農政:許すな命の格差 築こう協同社会
特集「許すな命の格差 築こう協同社会」を企画するにあたって2021年4月5日
新型コロナウイルス感染症が、日本で初めて確認され、日本社会を覆いつくしてから2年目に入りました。世界的に広がっているコロナ禍は、産業の国際分業と自由貿易によって「高度成長」を継続しようとし、破綻寸前だった「新自由主主義」の矛盾・脆弱さを白日の下にさらけ出したともいえます。
それは、富める国と貧しい国との経済的格差だけではなく、富める国においても富める者はさらに富、貧しいものはさらに貧困に陥るという所得格差のさらなる拡大を招いています。
日本においても、女性を中心に増加している非正規労働者に対して、労働シフトの削減による所得減や失業。そのことによる生活苦や孤独感から自殺する女性の増加。自宅勤務など在宅時間が増えたことによる家庭内DVや幼児虐待など、多くの問題が顕在化してきています。
さらに日本は、先ごろ明らかにされた世界経済フォーラム(WEF)の「ジェンダーギャップ2021」で、調査対象156カ国のうち120位(G7および東南アジア・太平洋地域最下位)と評価された「女性差別・ジェンダーギャップ」が、依然として根強く社会意識として存在するなど、人間としての命と尊厳が守られた社会とは言い難い状況にあります。
また、世界的にパンデミックに陥っている状況では、食料の国内供給を優先し、輸出を制限して、自国民の食料を確保するのは国家として当然であり、自由貿易の理念など存在しないに等しくなります。そうなったときに、食料自給率38%の日本国民の食料はどうなるのでしょうか。「農業は成長産業」と唱える政府が、国民の命を支えるために国内での食料を生産する農業を振興する有効な政策を実施しているとは言い難い状況にあると言えます。
そして、コロナから命を守るワクチンも、輸入しなければならないのが現実です。
日本政府は、国民の命と食料の安全保障を疎かにしてきたといえます。
コロナ禍で白日の下にさらけ出された、このような新自由主義の矛盾を克服し、人間の命と暮らし、尊厳が守られる社会を築いていくことが、いま求められています。その時に求められているのは、競争ではなく協同の力だと、私たちは考え、
持続可能な社会をめざして「許すな命の格差 築こう協同社会」
をテーマに、上半期の連載特集を企画しました。
具体的には、地域経済の要である農業を中心に、地域経済の創生に着実に取組んでいる農協や協同組合などを取材・発信することで、その成果はもとより課題などを、共有していただくことで、各地での取り組みが前進することのお役に立てればと考えています。
また、農業分野だけではなく、視野を広げて、多くの分野の識者から、協同組合がこれからの社会で果たしていくべき役割について、ご提言いただきたいと考えています。
農協など現場からのレポートと、識者からの提言を、定期的にJAcomおよび農業協同組合新聞で連載してまいります。
【座談会】
【インタビュー】
【現地ルポ】
- JA鹿児島きもつき 10年構想で地域豊かに――協同でつなぐ農業とくらし
- JAぎふ 農福共生に挑む みんな仲間、安心と幸福権追求
- JAなすのねぎ部会 農家守る協同の力 「那須の白美人ねぎ」ブランド化
- JAいわて中央 農協運動の心で頼りにされる農協づくりを目指す
- 「有機農業の里」茨城・やさと農協を歩く 客員編集委員 先崎千尋
- JAやさと(茨城)地域活性化に主眼 担い手育成を重視 神生組合長と廣澤専務に聞く
- 和歌山県・JA紀南 梅を主力に持続可能な地域共生へ 産業化で若者の定住支援
- JAみやぎ登米「環境保全米」冷害に強かった 耕畜連携の循環農業
- JAみやぎ登米 地域ぐるみ園芸倍増へ 多様性持つ農協の役割 佐野和夫組合長
- JA 東京スマイル(1) 都会で取れたて野菜 直売所が都市農業PR
- JA 東京スマイル(2)眞利子伊知郎組合長に聞く 「都会の産地」守るJA に
【提言】
- 「ばらける」社会脱却へ 「協同の力」を信じて 田代洋一 横浜国立大学名誉教授
- 協同の英知発揮を 飯野芳彦・元JA全青協会長
- コロナ下で学ぶ協同組合精神 内山 節(哲学者)
- 普遍的な目標を継続して掲げつつ、変わっていくために 比嘉政浩 日本協同組合連携機構(JCA)代表理事専務
- 農業者の声をどう政策に反映させるのか――「協同組合」としてのJAと「農業団体」としてのJA 増田佳昭(立命館大学教授)
- 協同組合の特性 IT化で発揮を-高齢化先進国のモデルケースに 小山良太 福島大学食農学類教授
- いま、協同組合が役割を発揮するために! 冨士重夫 一般財団法人 蔵王酪農センター理事長
- 「協同労働」の社会化へ 古村伸宏 ワーカーズコープ連合会理事長
- 共生が『協生』生む――協同と協働をもたらす協生が救命につながる 浜矩子 同志社大学大学院教授
重要な記事
最新の記事
-
【新年特集】2025国際協同組合年座談会「協同組合が築く持続可能な社会」(1)どうする?この国の進路2025年1月22日
-
【新年特集】2025国際協同組合年座談会「協同組合が築く持続可能な社会」(2) どうする?この国の進路2025年1月22日
-
【新年特集】2025国際協同組合年座談会「協同組合が築く持続可能な社会」(3) どうする?この国の進路2025年1月22日
-
【新年特集】2025国際協同組合年座談会「協同組合が築く持続可能な社会」(4) どうする?この国の進路2025年1月22日
-
鳥インフル 英イースト・サセックス州など4州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月22日
-
【JAトップ提言2025】消費者巻き込み前進を JAぎふ組合長 岩佐哲司氏2025年1月22日
-
【JAトップ提言2025】米も「三方よし」精神で JAグリーン近江組合長 大林 茂松氏2025年1月22日
-
ポンカンの出荷が最盛を迎える JA本渡五和2025年1月22日
-
【地域を診る】地域再生は資金循環策が筋 新たな発想での世代間、産業間の共同 京都橘大学教授 岡田知弘氏2025年1月22日
-
「全日本卓球選手権大会」開幕「ニッポンの食」で応援 JA全農2025年1月22日
-
焼き芋ブームの火付け役・茨城県行方市で初の「焼き芋サミット」2025年1月22日
-
農のあるくらし日野のエリアマネジメント「令和6年度現地研修会」開催2025年1月22日
-
1月の「ショートケーキの日」岐阜県産いちご「華かがり」登場 カフェコムサ2025年1月22日
-
「知識を育て、未来を耕す」自社メディア『そだてる。』運用開始 唐沢農機サービス2025年1月22日
-
「埼玉県農商工連携フェア」2月5日に開催 埼玉県2025年1月22日
-
「エネルギー基本計画」案で政府へ意見 省エネと再エネで脱炭素加速を パルシステム連合会2025年1月22日
-
クミアイ化学工業と米国Valent社、水稲用除草剤エフィーダの米国開発で業務提携2025年1月22日
-
肉の日に合わせお得なアソート「冷凍モスライスバーガー 肉の日セット」登場 モスバーガー2025年1月22日
-
店舗、宅配ともに前年超え 12月度供給高速報 日本生協連2025年1月22日
-
地上部生長から育種ほ場のテンサイ糖収量を予測 農研機構×東京大学2025年1月22日