農政:許すな命の格差 築こう協同社会
【特集:許すな命の格差 築こう協同社会】現地ルポ:JAぎふ 農福共生に挑む みんな仲間、安心と幸福権追求(2)2021年4月14日
地域の協同組合として障がい者と向き合い、農協を核に共生をめざすJAぎふ。櫻井宏組合長に共生社会への思いを聞いた。
櫻井宏代表理事組合長に聞く
櫻井宏組合長
地域のよりどころへ 対話で生まれる挑戦する力
――地域に果たす農協の役割を改めてどう考えていますか。
農協というのは地域コミュニティーのよりどころになるべきだと考えています。いかに農協を頼りにしてもらうかということから、相談機能を前面に打ち出していきます。相談の内容は個人でばらばらですから、いかに組合員との面談を増やすかということをテーマに活動しており、われわれ常勤役員も組合員宅に足を運びます。
「地域に根ざした協同組合」と言われますが、いかにわれわれが現場に顔を出せるか。対話運動は、やはり組合員のところに出かけなければならないということで3年前から全職員全戸訪問活動を始めました。
昨年はコロナ禍で直接面談が少なくなりましたが引き続きこの対話運動に取り組んでいきたいと思います。
訪問を重ねると打ち解けて、それぞれの組合員が抱えている悩みを話してくれることもあります。逆にそういう話を聞きだせる職員にならなければなりません。組合員の悩みごとを総合事業で解決しよういうことを対話運動の大きな目的に掲げています。
こうした地域貢献のなかに当然、障がい者の支援をどうするかということが農協としても課題になりました。一方で言葉として「農福連携」ということも聞かれるようになりましたが、では何をするのかということです。そこで障がい者の受け皿として農協の事務の仕事や直売所の業務、それから農産物の生産、人手不足の農家のお手伝いなど事業に取り組もうというのが「はっぴぃまるけ」です。たとえば、イチゴのパック詰めなど出荷作業を受託するとともに、自らも農業生産していこうということもめざしています。
そこで障害者の雇用が増えることも期待しています。この子会社を立ち上げたことで農協としても農福連携への取り組みの取っ掛かりができたと思います。
障がい者のみなさんを仲間に入れるということは地域に農協が貢献するという機能を果たすことではないかと考えています。
「挑戦」は諫めの言葉
――「挑戦するJA」を打ち出しています。
経営理念のいちばん上に挑戦を掲げています。挑戦とは新しいことに取り組むことだけなく、深堀りすることも挑戦だと思います。今回の農福連携の事業もその重要性はみんなの頭のなかにあったと思いますが、それを具体化していこうと動いたわけです。
挑戦というのは今までと同じことをやっていてはだめだという戒めの言葉と自分では解釈しています。理念をみなで共有する必要があると考えましたが、よくある信頼や安心という言葉ではなく「挑戦」をいちばん上に掲げ、「貢献」がそれに続く。貢献するためにはわれわれは挑戦をしなければなりません。常に変えていこうということですが、ただし、挑戦とは良いことをやめるということではありません。
自分への戒めという点でいえば、この「挑戦」という理念は、内部に向けて発信する経営理念だと思います。外に向かって「挑戦するJA」と発信することはもちろんいいことですが、われわれの内部に向けて発信し続けるキーワードだと思います。
何がこの組合員の家庭の問題なのか、そこを引き出せるような対話をしようと言っています。プライバシーを根掘り葉掘り聞くわけではありませんし、問題がなければこれまでどおり農協を利用してもらえばいい。しかし、後継者がいないとか、資金の相談など個別にはいろいろ相談ごとがあります。それは会議のなかで出てくるものではなく、個別に相談にのることで出てくるものだと思います。そういう意味で農協運動の本質は対話運動だと思います。このことも不断に発信していかなければならないと思います。
【JAぎふの概要】
○組合員数:10万1493人(うち正組合員数4万1236人)○職員数:1048人
○店舗・事業所:本店、54支店53事業所
○貯金残高:1兆180億円○貸出金残高:2213億円○長期共済保有高:2兆26億円
○販売品販売高:87.1億円
○購買品供給高:58.5億円
○管内市町村:岐阜市、羽島市、各務原市、山県市、瑞穂市、本巣市、羽島郡笠松町、同岐南町、本巣郡北方町(市街地から中山間地域までを含む地域)
○特産品:エダマメ(岐阜地区)、徳田ねぎ(岐阜南地区)、アスパラガス(羽島地区)、富有柿(本巣地区)、ニンジン(各務原地区)、利平栗(岐阜北地区)。
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