農政:全国会議員に聞く「どうするのかコロナ危機」
照屋寛徳 社民党 衆議院議員【緊急特集 全国会議員に聞く「どうするのかコロナ危機」】2021年9月14日
照屋寛徳 衆議院議員
○照屋 寛徳
○社民党(会派 立民)
○衆議院議員
○選挙区:沖縄県2区
○出身地:沖縄県
【1】現在の政府のコロナ対策についての評価
(1)ワクチン接種の問題点と今後の課題
この間、政府は裏付けのないワクチン接種の目標(接種回数、期日)を、自治体・職域(企業・学校等)に押し付けただけではなく、肝心のワクチン供給を間に合わせられずに現場を混乱させた。現場の実態と問題を把握して、それに則した支援策を確保すること、同時にワクチン接種の工程表を早急に示すべきである。
医療従事者に加え、介護・障害者福祉・保育のケア従事者、社会機能維持のために欠かすことのできない仕事に就いている人々へのワクチン接種を急ぐべきだ。
(2)医療体制の問題点と今後の課題
感染症対策の基本は公衆衛生施策である。しかし政府はこの間、保健所・保健師を縮減した。感染症対策を担ってきた自治体病院や公的病院の統廃合も強行している。地域の医療・公衆衛生の体制を根本から強化しなければならない。
コロナ危機による医療体制の逼迫は多くの専門家が昨年から警鐘を鳴らしてきた。政府が有効な対策を取なかったために、自宅療養者が溢れ、医療従事者が過重過密労働に追い込まれ医療危機に直面している。入院制限や基準変更はしてはならない。生命を救うという基本姿勢を貫かなければ医療現場は士気を損ない、国民には不安が広がる。
緊急仮設病院の設置、宿泊の療養施設の強化、開業医の支援や訪問看護と往診の強化、自宅療養の軽症者が重症化した場合に迅速に医療へ結びつけるシステムが必要。感染者、健康観察を行っている入所施設等と医療機関の「ハブの役割」を保健所、役所が担えるよう財政支援、人的支援が必要。
(3)国民生活や経済活動の規制(「外出自粛」「営業自粛」「リモート作業」等)への補償
国民生活への規制は、各分野にわたるきめ細かな支援をセットで総合的に行う必要がある。
経済活動の規制は、すべての業界業種、中小企業、個人事業主に深刻な打撃をもたらしている。規制は補償をセットで行わなければならない。再度の持続化給付金を行う。緊急小口資金、総合支援資金の特例貸付を拡充し返還が困難な人が多重債務に陥らないよう償還免除の条件を緩和する。文化・芸術関係の団体、フリーランスへの特別給付金の支給や休業補償を強化する等。
生活困窮者への一律10万円の給付を実施する。特例貸付利用の前提を外し「生活困窮者自立支援金」を利用しやすい制度に改める。低所得の子育て世帯に対する生活支援特別給付金を速やかに支給する。住居確保給付金の支給期間を緩和する等。
(4)検査体制の拡充について
当初、政府はPCR検査について「37度5分以上の発熱が4日以上」とする基準を示し、検査を抑制してきた。自宅で検査を待つ感染者が亡くなってから基準を緩和するなど、対策は後手後手に回っている。感染力の強い異変株の出現、無症状の感染者がウイルスを拡散している場合が多いこと等、PCR検査は絞り込むのではなく検査体制を拡充すべき。疑いがあれば早期検査が当たり前に受けられ、陽性であれば早期に治療を開始する体制が必要。PCR検査と抗体検査の組み合わせはより効果的。感染拡大抑止のために、介護、保育等のケア従事者、社会機能維持のために欠かすことのできない仕事に就いている人たちに対する社会的検査も行うべき。
【2】今後のコロナ対策についての提案
感染が拡大し「ステーホーム」と自粛を要請しながら、全く逆のメッセージとなる「Go Toトラベル」や東京五輪・パラリンピックを強行する等、施策に一貫性がない。「緊急事態宣言」も常にタイミングが遅く中途半端で効果を低減させている。また、首相と政府の対策分科会長や国立感染症研究所長の考えが一致していない。国民が信頼できるコロナ対策を構築する体制を一刻も早く作る。
医療、公衆衛生、経済活動のみならず、心理的な支え、子育て、教育・文化・スポーツなどの社会活動等、多角的な視点で指針を示すことができるよう、総合的なコロナ危機対策が必要。経済学、心理学、自然科学、法学等の専門家の力を集める。
【3】コロナ禍で見えてきた日本の政治のあり方について思うことがありますか?
〔格差をなくす〕
コロナ危機、オリ・パラに政府が投じた巨額の予算は、中抜きをして儲ける大企業に回り、下請け、二次三次下請けの中小企業等に苦渋を強いている。雇用の調節弁として非正規労働者が失業する等、生活困窮に陥る層ができている。新自由主義経済の限界が露呈した。格差を是正し公平な社会が強く求められる。
〔公助・セーフティネットが重要〕
この間、政府は社会保障について「自助」を施策方針として表明している。コロナ感染防止の対策も、常に個人の行動に求め、「感染したのはその人のせい」と考える風潮を作り出した。自粛警察の出現や感染した人への差別につながっている。
危機はより弱い弱者へ集中する。女性の失業率・自殺率が上がっていること、ひとり親家庭の経済的困窮、女性・子どもへの暴力や虐待急増していることは、その深刻さを示している。社会の様々な歪みがコロナ危機によって顕在化している。早急に対策を打つとともに、抜本的な解決を図っていかなければならない。コロナ危機は人々の生存権を脅かしている。今こそ、公助、セーフティネットが重要である。
〔異常な産業社会からの脱却〕
頻発する新興ウイルスによる感染症は、気候変動、温暖化など地球環境問題が大きく影響している。AIS、エボラ出血、SARSなどは熱帯雨林の破壊などが一因だ。経済効率追求による社会の見直し、化石燃料と原子力発電に依存した大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とする異常な産業社会の脱却が求められる。
〔ジェンダー平等の視点〕
コロナ対策に世界中で模索が続くなか女性リーダーの手腕が注目された。共通するのは、素早い決断力と実行力。信頼する専門家との強い連携、自ら説明し協力を求める誠実な姿勢。感染の危険下で働く人びとへの敬意と感謝。そして、さまざまな境遇で不安を抱えながら生活する人びとへの共感と励ましだ。日本の政治、社会においてもジェンダー平等が早急に必要。
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