農政:今こそ 食料自給「国消 国産」 いかそう 人と大地
【今こそ食料自給・国消国産】お茶の概念変えおいしい飲み方追求 地域貢献も ハラダ製茶・原田宗一郎社長(1)2022年10月24日
日本の伝統文化を象徴するお茶―。急須で漉(こ)して飲む人は少なくなり、ペットボトル入りの冷茶が主流になった。同時にコーヒーやジュースなど他の飲料に押され、消費も頭打ち状態にある。静岡県のハラダ製茶(株)は、従来のお茶の概念を変え、本当に美味しいお茶の飲み方、茶文化の創造に挑戦する。同社の原田宗一郎社長に聞いた。(聞き手は本紙客員編集委員・小高根利明氏)
ハラダ製茶・原田宗一郎社長
――農協新聞の取材で、地方で頑張っている元気な企業をいくつか見ていますが、全国に製茶工場を展開し、海外にもマーケットを広げるハラダ製茶は、地方の企業の枠に当てはまらないと感じています。貴社はお茶を中心に自社農場を経営して農地を守るとともに、地域農業の振興にも一役買っています。どのようなお考えで事業を展開しているか、聞かせていただきたい。まずは御社の沿革から伺います。
私はハラダ製茶の4代目です。創業は大正6(1917)年。初代は〝半農半商〟で、昭和23(1948)年、2代目の時に株式会社を設立しました。最初はミカンやシイタケなども販売していましたが、次第に茶に重点を移し、その後、JAとの取引が始まり、葬儀事業にもとりかかりました。いまグループ会社も含め、全国で年間およそ7000件の葬儀があり、葬儀会社としては全国でベスト30に入ると思います。「畑から葬儀まで」が、わが社のモットーです。
海外にも進出
一般にいわれる企業の農業参入ではなく、もともと農業ですので、今も自社農園で農業を行っています。昭和42(1967)年に静岡県経済連と海苔の山本山との3者による屋久島農園をつくりました。アメリカに進出した山本山が、茶の原料を求めてブラジルに農園をつくることになり、高温多湿で共通する屋久島にテスト農園を設けたのです。
茶の価格が下がり、栽培する人が少なくなる中で、これから先の原料確保に不安があったためです。以前から静岡県の人が屋久島に入植して茶を栽培していたのですが、高齢になって維持できなくなった茶園20haくらいを引き受けました。茶以外もあり、全体では38haほどの農園です。
現在、屋久島農園と県内の2カ所を合わせて3カ所の自社農園があります。お茶85ha、水稲8ha、それにミカン2haあまりになりますが、ダウントレンドの産業に乗り込むのは大変だと、つくづく感じています。特に人を雇って運営する法人経営は、人手の確保が難しくなっています。
いま、儲かっているのはシャインマスカットやマンゴーなど、限られたし好品くらいで、農業の根幹である米や野菜は本当に儲かりません。そこを何とか国で補助してもらいたいものですが、補助金は農機メーカーや土建業に渡り、なかなか農家には届かないのが実情で、生産者に直接届く援助の仕組みが必要だと感じています。
お茶は反(10a)当たり収入が20万円ほどです。うち経費を8万円として12万円、4haの経営で480万円余り。一家総出でこれでは生活できません。少なくとも反収30万円ないと、後継者が育ちません。うちが契約している原料の茶葉を納める会員農家の平均年齢は70歳を超えており、あと10年も持たないでしょう。新しい人も入らず、何らかの対策が早急に求められます。
耕作放棄地を引き受け
――そのため、御社は自社農園を持ち、原料の茶葉の確保に力を入れておられるのだと思いますが、栽培から始めるお茶屋さんは珍しいと思います。農園では耕作放棄地を引き受けるなど、地域の農業と農地を守るなど、地方の企業として腰の据わった事業を展開しているという印象を受けます。
栽培から加工、販売までの一貫生産や、全国の契約農園でのGAPの導入などが、対外的イメージを高めるアドバンテージになっていると思います。自社農園では、茶のほかミカンやレタスも作っています。なかなか軌道にのせるのは難しいのですが、地域の農家と一緒に、いかにして商売に乗せるか考えています。
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