農政:今こそ 食料自給「国消 国産」 いかそう 人と大地
【今こそ食料自給・国消国産】多様な作目、労力でリスク回避 地域農業の核に 北海道蘭越町・ファームトピア(2)2022年10月14日
多様な作目、労力でリスク回避 地域農業の核に 北海道蘭越町・ファームトピア(1)から続く
ソバ400ha、製粉も
栽培品目のなかで、ソバはもっとも多く、作付面積は全国でもトップクラスの400㌶に近い。農薬を使わず栽培したソバを自社内にあるそば工房の石臼で挽(ひ)き、製麺会社に委託し、乾麺にして全国に販売する。販売は問屋を通さず、口コミで広め、道内はもとより、西は島根県まで全国のそば屋に直接供給する。
ファームトピアのある道央地域は、同じ地域でも、札幌市のある石狩平野などと異なり、必ずしも土地条件に恵まれていない。ファームトピアの500haの農地の多くは、中山間地にあり、およそ1000カ所に分散している。その範囲は羊蹄山を臨むところから、日本海が見えるところまでおよび、その間の距離は100キロを超し、行政区では4町にわたる。
高速道路で片道2時間かかるところもあり、その場合は、コストを考え、農業委員会などと相談し、可能な限り、まとめて引き受けるようにしている。 蘭越町などでは、国が農地中間管理機構(農地バンク)をつくって農地の受委託を促す前から流動化は進んでおり、主に牧草地などの生産性の低い条件の悪いところが多い。これが90%を超す高い流動化率の背景にある。現在でも同町で農地バンクによる流動化はほとんどない。
荒廃農地の増加を防ぐため、ファームトピアのような大規模経営体は、行政から耕作放棄地の利用を頼まれることもある。条件の悪い農地は借地料が安い。ファームトピアはこれを逆手にとり、技術と経営力で生産性を高め、面積当たりの収入を増やすというのが経営戦略だ。
一方、条件の悪い借地を利用・管理して、貸し手の信頼を得るこことで、新たな貸し手の紹介に結び付く。4町にまたがる1000か所のほ場はこうして広がった。結果としてこれが農地の荒廃を防ぎ、地域の農業への貢献につながっている。
一方、大規模の法人経営を維持するには、労働力の安定確保は欠かせない。ファームトピアでは現在、臨時も含めた職員20人ほどのほか、20人余りの、さまざまな働き手を雇っている。海外からはインターンシップやワーキングホリデイを積極的に受け入れ、ベトナム、台湾、チリ、アルゼンチン、イギリスなど、国籍もさまざま。年齢も幅広く80代、60代の地元のアルバイトもいる。家族で入居できる社宅や社員寮も備え、日本にいながら異文化交流もできる。
大型の収穫機を運転し、ソバの収穫をする岸本畔奈さん
「農業はおもしろく」
多様な雇用形態、働き方は求人ネットでも話題になっており、離職や転職で来る人も多く、新規就農を目指す若者もいる。走出さんは、「農業は外から見て、面白いと思われなければ人はこない。そのためにはみんなと同じことをするのでなく、創意・工夫で個性的な農業がこれから求められる」という。
ファームトピアでは、今年と来年、それぞれ30ha、経営面積を拡大する。依然、耕作放棄地の増加は続いているが、新しい動きもみられる。ファームトピアのある蘭越町三笠地区には、同ファームのほか、50~200ha規模の経営体が5、6カ所ある。ファームトピアに刺激されたと考えられる。
「いま残っているのは後継者もおり、一定の力を持っている農家が多い。このような経営がこれから地域農業の中心になるだろう。高齢化が進み、人口が減る中で地方に人が住まないと地域の生活が維持できなくなるが、大規模経営は雇用の機会もつくっている。中小規模を含めた多様な農業があってもいいが、このような農家にもう少し国の支援が欲しい」と、特に大型機械を使用した経営の効率化に必要なほ場整備への支援を求める。
「毎日が新鮮で楽しい」
帯広畜産大学を卒業して、入社4年目の岸本畔奈さんは「もともと土に触ることが好きでした。それに私たちにとって大事な食料をつくる人が減っているのをみて、なんとかしなくてはと考えていましたので、実地で学べると思ってこの道を選びました。同じオフィスで働くより、ここでの仕事は、場所や内容が変わり、毎日が新鮮で楽しいです。将来は発展途上国で農業の仕事がしたいです」と意欲を示している。
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