農政:今こそ 食料自給「国消 国産」 いかそう 人と大地
【今こそ食料自給・国消国産】気象の農産物価格への影響 無関心層に明示を(2)三重大学大学院・立花義裕教授2022年10月19日
対岸の火事でない偏西風蛇行もたらす北極温暖化
偏西風の蛇行は川の蛇行と似ている。急流の川はまっすぐ流れ、ゆっくりと流れる川は蛇行しがちであることは、平野部を流れる石狩川の大蛇行の例など、地図を見ても自明であろう。偏西風の蛇行もこれと同じである。偏西風の風速が遅くなれば蛇行しやすくなるのだ。実は近年は偏西風の風速は遅くなっている。偏西風が遅くなっている理由の一つが北極温暖化増幅である。地球温暖化は低緯度よりも北極域で顕著であり北極の氷がどんどん溶けていることはニュースなどを通じてご存じの方も多いであろう。これを北極温暖化増幅と呼ぶ。北極が極端に温暖化することで、低緯度と高緯度の温度差が小さくなるのである。
偏西風は北極と低緯度の間の温度差が大きいほど早く、温度差が小さいと遅い。これは家の外と中の温度差が大きいほど、窓を開けると外から風が強く入ってくる経験からも理解できるであろう。偏西風の場合、風の向きが西から東へ向かうのは、東へ回る地球の自転の影響である。つまり、北極温暖化が日本を始めとした世界各地の異常気象をもたらすことを意味する。北極温暖化は、対岸の火事では無いのだ。
ここまでは猛暑の原因の話をしてきたが、近年は豪雨が頻発している。2018年の西日本豪雨、2021年の東京オリンピック終了直後の8月の豪雨。今年8月上旬の東北の豪雨など、毎年のように災害級の豪雨が頻発している。しかもその豪雨の降り方が昔の豪雨と違ってきていることにお気づきであろうか?
海面水温の温暖化による広域長期型の豪雨
最近の豪雨は、短期集中型では無く広域長期型と変わってきた。広い範囲でより長期間降るのが最近の豪雨の特徴である。昔は狭い範囲に短時間にドカッと降っていたので、被害地域も極限られた地域限定型であった。近年の豪雨は、長く降り続きかつ、日本の広い範囲で降る傾向にある。当然被害地域は日本の広い範囲に及び、農業被害も同様に広範囲となる。
近年広域で豪雨が頻発する理由の鍵の一つが海面水温の温暖化である。地球温暖化といえば、気温の温暖化ばかり目が行きそうであるが、海も温暖化している。世界の海のなかで最も温暖化の激しい海域が日本周辺である。世界平均の水温上昇に比べ日本周辺の海面水温は約2倍の速度で温暖化している。これは暖かい黒潮が世界中の海流の中で最も流量が多い海流であることが理由である。
黒潮の起源は熱帯で、熱帯の熱を黒潮が運んでいるのである。海の温暖化が豪雨をもたらす理由は難しくない。それを次に説明しよう。
上空で水蒸気が凝結して雨になる。雨が増えるためには上空の水蒸気量が増えなければならない。では水蒸気はどこから来るのであろう? それは海からであることは自明であろう。鍵は、海からの水蒸気蒸発である。海水温が上がっているので、海からの蒸発量が増えているのだ。熱いお風呂や温泉から湯気がたくさん出ている風景からもそれは納得できよう。つまり、日本周辺の海水温が上がっていることが、水蒸気量の増加をもたらし、そしてそれが日本各地の雨量の増加をもたらしているのである。
ここまで、猛暑の原因と豪雨の原因を個別に説明してきたが、この二つは連鎖することも重要である。偏西風蛇行に伴い猛暑が起こると、陸だけで無く海も暖める。猛暑によって暖められた海から水蒸気が大量に蒸発し、豪雨をさらに強めるのである。
また、偏西風の北に向かって蛇行する部分では、水蒸気を大量に含んだ空気が日本にもたらされる。しかも蛇行は長続きするので雨は長期化する。これら偏西風蛇行と海の温暖化の二つの作用によって豪雨が長期且つ広域に及ぶのである。
日本人の大多数占める無関心層 何らかの仕掛けを
以上からも明らかなように、このまま放置すれば異常気象が頻発する状態が「普通の気候」となってしまうであろう。温暖化をなんとしても止めねばならない。そのためには、地球温暖化や異常気象への無関心層の人数を減らすことが重要だと考える。
私の肌感覚では、無関心層は未だに日本の大多数を占めていると感じる。無関心層を引きつけるためには、危機感を煽っても無駄であろう。関心を引くにはどうすればいいのか? 人は物価に敏感である。農産物の価格が気象と大きく関係することは農業関係者の中では自明である。
気象に無関心の消費者に向けて、気象と農産物の価格の関係が分かるような、何らかの仕掛けがあれば、気象に関心を持つ市民が自動的に増えるのではないだろうか? スーパーの農産物の特売ちらしに、気温連動型の特価を設けるなども一計か。そうすれば買い物客は毎日気温をチェックするようになるであろう。
立花義裕(たちばな・よしひろ)
北海道道大学 大学院理学研究科・地球物理学専攻 博士後期課程 修了。 博士(理学)。 その後、北海道大学低温科学研究所・ワシントン大学・海洋研究開発機構等を経て、2008年より現職。
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