農政:全国会議員に聞く「どうするのかコロナ感染爆発」
大島敦 立憲民主党 衆議院議員【緊急特集・全国会議員に聞く どうするのかコロナ感染爆発】2022年2月4日
大島敦 衆議院議員
〇大島敦
〇立憲民主党
〇衆議院議員
〇選挙区:埼玉県第6区
〇出身地:埼玉県北本市
【1】これまでの政府のコロナ対策についての評価
(1)これまでのワクチン接種の問題点と3回目接種など今後の課題
(2)医療体制の問題点と今後の課題、
(3)国民生活や経済活動の規制(「外出自粛」「営業自粛」「リモート作業」等)の補償
(4)検査体制の拡充についてなどについてのご意見
JAさいたまの皆さまには、いつも農業経営についてご教授いただいております。現在は、多くのハウス農家の皆さまから重油高騰の影響について伺っております。
さて、新型コロナウイルス感染症については、一昨年の流行当時から、対策の基本は医療崩壊を招かないように感染を抑え続けることと考えておりました。従って、国民生活の自由度は、医療提供体制の範囲内に制約されます。つまり、ワクチン接種も、治療薬承認も、3回目接種も、また、新型感染症用ベッドの増床についても、医療提供体制を充実させながら国民生活の自由度を確保する取り組みなのです。
そして、新型コロナウイルス感染症対応に、多くの国民が疲れています。国民の信頼と信用を醸成することが、私たち政治家に課せられた課題と思います。
●ワクチン開発の課題について
2006年11月8日、私は衆議院厚生労働委員会で新型インフルエンザ対策に関して、次のように発言しました。「例えばある国でヒト・ヒト感染のフェーズ4になった。ワクチン開発のためにその新型ウイルス株が同タイミングで、日本、アメリカ、イギリスに送られた。3ヶ月、半年後に、アメリカでもイギリスでもワクチンの投与が始まった。日本ではできていない。私が政府でしたら一刻も早く負けないように開発したいと思います。国民の不満を起こさないためには、同じタイミングで日本国民もワクチンの投与が始まらなければならないと思います」。また、2009年5月11日、予算委員会では、「アジアでワクチンをつくれるのは日本だけです。多くのワクチンを備蓄していれば、他国に対してもある程度の配慮ができるものですから、ここのところをしっかりと今後努力して頂かなければならないと考えております。」と、政府に対応を求めています。
当時からワクチン開発は国の安全保障であり、他国に先駆けて開発することは、我が国の立場を優位にすると考えていました。新型コロナウイルスワクチンを自国で開発した国は、米国、英国、中国、ロシアです。自国の安全保障のために、他国に依存することを明らかに回避したのでした。その上、外交上の手段として使っています。
ワクチンや治療薬の開発は、安全保障と位置付けて、政治が主導する課題と考えています。
●医療提供体制の問題点と今後の課題について
社会経済活動は供給できる医療資源に制約されます。特に変異株が流行の主体になったので、これまでの対策を超えた対応が求められています。厚生労働省も一所懸命に努力しているのですが、既存の枠組みの中での対応なので柔軟に対処できていないと思われます。そこで、民間病院が感染症病床を増床することへの誘導策、国の医療施策との整合性、今後の安全保障への備えを盛り込んで、病床確保のために、以下を提言したいと考えています。
(1)新型感染症患者を受け入れるには、多くの病床を潰して対応する病床を作る必要があり経営を圧迫する。従って、罹患した方のために病床を整備した病院には、整備に要した費用と2019年の診療報酬見合いを概算で支払う。協力頂いた病院には、今回確保して頂いた病床は、今後、特別枠として現状の病床に加算し、新型コロナウイルス感染症が収まれば一般病床として使用することも認める。ただし病床を新設しても、医師、看護師を確保しないと稼働しないので、稼働できた病床を加算の対象にする。病院側に医療従事者の確保をお願いしますが、相応の金額は国が負担することとする。
(2)次の基準病床数の見直しでは、都道府県ごとの病床は従来通りの算定式で算出する。都道府県は、まず、県全体の基準病床数から今回新型感染症病床として協力頂いた数を引いて病院毎の病床を算定する。その後、今回確保頂いた新型感染症病床数を各病院の特別枠として加算する。特別枠は普段は一般病床として使用するが、新たに新型感染症が流行した際には、感染症対応病床として拠出願う。国の安全保障上の観点から対象となる病床には、国からの助成を措置する。
●検査体制の拡充について
2021年6月9日厚生労働委員会議事録の要旨です。「これまでも、PCR検査あるいは抗原検査、いつでも、どこでも、誰でも、無料で受けられないか発言をさせていただきました。(中略)接種が終わるまでは、やはりブレーキを時々踏みながら、うまく医療崩壊を起こさないようにするということが必要だと思い、私としては、いつでも、どこでも、誰でも、PCR検査とか抗原検査を受けられた方がいいということを政府にお願いしたい。」当時から、国民の自主的な検査により、無症状であっても感染に気付き、自主的に行動を抑制して頂くことを考えていました。現在もその考えは変わらず、政府が早急に対応されることを望んでおります。
●コロナウイルス収束後の働き方について
