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農政:2020年を振り返って

最悪の2020年、絶望的な2021年 藤井聡 京都大学都市社会工学専攻教授【特集:2020年を振り返って】2020年12月9日

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藤井教授は、今年を振り返り最低最悪の一年であった。そして新年においてどうなるかとみれば「絶望的な見通し以外頭をよぎることができない」と指摘しています。どうすれば日本は救われるのか? 答えを探さねばならないようです。

藤井聡最悪の2020年

令和2年、西暦2020年は所謂(いわゆる)戦後日本において最低最悪の一年であったと言わねばならない。
第一にコロナ感染症の拡大に怯(おび)え、我が国政府も国民も、公衆衛生学的な観点から言って経済社会の破壊という副作用の方が遙かに大きな「過剰自粛」に従事してしまい、戦後最大の国民所得の急速な減少に見舞われることになった。

コロナ負け組国家に

第二に、それだけ経済が疲弊したにも拘わらず、欧米先進国では当たり前というべき徹底的な所得補償、損失補填が全く行われず、激しく経済が下落したままに年を越す事になった。その結果我が国は、世界的にもコロナ死者数が極めて少ない水準に抑えられているにも拘(かか)わらず、世界有数の経済低迷を被る、ある意味「世界最大のコロナ負け組国家」になってしまった。
第三に、これだけ経済が冷え込んだ中にあっては、国内産業を第一次、第二次、第三次、そして大手中小といったあらゆる側面から「公助に基づく保護」せねばならないにも関わらず、驚くべき事に我が国において誕生した菅政権は、そうした「公助」よりもむしろ「自助」を優先すべきだという政治理念に基づいた様々な改革に着手し始めた。
例えば、中小企業の定義や過疎自治体の定義を改変し、支援せずに半ば「見ごろし」にする企業・自治体を増やしていく方針に舵(かじ)をきった。地方銀行においても、保護対象を縮小させ、銀行間の競争を激化させる事を通して弱小銀行を同じく「見ごろし」にする方向に改革を模索しはじめた。そして、一部の種苗開発農家と種苗を開発したグローバル企業達には利益がもたらされる一方、大多数の種苗を利用する農家の出費を増大させることになる方向で種苗法が改定された。

尖閣は中国のもの是認?

そして第四に、11月に日本で行われた日中外相会談後の共同記者会見で、中国の王穀外相に尖閣諸島は「中国の領土」であり、その近隣の「中国の領海」に外国船である日本の不審な船が侵入すれば主権を守るために軍事を使った攻撃をせざるを得なくなると「恫喝(どうかつ)」されるという途轍もない日本の主権を侵害する発言が堂々となされた。それにも関わらず、その王穀外相の隣に座っていた日本の茂木外相は一言の抗議もせずに会見を終え、最後に「謝々」とニコニコしながらあいさつするという完全に常軌を逸した噴飯ものの行為に及んだ。つまり我が国は、世界に対して、とりわけ中国に対して「日本は、尖閣が中国のものであることを是認する」メッセージを送ってしまったのである。これは戦後日本の日中外交史における最大の汚点と言わねばならぬ事件であった。
つまり2020年は、経済的にも、産業的にも、外交的にも驚くべき国力国勢の衰退がもたらされた年なのであった。いわば、民主党政権、安倍政権と自民民主の共作で衰退し続けた我が国日本に、決定的な大打撃を与えたのが2020年に誕生した菅政権だった、という構図にあるわけである。
2020年は21世紀日本の衰退凋落を決定づけた年として、このままでは後世の歴史家達に刻みつけられる年となるだろう。

絶望的な2021年

それでは、我が国は2021年という新年においてどうなるのかを考えてみれば――絶望的な見通し以外頭をよぎることができない。
第一に、このコロナ大不況から日本が蘇(よみがえ)るためには、欧州各国の様に「財政規律」をコロナ禍が完全終息するまで一時的に凍結することが不可欠だ。さもなければ政府は国民を救うための経済対策を自由にすることが出来なくなり、コロナ不況は永遠に続くことになるからだ。しかし、菅内閣が財政規律を凍結する見込みはほとんどゼロだ。
まず、麻生太郎財務大臣は2020年度、コロナ不況が始まってから二度にわたって2025年のプライマリーバランス黒字化目標を取り下げるか否かを問われ、いずれも取り下げないと断定した。これが菅内閣の公式見解だ。それどころか、安倍内閣が主張し続けた「デフレ脱却を目指す」という台詞を、これだけコロナ禍によって激しく経済が冷え込んでいる状況下であるにも関わらず菅総理は所信表明において一言も口にしなかったのだ。そんな菅内閣が続く限り、日本がコロナ不況を終わらせることなど絶対に不可能だ。
第二に、激しい改革は菅内閣の肝いり方針であり、菅総理がこれを取り下げる事などあり得ない。
最後に中国に対する戦後最大の外交的失敗を犯した茂木首相を更迭でもすれば日本のメンツはギリギリ保てるものの、そうした気配は菅総理において全く見られない。

悪夢の菅内閣が継続

つまり、菅内閣が続く限りにおいて、2020年の悪夢は2021年においても続くことは必至でありむしろ加速するとしか考えられないのだ。では2021年に日本を救う菅政権に変わる新しい内閣が誕生するのかといえばそれも今のままなら絶望的だ。野党は恐るべき弱さを継続しており、最大のライバル石破・岸田両氏は次の総裁選には出馬しないとみられている。こうなれば安倍元総理の再出馬が菅総理に引導を渡すことになり得るが、この度の桜を見る会騒動でその芽も無くなった。
如何(いかに)にすれば日本が救われるのか――答えの見えないまま、我々は年を越さねばならないようである。

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