農政:全国会議員に聞く「どうするのかコロナ危機」
宮澤博行 自由民主党 衆議院議員【緊急特集 全国会議員に聞く「どうするのかコロナ危機」】2021年9月16日
宮澤博行 衆議院議員
○宮澤博行
○自由民主党
○衆議院議員
○選挙区:静岡3区
○出身地:静岡県磐田郡龍山村
【1】現在の政府のコロナ対策についての評価
(1)ワクチン接種の問題点と今後の課題
ワクチンは新型コロナウイルス感染を100%防ぎ得るものではないとはいえ、感染拡大を収束させるための手段としては、最も効果的なものと考える。政府がワクチン接種のペースを上げるために様々な施策を取ってきたことは妥当である。政府や医療関係者の呼びかけにより、多くの国民が接種に応じたことは良かったが、満12歳以上の国民全員にできる限り接種をお願いするという前代未聞のオペレーションは、自治体や医療機関を始めとする現場に極めて大きい負荷をかけることになった上、接種を希望する国民に接種予約の困難さというストレスを抱えさせることになった。今後、今回と同様の非常時に備え、①予め、地域ごとにワクチン接種担当の医療機関、医療関係者を登録しておき、非常時に動員できる体制を整備しておくこと、②マイナンバーカードを活用し、平易にワクチン予約を可能にし、接種管理を効果的に行うことが必要である。
(2)医療体制の問題点と今後の課題
新型コロナ対策は、極めて感染力が高く、かつ重症化リスクの大きい感染症との戦いであり、我が国の従来の医療行政、医療システムでは対処が困難であったと言える。今後、我が国が取り組まなければならないのは、平時における病床(感染症病床)を大幅に増加させることと、感染症に対応可能な病院とそれ以外の患者へ対応する医療機関へ再編させることである。単純に現状の医療機関や病床の数を維持するだけでは、将来のパンデミックには対応できない。効果的かつ機動的な医療システムを構築することで、パンデミックや大規模災害に対応することができると考える。
(3)国民生活や経済活動の規制(「外出自粛」「営業自粛」「リモート作業」等)への補償
令和2年度は数次にわたって補正予算を編成し、個人と法人の双方に対して各種の支援策を行った。しかし、支援のスピードを重視したため、収入や売り上げ規模に応じたきめ細かな支援制度を採用することができず、不公平を訴える声が上がった。また、申請手続きについても、不慣れな個人事業主らから困惑の声があった。今後取り組むべきは、売り上げ規模などに応じた支援制度の整備と、手続きの簡素化、支給までのスピードアップ、そして、プッシュ型支援である。予め行政からの振込先として口座を登録してもらい、行政側は個人の各種情報を集約して住民の状況を把握し、申請がなくても要件に該当する人に対しては即座に給付する仕組みを目指すべきである。今求められているのは、公平さとスピード感である。
(4)検査体制の拡充について
(2)と共通するが、これについても検査を実施する医療機関や医療従事者を予め登録しておき、パンデミックの際は即座に非常時体制に切り替えて検査場を大量に整備できるようにしておくことが必要である。また、新型コロナを含め、各種感染症の検査キットを国内生産できるよう企業に対する支援と、国家備蓄できる制度が必要である。
【2】今後のコロナ対策についての提案
新型コロナに限ったことではないが、平時と非常時を問わず、多種多様なセーフティネットの拡充が必要である。一例を挙げれば、コロナ禍により家計が激変したり、アルバイトがなくなったりしたにも関わらず、制度の隙間から零(こぼ)れ落ちて学業の継続が困難になってしまった学生の支援である。返済不要の給付型奨学金の要件緩和に加え、授業料を国が立て替える制度を提案している。非常時にどの制度も要件に合わずどこにも頼れないという事態が起きないように不断に制度の見直しを続けていかなくてはならない。
【3】コロナ禍で見えてきた日本の政治のあり方について
近年、東日本大震災や豪雨災害など、広範囲に影響を及ぼす自然災害が発災したが、パンデミックは、言わば被災地が全国であり、なおかつ感染拡大が長期間に及び、極めて対応が困難な問題である。被災地が日本全国であるため、被災していない地域で経済活動を活性化させて経済を回すという対策も取りにくい。また、感染のレベルも刻一刻と変わるため、政府はフレキシブルに対応しなくてはならない。
1990年代までは、我が国は欧米をモデルとして豊かさを追求し、ある程度それを実現することで国民の思いに応えることができていたが、バブル崩壊以降、一億総中流意識は崩れ、国民の価値観も多様化し、政策に対するニーズも画一ではなくなった。コロナ禍においては、政府に対する要望はさらに多様化し、それに加えて、国民が政府に対して求めるスピード感は、非常に強くなっている。
そうであるならば、政府も自治体も、組織や制度、政策を「固定」「画一」から「柔軟」「迅速」へと抜本的に変える必要があるだろう。状況に応じて人員の配置を変え、制度や政策もより選択肢を幅広く取れるように設計しておかなくてはならない。また、本気で政策を実行し、社会を変えたいのであれば、予算が必要であることを政治家も官僚も国民も理解しなければならない。「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」は、単なる精神論への堕落でしかない。
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