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農政:どうなっているのか米国社会

候補者失った米国の穏健派-大統領選挙に見る米国社会の課題 孫崎亨(評論家)【どうなっているのか米国社会】2020年10月19日

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米国大統領選挙が迫ってきた。この選挙によって明らかになってきた米国社会のさまざまな矛盾や問題点が報道されている。しかし、それは必ずしも私たち日本人にとって分かりやすものとはいえない。そこで、この大統領選で見えてきたことを中心に、「どうなっているのか米国社会」をテーマに識者に現在の米国社会を分析していただいた。第1回は評論家の孫崎亨氏。孫崎氏は米国には大きく3つの流れがあったが、国民の大半を占める穏健派候補が降ろされバイデンとトランプの争いになったと分析している。

孫崎亨 氏孫崎亨 氏(評論家)

米国大統領選は、11月3日の選挙に向け、共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン元副大統領の間で争われている。この選挙はトランプ大統領の強い個性もあって、争点はただ一つ「トランプを大統領として容認するか否か」である。
しかし、大統領選を見てみると、実ははるかに大きい米国の社会の課題にどう取り組むかが問われている。

歴史的に見れば、米国社会は自由主義経済の下、米国企業が世界に展開し、米国市民は企業の繁栄を享受する構図であった。だが構図は変わる。

米国の金融界、多国籍企業は市場と安い労働力を求めて世界全体に活動を展開する。その際、企業が米国国内で生産する必要はない。むしろ、米国国内での生産は発展途上国の労働力利用に比し相対的に高くつく。ここから企業は海外に拠点を移し、米国国内での生産を続ける際には低賃金に抑える体制を取った。その結果、金融、多国籍企業はますます富み、一般労働者はますます収入を減少させる現象が出てきた。本年10月9日付ブルムバーグ紙は「米金持ちトップ50人の資産2兆ドル、下位50%の1億6500万人分に匹敵」との記事を掲載した。

ここから今次大統領選では、三つの異なる主張が生じた。

米国内の3つの異なる主張

第一の選択は、トランプ大統領の主張する「アメリカを再度偉大に(Make America Great Again)」のスローガンの下、国内企業を優先し、外国製品には高関税をかける政策である。

第二の選択はバイデン元副大統領が追及する多国籍企業、金融資本、軍産複合体の利益を追求する政策である。

第三の選択は、生活水準の下落している大多数の米国民を代表し、国民皆保険、教育負担軽減、富裕層への増税を掲げる政策である(以下敬称略)。

選挙の流れからいくと、先ず第三の選択の勢いが増した。サンダース、エリザベス・ウォーレン等の主張で、順調な流れで行けば、サンダースが民主党候補になっていたと思う。ここで、多国籍企業、金融資本、軍産複合体は荒業を行使する。民主党候補者選びの帰趨を決めるスーパーチューズディ(党員集会が集中する3月第2火曜日。一日で大量の代議員を獲得することができる日)直前に、穏健派として善戦していたブタジェッジ前インディアナ州市長とエイミー・クロブシャー上院議員を突然下ろしバイデン支持を表明させた。こうしてサンダースが敗れ、米国民の過半数以上の人を代弁する路線は候補者を失った。

次いで、争いは米国国内産業の擁護を唱えるトランプと、多国籍企業、金融資本、軍産複合体の利益を代弁するバイデンの戦いとなった。トランプの「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン」政策はある程度功を奏し、経済成長はプラス、失業率も減少した。しかしここにコロナが来る。多くの人の想像以上に猛威を振るった。10月中旬現在、米国内での感染者は800万人以上、死者数は21万7585人である。経済にも大打撃を与え米国経済はGDP4‐6月前期比年率31.4%減となった。

コロナ対策で、トランプは失敗したと思う。彼は(1)コロナの脅威は少ない。感染の危険は低い(としてマスク着用を回避)、(2)経済を維持することが重要で、出来るだけ通常通りの経済運営を行うことを主張した。しかし、本人自身の感染で、彼の主張は崩れ、支持率が一気に低下した。

この原稿は大統領選前に記述している。

トランプ大統領が勝利すれば、「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン」政策を継続し、外国製品に高関税をかけ、米国国内生産の保護を図る。ただ、現状ではバイデン勝利の可能性は高く、それを主体にして記載する。

