農政:今こそ 食料自給「国消 国産」 いかそう 人と大地
【今こそ食料自給・国消国産】離島の維持に危機 過去の経験活かした支援を(2)JA沖縄中央会・普天間朝重会長2022年10月6日
厳しい状況続けば離島の維持が困難に
もうひとつ本県の特殊性として離島問題がある。基幹作物であるさとうきびの8割、肉用牛の7割が離島であるが、さとうきびと肉用牛で厳しい状況が続けば離島の維持が困難となり、国家安全保障上も憂慮される事態になりかねない。沖縄県における中国との尖閣諸島問題、島根県における韓国との竹島問題、北海道におけるロシアとの北方4島問題など、国境をめぐる国際紛争はそのほとんどが離島に関わっている。
JAおきなわではほとんどの離島にライフライン店舗として支店を構えており、金融・共済事業のみならず購買事業として生活物資の供給も行っている。製糖工場や家畜市場、ライスセンターも運営しており、全力で離島を支えているが、離島が疲弊すれば支店を含めた施設の維持・運営が困難になる。国家安全保障の問題を含め離島対策は急務であり、そのための法整備や制度の拡充は待ったなしだ。
農業予算の大幅削減に農家の怒りが沸騰
だが近年、本県の予算は削減され続けており、農業予算もしかりである。特に農家の命綱でもある本土市場への出荷に係る「沖縄県農林水産物流通不利性解消事業」(運賃助成)の予算が大幅削減されたことに対して「予算を減らしている場合ではないだろう」と農家の怒りが沸騰している。肥料や飼料の高騰対策は国も検討しているが、そこには様々な条件が加えられている。例えば、肥料高騰対策については、化学肥料を1~2割削減する農家を対象としており、飼料高騰対策についても、1日分の飼料を複数回に分けて与え、食べ残しを減らすなどのコスト削減や飼料自給率向上に取り組む農家を対象としている。「みどりの食料システム戦略」を推進する国の立場は理解するが、それはあくまで長期戦略であり、緊急対策(農家が離農を決断する前)の手法としては適切とはいえないだろう。化学肥料を1~2割削減する手法として堆肥の利用を呼び掛けているが、堆肥センターが未整備の本県では厳しい。飼料自給率の向上といっても、本県の米の生産量はわずかでありとても飼料用米の生産はできない。こうした実態を踏まえて、とりあえず条件をつけずに思い切った予算措置を講ずるべきだ。
過去の経験活かした確実な支援実行を
2007~08年、世界的な気象条件悪化による不作で食料輸出規制の動きが顕著になり、穀物価格が高騰したとき政府は様々な対策を講じたが、当初設定した予算を消化することができなかったという。「手続きが煩雑すぎて、農家が支援策に対応できなかった」と反省しているようだが、そうであれば過去の経験を活かして今度こそ支援を確実に実行すべきだ。お金は肥料のようなもの。ちゃんと蒔(ま)かないと効果は出ない。
政府は現在、「食料・農業・農村基本法」の抜本見直しに着手しており、最終的に危機対応やコスト上昇分の農産物価格への転嫁などの法定化ができれば、今回の食料危機は考えようによっては増産のきっかけになるかもしれない。神は一つのドアを閉めても、千のドアを開けているものだ。
危機に面して前進を選択する「国消国産」に意味
危機に面したとき、人の行動には、①退く、②立ち止まる、③前に進む、の3パターンがある。「退く」は論外。停止は退歩を意味する。なら前に進むしかない。JAグループでは、10月16日を「国消国産の日」に設定した。食料自給率向上をアピールするプロモーションを全国的に展開するものであるが、危機に面して前進することを選択したことに意味がある。農家においてもぜひ勇気を振り絞って前に進んでほしい。3月の風と4月のにわか雨とが5月の花をもたらす。「もう終わりだ」と思うのも、「さあ始まりだ」と思うのも、どちらも自分なのだ。
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