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農政:東日本大震災10年 命を守る協同組合

【特集:東日本大震災10年 命を守る協同組合】柑きつ農家の復興意欲を後押し 西日本豪雨災害(2018年7月)とJAえひめ南2021年3月16日

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東日本大震災から10年、この間に多くの自然災害が日本列島を襲い、農業に多大な被害をおよぼしている。そうしたなかの一つ、2018年7月の西日本豪雨災害でかんきつ園の多くが土砂災害を被った愛媛県宇和島市のJAえひめ南の災害復興の取り組みを取材した。同JA吉田支店でみかん指導販売部みかん指導課課長(兼果樹専門指導員)の大加田聖司さん(49)、営農振興部営農企画課課長の善家慎介さん(44)、災害時の伊予吉田営農センター長で現在は喜佐方支所長の清家嗣雄さん(51)らに話を聞いた。(取材・構成:山藤篤愛媛大学社会共創学部講師、村田武九州大学名誉教授)

激甚災害の土砂災害

2018年7月7、8日に西日本を襲った豪雨は、宇和島市の吉田地区では2日間で360ミリもの降雨となり、2271カ所もの斜面崩壊を引き起こした(愛媛大学災害調査団の同年8月3日の報告)。吉田地区は愛媛県を代表するかんきつ産地のひとつで、1500haのかんきつ園の大半は30度を超える急傾斜園地である。そしてその1割、150haが豪雨で無惨な崩壊に見まわれた。

77本の農道、28ブロックのかんがい用スプリンクラー、663か所(合計32キロ)のモノレール(収穫したかんきつ運搬用)が損壊した。農家住宅10戸に加えて農業用倉庫や軽トラなどの農機具の流失も相当数に上った。吉田街中の住宅損壊も含めてJAの建物共済の共済金支払額は、18憶3445万円(支払い件数852件)になった。

2020年4月に始まった国庫補助事業による復旧工事で樹園地の復旧は、原形復旧・改良復旧13haがほぼ7割となった。改良復旧のようすは写真のとおりである。山なり傾斜端の段畑への改良、モノレール更新、農道改良、かんきつ苗の新植などが行われている。事業費は40億円規模が予想されている。スプリンクラーの大半は応急仮復旧を終えたが、本復旧はこれからである。モノレールは「経営体育成支援事業」(激甚災指定で90%補助)で総額15億円の復旧工事になった。

左から善家さん、清家さん、大加田さん左から善家さん、清家さん、大加田さん

摘果作業を全力応援

豪雨災害が襲った7月は、かんきつ農家にとっては摘果作業に全力をあげなければならない時期であった。

真っ先に応援にかけつけたのは、愛媛県南予地方局が呼びかけた県職員である。松山市の県庁から毎回2、3台のバスで、11回に及ぶ摘果応援であった。次いで、(株)農協観光が農協職員を組織した「全国応援隊」約300人が10回も各JA負担でかけつけてくれた。また八幡浜市のJAにしうわのかんきつ農家250人が、7月末から8月いっぱい、摘果に協力してくれた。

全国からのボランティアが吉田地区にかけつけてくれるきっかけになったのは、NPO法人ユナイテッド・アース(神戸市)が7月20日から延べ2000人ものボランティアを組織してくれたことであった。

その指導も受けながら、JAえひめ南は伊予吉田営農センターに急きょ職員を配置する特別体制をとり、本格的なボランティア受け入れをめざして、10月1日に「ボランティアセンター」を立ち上げた。県内外から昨年2020年4月4日までの17カ月間に何と3964人のボランティアを受け入れることができた。そのうち半分は県外からのボランティアであった。

ボランティアは摘果作業のほか、水に浸かった吉田地区街中の住居の泥出し、公民館での炊きだし、夏休み中の子どもたちへの学習援助など、かんきつ農家だけでなく吉田地区住民を励まし、その復興意欲を大きく支えることになった。

住民にとって、ボランティアセンターを立ち上げた農協の存在がどんなに大きかったことか。復興担当の営農企画課課長として、2020年4月からボランティアセンターを担った善家慎介さんは、被災地復興ボランティアが全国的に組織され、被災地に集中的に投入されるシステムが構築されていることに心底驚かされたという。