これからテレワークを前提とする仕事、職種が増えていきます。仕事によっては、これまで日本企業で能力を発揮できなかった方が、必要とされる人材にもなります。以前、私が訪問した全国に支社を持つ物流会社では、ネパール人の留学生をアルバイトとして雇い、その後、正社員として雇用し、今は管理職として働いています。その方は、ネパールで最優秀の大学を卒業しているそうです。日本人社員だけの会議ではホワイトボード1枚でしたが、現在は、日本語での会議ですが、論点を整理していくためにもう一枚増やしたそうです。結論が曖昧なこれまでの会議と異なり、役割分担と責任とを明確にして結論を出して行く会議です。このことは新しい日本の経営の取り組みと思います。テレワークとは、ホワイトボードを一枚増やしたように、離れて仕事を進める前提として、お互いの役割分担と責任を齟齬のないように理解して進める仕事ととも理解できます。
私の世代では、空気が読める、相手の考えを理解できる、相手の立場で考え説得できることが評価点でもありました。しかし、テレワークですと、論理的に仕事をする能力が仕事によっては評価点になります。対人関係が下手であっても、十分に能力を発揮でき、企業もそのような方を戦力化することで競争力を保てる時代だと思います。その面からも、経営環境の変化に対応した人材を養成することが必要です。
また、テレワークが常態化するのであれば、会社に出社せず在宅で仕事をするのですから、自宅の改造費や光熱費に対する助成金制度や手当も必要ですし、サテライトオフィスの整備も喫緊の課題です。
【2】オミクロン株拡大による今後のコロナ対策で政府は何をすべきか。
埼玉県内の保健所を訪問して現状について伺うと、新型コロナウイルス感染症は、罹患すれば直ちに保健所に届け出て、その指示に基づき対応することになります。例えば、罹患された方が救急搬送される際など、どこの病院に搬送すべきかなど保健所にも連絡が寄せられ、対応することになります。夜中でも、問い合わせが担当の保健師さんの携帯電話にかかってきます。埼玉県の病床数も逼迫すると、保健所をはじめ関係者の皆さまは、患者さんの受け入れ先を照会することにも、様々な調整を行わなければなりません。自宅待機の患者さんと夜中お話しして、翌朝にも連絡した際に、容態が安定されているとホッとするそうです。感染が拡大すると、24時間、休みなく、輪番で対応していると伺いました。数少ない職員の皆さまが、医療機関と連携を取りながら、ぎりぎりの対応をしています。オミクロン株は、これまでのデルタ株などとは大きく異なり、感染力が圧倒的です。これまでの感染症2類相当として対応するには、保健所機能が追いつきません。感染力や重篤化する割合などを考慮しながら、感染症法での扱い区分(コロナウイルス感染症の新規区分も含めて)を検討することも課題と考えます。
今回、日本で、ワクチンの独自開発ができなかったことは、我が国のあり方そのものを問う課題でもあります。「政治は経済力によって政策の自由度が決まり、経済はその国が持っている科学技術の創造力を超えては発展しない」と考えています。時間があると国の研究所を訪問して、一線の研究者から研究テーマを聞き続けています。「以前は工学部で優秀な学生が民間企業に就職することは珍しくなかったが、今は理学部でも研究者として嘱望されても民間に行ってしまう」と、研究所所長から数年前に伺いました。日本の「科学技術の創造力」が弱くなっています。半導体の需給が逼迫しているので、我が国の半導体製造装置について調べてみると驚きでした。てっきり、ニコンやキャノンの製造装置が世界で一番微細な基盤をシリコンウエハーに焼き付けられると考えていましたが、オランダのASML社に抜かれていました。この技術は半導体製造技術の中核です。国立天文台を訪れ、研究責任者から「科学技術強化法案」(法案提出者として参議院で答弁)が成立して任期付き研究者の雇用期間が伸びたことで、研究成果が認められて常勤の研究職に転換できる方が出てきて、研究者の励みになっていると伺いました。また、量子暗号研究の一人者である情報通信研究機構の研究者は、研究者は安定した生活と自由な研究環境で力を発揮できるとおっしゃっています。経済力の基盤である日本の科学技術を最先端にするには、今後多くの方々の理解と応援が必要です。2000年代に雇用法制を緩和して非正規雇用を常態化したことが、企業が人材を育てることを弱め、研究開発分野での人材の流出を招いたのではないでしょうか。渋沢栄一は日本資本主義の父と言われています。2021年代を通して、人を育てる経営を確立し、安心して研究できる環境を整え、人の力を引き出す日本経済にすることが求められています。
【3】コロナ禍で見えてきた「日本社会の課題」と現政権に望むこと。
これまで、すべての機能を東京に集中することで、電力などエネルギーが効率的に供給され、人を介した情報のやり取りもスムーズに行われています。しかし、今回の新型コロナウイルス感染症と、首都直下地震のリスクの高まりを考えれば、効率を追い求めることが、実は危険が大きいことが明らかになりました。我が国は、エネルギーと食料を自給できないことが、国の政策の自由度を制約してきました。つまり、原材料を輸入して、製品化して付加価値をつけて輸出することで、エネルギーと食料を輸入するモデルを選択する以外の方法がなかったのです。しかし、テクノロジーの進歩で、エネルギーは、太陽光、風力や水力発電で発電量の17%(2020年上半期では23.1%)を賄えるようになりました。食料も、人口減少を背景に、今後、消費量が減って行きます。例えば、飼料米はたわわに実ります。人が食せる飼料米を地元の農家から分けてもらって食べたことがありますが、新米でもあって美味しく頂いたことを思い出します。米穀中心の食生活に変えて行けば、国民を養うだけの最低限の農地は、今のところ確保されています。場所に縛られない働き方であるテレワークで勤務地の分散化を進め、エネルギーと食料の地産地消を広めることで、海外動向に左右されず、安全に余裕を持って暮らせる国造りを目指す必要があります。
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