農政:どうするのか?コロナ禍のオリンピック
企業利益と政権浮揚の五輪はいらない ~各地の世界選手権を五輪と位置付けるべき~ 鈴木宣弘・東京大学教授【どうするのか?コロナ禍のオリンピック】2021年4月30日
オリンピックは、国際五輪委員会をはじめ関連する組織・企業に非常に大きなビジネス・チャンスと位置付けられている。選手はそのための駒であり、市民は儲けの源と考えられている。そして、日本政府にとっては、政治的メンツと政権浮揚の道具とみなされているように思われる。
そこで、選手や国民の健康のことは度外視して、何とか実施しようとする。純粋に競技にかける選手の想いを利用して、選手のためにやるかのようなフリをする。コロナ禍の広がりの実態をわかりにくくするために、PCR検査は抑制し続け、結局、感染拡大・死者増大と医療崩壊を止められなくなってしまった。市民活動の自制は求めるが、補償には金を渋る。
一方で、どれだけの血税を、一部の人の利益と政治的思惑のために費やしてしまったか。東京開催を勝ち取るために、巨額の裏金と虚偽の発信をしたのに始まり、莫大な設備費用を費やし、延期してもとにかく開催しようと、費用はさらに膨れ上がっている。人々の命と健康の犠牲も増え続けている。
日本各地で医療崩壊が進んでいるのに、五輪に500人の看護師さんを派遣せよ、とはよく言ったものだ。国民の命をさらに危険にさらし、医療関係者をさらに酷使してまで、どうして五輪を開催する大義名分があるというのだろうか。
コロナの再拡大が止まらない中で、国民と世界の人々の命を危険にさらしての五輪強行は、ありえない判断だ。代替案として、私が提案するのは、東京開催にこだわらず、今年から来年にかけて、世界各地で分散的に開催される、各競技の世界大会をオリンピックの競技大会と位置付けて、分散開催で選手の努力に報いたらどうであろうか。
国家は国民・市民のためにあるのであり、一部の企業と政治のためにあるのではない。選手の努力に報いるには、実質的に五輪として、安全に開催できる代替案を考えることは可能なはずである。
それにしても、「今だけ、金だけ、自分だけ」の人達が、ここまでして選手や国民や世界市民を食いものにして平気なのは異常である。オリンピックだけではない。食料、農業の分野も含めて、特に、日本社会は、一部企業と政治の利益が人々を食いものにして暴走している。五輪問題の正常化を皮切りに、世の中全体の方向性を見直す契機としたい。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(130)-改正食料・農業・農村基本法(16)-2025年2月22日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(47)【防除学習帖】第286回2025年2月22日
-
農薬の正しい使い方(20)【今さら聞けない営農情報】第286回2025年2月22日
-
全76レシピ『JA全農さんと考えた 地味弁』宝島社から25日発売2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年2月21日
-
農林中金 新理事長に北林氏 4月1日新体制2025年2月21日
-
大分いちご果実品評会・即売会開催 大分県いちご販売強化対策協議会2025年2月21日
-
大分県内の大型量販店で「甘太くんロードショー」開催 JAおおいた2025年2月21日
-
JAいわて平泉産「いちごフェア」を開催 みのるダイニング2025年2月21日
-
JA新いわて産「寒じめほうれんそう」予約受付中 JAタウン「いわて純情セレクト」2025年2月21日
-
「あきたフレッシュ大使」募集中! あきた園芸戦略対策協議会2025年2月21日
-
「eat AKITA プロジェクト」キックオフイベントを開催 JA全農あきた2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付、6月26日付)2025年2月21日
-
農業の構造改革に貢献できる組織に 江藤農相が農中に期待2025年2月21日
-
米の過去最高値 目詰まりの証左 米自体は間違いなくある 江藤農相2025年2月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】有明海漁業の危機~既存漁家の排除ありき2025年2月21日
-
村・町に続く中小都市そして大都市の過疎(?)化【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第329回2025年2月21日
-
(423)訪日外国人の行動とコメ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年2月21日
-
【次期酪肉近論議】畜産部会、飼料自給へ 課題噴出戸数減で経営安定対策も不十分2025年2月21日
-
「消えた米21万トン」どこに フリマへの出品も物議 備蓄米放出で米価は2025年2月21日