崩壊園地の改良復旧崩壊園地の改良復旧

農家と産地を元気に

吉田地区では、味楽、玉津、喜佐方の3つの農協共選場に、合計780人のかんきつ農家が出荷している。1500haのかんきつ園のうち温州ミカンが960haと64%を占める。残りはポンカン(200ha)、河内晩かん(77ha)、伊予かん(42ha)、デコポン(41ha)など、30種類近い中晩かんである。

ボランティアの支援が大きな役割を果たした災害直後の夏場摘果作業が期待どおり成しとげられたこと、災害後に好天が続いたこと、その年が温州ミカン表年(豊作年)であったこと、市場価格も良好であったことなどが幸いし、園地の1割が土砂災害にあったにもかかわらず、3共選場のかんきつ出荷は2万5400トン、出荷額45憶5700万円と、ほぼ前年なみを確保できた。被災を理由に離農する農家も出さずにすんだ。

それにはもともとかんきつ農家は若手を中心に「果樹同志会」を組織しており、農家間の連携意識が強いことがあった。そのうえで、そうした地域・農家のがんばりを支えたのが農協の存在であった。

組合員へのFAX通信の例組合員へのFAX通信の例
(クリックで拡大)

たとえば、みかん指導課や営農センターを中心に関係者が協力して編集する「FAX通信」による組合員への定期的情報提供は、被災直後の7月27日「大雨災害による破損に伴うモノレール修復対応について」のように、組合員の悩みに即応するものである。

この「FAX通信」に関わっている大加田さんは、それが組合員と農協をつなぐザイルとして重要だと考えているという。

かんきつ農家と産地を元気にするうえで、農協の肩に掛かっているのは、ひとつにはかんきつ栽培で最大の労力を求める収穫作業の労力確保である。

「宇和島お手伝いプロジェクト」(協議会が事務局)による収穫応援に参加した県民は2020年4月から645人がJAえひめ南のかんきつ園に来てくれている。収穫応援のお礼に、宇和島市内の食堂などで使えるクーポン券を「お手伝い時間」に応じて渡している。

同様のお手伝いプロジェクトは、JAにしうわの八幡浜市にもある。この「宇和島お手伝いプロジェクト」に学びながら、空き家の宿泊施設としての活用や、地元の水田農業地域との労力交換など、労力確保での農協への期待は大きい。

いまひとつは、かんきつ園地の確保の課題である。園地の賃貸借をもっとスムーズに行えるような法制上の改善を提案しながら、良好な園地を確保することが求められている。

その一環として浮上してきているのが、国の畑地帯総合整備事業(国負担55%)や農地中間管理機構関連農地整備事業(国負担62.5%)を活用しての被災園地の「再編復旧」事業である。

被災した急傾斜園地を隣接地の農地開発を一体化し、25度以下の緩傾斜園とし、排水機能を備えた農道の整備を行うという事業である。吉田地区内の2カ所(それぞれ5.6ha、6.8ha)が構想されている。基盤整備後の農地の担い手への集積(集積実績に応じた地元負担への助成つき)が条件になっているなかで、関係農家の合意をどう取りつけるか、関係者の協議が始まっている。

JAえひめ南には、県南予地方局の提案にもとづくこの「再編復旧」事業を、関係農家の意思を尊重し、かんきつ栽培意欲を盛り上げる方向で、しっかり議論できる場をつくりだすことが求められている。

清家嗣雄さんは、若手後継者ががんばっているかんきつ産地ならばこそ、こうした積極的農地開発事業は合意可能だとみている。そして、JAえひめ南は、若手後継者をさらに増やす組織づくりに力を入れようとしている。

取材を終えて
頼れる中堅職員育成

〔特集:東日本大震災10年 命を守る協同組合〕では、西日本豪雨災害からの復旧・復興にJAがどうがんばっているかを示すものとして、愛媛県宇和島市のJAえひめ南を取材した。取材では村田武九州大学名誉教授の補佐を得た。取材で協力いただいた課長クラスの営農担当職員の3氏と話しながら、JAえひめ南が中堅職員をしっかり育てていることを知ることができたのは、たいへんうれしいことであった。

(山藤)

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