何が残せるか。嵐のような市場開放にさらされている家族農業の未来に光あれ!

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