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農政:原発処理水海洋放出

福島 元に戻るまで政府は責任を 福島県農協青年連盟 折笠明憲委員長に聞く【緊急特集:原発処理水海洋放出】2021年4月15日

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原発事故後、自分も仲間も作った農産物がまったく売れなくなったという深刻な被害を受けた折笠明憲委員長は、原発処理水の海洋放出で「この10年をまた繰り返すのか」と風評被害を懸念する。政府は対策を実施すると表明しているが「福島が元に戻るまで最後まで責任をもってほしい」と強調する。

福島県農協青年連盟 折笠明憲委員長福島県農協青年連盟 折笠明憲委員長

いわき市で水稲約10haを中心にネギ、ナス、春菊のほか、約30種類の野菜をつくって直売所に出しています。

アルプス処理水の海洋放出決定はやめてほしかった。何か違う方法はなかったのか、というのがいちばん最初の思いです。ただ、調べてみると技術的にも難しいということもあったので、残念ではありますが受け入れるしかないのかと思っています。

ただ、われわれはこの10年、風評被害で価格低下という影響を受けるなか、震災直後から一生懸命PRをして、やっと回復の兆しが見えてきたところなのに風評被害が再燃してしまうという懸念があります。海洋に放出するので(放射性物質が)数値として出ないということは分かりますが、水産物から農産物まで福島県産として考える人のほうが多いと思います。

国民のみなさんは安全だといわれてもやはり不安に思ってしまう。この10年を振り返ると、1、2年過ぎれば気にしない人も多くなったと思いますが、どうしても気にする人は今でもいます。同じように生産し同じ値段で並んでいるのであれば、どちらを選ぶかとなれば不安要素が少ないものを食べるということになると思います。

こういう状況のなか、海洋放出によって再び不安要素が上乗せされるのでは、またこの10年間を繰り返すのか、という思いになり辛いものがあります。

震災が起きた2011年は12月に東京都内で福島県産フェアを開き、食べても安心ですというPRをしました。しかし、いろいろな情報が混乱していたこともあって、みなさん手にとってくれず全然売れませんでした。キノコを栽培している農家の仲間は出荷してもまったく値段がつかず、市場から市場に回しているうちに運送代がかさんで赤字になった。それが2年、3年続きました。

私たちは米を作ってきましたが、個人向けの販売はすべてキャンセル。要らないよ、と言われてお客さんは誰もいなくなってしまった、と仲間から聞きました。

実は私がネギやナスなど野菜を作るようになったのは震災後からなんです。米がまったく売れなくなったから、本格的に野菜づくりをするようになったということです。今は直売所だけでなく市場にも出荷しています。

風評被害で価格が下がっているといっても、自分としては震災前の価格は分かりません。ともかく米が売れなくなったから野菜を作って売っていこうということでした。

直売所への出荷は市場には出せない規格のものも販売できるというメリットがあります。新しくチャレンジして作った作物を販売してみて、そこで手ごたえを得て作付け量を増やすといったこともできます。小規模な農家も消費者に直接売ることができる場です。

ただ、地元の消費者のみなさんも震災直後は福島の農産物に対してやはり不安だったようです。そこで直売所に出荷する農産物もしっかり検査していることを自分もお客さんに説明しました。また、自分の野菜の作り方なども伝えながら理解を広げ、最近では買ってくれる人が増えてきました。そういうなかでよかったなという気持ちも出てきたところに、海洋放出の決定です。また風評被害がぶり返すのではないかというのがいちばん怖いことです。

実は福島の農産物をPRするために国や県がいろいろ応援してくれていますが、10年を迎えて支援が縮小傾向になっていました。そこに今回の決定です。10年経ってもまだわれわれは風評被害に苦しんでいる面があるのに、これでまた何年経っても消えないのではないかと心配になります。

政府の文書には風評被害にはしっかり対応していくと明記されていますから、最後まで責任をもってやってほしい。他の県と遜色がない状態になるまでしっかり対策を続けてほしい。

一方、JA青年部として福島を食べて応援しようと支援してくれる取り組みもあります。そういう連携は青年部ならでは運動として取り組んでいきたいと思いますし、水産業や林業との連携も考えたいと思います。しかし、自分たちでだけでは無理があります。政府には福島が元に戻るまで責任を持ってしっかり対策を実施してほしいと考えています。


緊急特集:原発処理水海洋放出

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