農政:どうするのか?コロナ禍のオリンピック
命、健康を守る政策よりまさる政策はない 孫崎享(評論家)【どうするのか?コロナ禍のオリンピック】2021年4月22日
スポーツは、見る者に生きていく上での元気を与えてくれる。私個人にとっても、最高水準の競技を繰り広げるオリンピック競技を見ることは、これまでも最大の楽しみの一つであった。だからオリンピックが東京で開かれることを心から楽しみにしてきた。
でも情勢は変わった。コロナの発生によって、世界中の最大関心事はコロナを如何に抑えるかである。コロナを抑える最大の手法は、人と人の感染の機会を減らすことにある。
孫崎亨 氏(評論家)
スポーツは、見る者に生きていく上での元気を与えてくれる。私個人にとっても、最高水準の競技を繰り広げるオリンピック競技を見ることは、これまでも最大の楽しみの一つであった。だからオリンピックが東京で開かれることを心から楽しみにしてきた。
でも情勢は変わった。コロナの発生によって、世界中の最大関心事はコロナを如何に抑えるかである。コロナを抑える最大の手法は、人と人の感染の機会を減らすことにある。
私は、今夏の東京オリンピックは止めるべきであると思う。理由は次のとおりである。
(1) 世界中、コロナは決して収まっていない。4月中旬の数字で、世界の感染者は1億4000万人、死者は300万人を超えた。更に一日当りの感染者は最大数を更新している。
(2) 日本においても、再度緊急事態宣言を出す状況にある。すでに感染者は累計53万人、死者は9000人を超えている。
(3) こうした中、命を守る、健康を守ることにまさる政策はない。オリンピックは様々な形で日本のみならず世界への感染増大の機会となる。それは避けるべきである。
「東京オリンピックを開催すべきだ」と主張する人々に中に、「選手はオリンピックを目指して必死に努力してきたではないか。その機会を奪うのはかわいそうだ」という論がある。
だが世界で300万人の人が亡くなったのである。日本でも9000人もの人がなくなったのである。これらの人々は、それぞれが人生の目標を持っていたであろう。それらが命をなくすることで消えた。命をなくすることと、オリンピックへの出場の機会を失うことと比較して、どちらが人々に痛みを与えるか、言わずもがなであろう。
今夏東京オリンピックを開催すれば、それは確実に感染の機会を増す。そのことは人々の命を奪う機会を増すということを意味する。
今年3月初めに民間機関が行った東京五輪の賛否に次のものがある(報道は時事通信)
国別 反対 賛成 どちらでもない わからない
日本 56 16 22 6
独 52 19 22 7
スウェーデン46 23 21 11
仏 37 25 27 11
米 33 32 25 9
世界全体のコロナ感染状況は、調査時よりも更に悪化しているから、世界における反対の声は一段と拡大しているとみられる。
世界中が今や今夏の東京オリンピック開催に反対している中、何故開催しようとしているのか。当初はオリンピックを機会に海外からの観客を呼び、日本経済の活性化を図りたいとの意図があったが、海外からの観客は招かない方針が出たことでこの理由は消滅した。今一つ残るのは、東京オリンピック開催がなくなれば、オリンピックの放映で得られる収入を国際オリンピック委員会が失うこと位であろう。
今夏の東京オリンピックを強引に開催した時に何が起こるか、整理したい。
(1) 海外からの選手、関係者、報道関係者などに感染者がいることが予想され、その際には異なる変異株の日本国内での拡大が予想される。
(2) 海外からの選手、関係者の接触によって、これらの国内ではいまだ発生していない異種株が持ち込まれる可能性が高く、その時には東京オリンピックが批判の対象となる、
(3) 海外では、「日本は人の命よりも金儲けを優先する国だ」という批判が出よう。
今日菅政権は決して強固な政権ではない。強い世論の反対を無視できる政権ではない。
国民の一人一人が「今夏、本当にオリンピックを開催しなければならないか」を真剣に考え、自分の考えを主張する時に来ている。
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