多国籍企業・金融資本・軍産複合体の代弁者・バイデン

バイデン勝利の際には多国籍企業、金融資本、軍産複合体の利益を代弁する政策となる。経済政策では「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)」路線となる。バイデン政権が「TPP」という名称を使うか否かは別として、多国籍企業の利益追求である。

多国籍企業はグルーバルな活動展開に際し、各国ごとに異なる基準ではなくて、統一した基準を有し、それを担保する機構を持つことを目指す。究極的には国際仲裁裁判所を法的な最終判断の組織とし、ここでは多国籍企業の価値観が個々の国の法律や裁判を上回る組織とする。

わき道にそれるが、経済面でTPP的運営を追求することと、海外に米軍基地を展開することとは一体である。多国籍企業の価値観が個々の国の法律や裁判を上回る組織とするには、軍事力を背景とすべきであるとの考えがある。現にトランプは「海外の米軍基地は不要だ。海外にいる米国兵は皆本国に帰ればいい」との考え方を持っていた(実際、駐独米軍の縮小を発表したが、国防省が面従腹背の方針で実行は大統領選後となっている)。

バイデン政権は多国籍企業、金融資本、軍産複合体の利益を代弁する、つまりそれはオバマ政権、ブッシュ政権、クリントン政権への回帰である。

ただ、一点、オバマ政権、ブッシュ政権、クリントン政権との異なりがある。それは中国の存在である。

対中認識では日本と米国とは大きく異なる。米国で最も信頼される情報機関はCIAである。CIAに「World Factbook」というサイトがあり、各国比較を行っている。経済を見ると、購買力平価ベースのGDPで中国25兆3600億ドル、米国19兆4900億ドルとしている。かつ世間には「中国は技術力に弱く先進国から盗用している」との考えが根強いが、医療、運輸、建築等様々な分野の技術革新を生むと予想される通信分野5Gでの特許保有宣言数ではHuawei (中) 3325 、Samsung (韓) 2846、LG (韓) 2463 、Nokia (フインランド) 2308、ZTE (中) 2204、Ericsson (スエーデン) 1423 、QUALCOMM (米) 1330、Intel (米) 934、Sharp (日) 808、NTT Docomo (日) 754である。文部科学省の科学技術・学術政策研究所が、世界主要国の科学技術活動を分析した「科学技術指標2020」を公表、主な指標のうち、自然科学の論文数で中国が米国を抜いて初めて世界1位になったとしている。

従って米国国内には「中国に抜かれる」という危機意識が充満し、かつてのように、米国多国籍企業が中国に進出するのを許容しない雰囲気がある。

こうした動きは当然農業分野に及ぶ。日本ではトランプ政権下でも種子法等多国籍企業に利益を与える動きがあったが、トランプ政権が全力で推進しようとしたものではない。しかし、バイデン政権の本質は多国籍企業、金融資本、軍産複合体の利益を代弁であるから、バイデン政権は一段と強力な圧力をかけてくることが予想される。

日本農業のチャンスは中国に

それにしても、中国が世界最大規模の経済圏になることは間違いない。日本と中国の食文化は極めて類似している。ここには日本の農業にとり大きなチャンスがある。日本の農産物は高品質との定評がある。かつて中国人から岡山産桃が北京で珍重されていると聞いた。日本の農産物が米国市場を席巻することはあり得ない。だが中国市場なら、日本の農産物が大きい市場を開拓することは十分ありうる。

最近私は新浪史著『38億年の生命史に学ぶ生存戦略』読んだ。実に示唆に富む本である。「生物界では各々がNO1でしか生き残れない」、(アフリカのサバンナでの生き残りについて)「シマウマは草の先端を食べている。ヌーは茎や葉を食べてる。トムソンガゼルは地面の際の草を食べている」「チーターはライオンが満腹にならないような小型の草食動物を獲物にしている」「ナンバー1でなければ生きられない自然界で、生物はナンバー1になれるニッチを探しながら、常に新たなニッチに挑戦していく」と記す。生き残るということはNO1になれる場を見いだすことでもある。


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深刻化する米国社会の分断と経済格差拡大 萩原伸次郎(横浜国立大学名誉教授)

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