農政:許すな命の格差 築こう協同社会
【特集:許すな命の格差 築こう協同社会】現地ルポ:JA 東京スマイル(1) 都会で取れたて野菜 直売所が都市農業PR2021年10月26日
東京23区内にあるJA東京スマイルでは、JAの農産物直売所が新たな野菜づくりの拠点になっている。同JAには3カ所の直売所がある。運営の仕組みは一般の直売所と変わりないが、大消費地のど真ん中にあって、店頭販売だけではなく移動販売車も運営。消費者に区内(地元)の野菜を届けるとともに、農業の大切さを消費者にアピールしている。(農協協会参与・日野原信雄)
駅前で地元野菜を売る移動販売車
都会に産地 区民も驚き
「地元(東京都区内)に農業があるとは知らなかった」。直売所や移動販売車を初めて利用する区民は驚きの声を上げる。JA東京スマイルの管内の足立・葛飾・江戸川区は東京都の東にあり、千葉、埼玉県に接する。かつては大都市江戸の台所として、野菜の供給地だったが、昭和30年代の高度経済成長のもと、都市化が進み、農地は住宅地や工場用地に変わった。
多くの野菜が消えていくなかで、江戸川区の小松菜を中心とする軟弱野菜は生き残った。小松菜は徳川8代将軍吉宗が名付けたと言われる古い歴史を持ち、また江戸川の沖積土壌が栽培に適していたこと、最短では種まきから30日で収穫でき、高い収益が期待できることなどが背景にある。
都内の青果市場に近いことから個人出荷が多く、これは今も続いている。しかし出荷者が高齢化するにつれて、体力的に市場出荷が難しくなったことを受け、JAと葛飾区が連携し平成11(1999)年に「葛飾元気野菜直売所」がスタート。29年には足立区に「あだち菜の郷」、江戸川区には「えどちゃんショップ」を同時にオープンさせた。
直接販売で 生産者意欲
JAは施設を建て販売の業務を職員で支援しているが、直売所の利用規則等は直売部会が定め運営を行っている。現在部会員は3部会合わせて137人。手数料は5%で、令和2(2020)年度の全体の販売高は約8000万円。同JA経済営農指導部の石井義男部長は「野菜を作って、販売するところがあることは、生産者にとって大きな励みになる。自家用に作っていた人が部会に加入したり、作付けを増やすケースも出てきた」と評価する。
また、生産者の意欲に応えJAは移動販売車を運行。1tトラックに地元の野菜を満載し、江戸川区内の駅前など3カ所で販売。部会長も同行し地元野菜をPRする。
こうした直売活動は、一方で生産者と消費者とのコミュニケーションの場にもなる。「地元野菜とJAのファンづくりにつながる」と同部長は期待する。
直売所1号店の「葛飾元気野菜直売所」
【JA東京スマイルの概要】
2001(平成13)年、東京都江東3区の足立農協、葛飾農協、江戸川農協の3農協が合併して誕生。
▽組合員数=1万4414人(うち正組合員4945人)
▽貯金残高=3256億6000万円
▽長期共済保有高=6176億2000万円
▽購買品供給高=3億8000万円
▽販売品取扱高=8000万円
▽職員数=305人(嘱託、パートを含む)(2021年3月31日現在)
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