農政:今こそ 食料自給「国消 国産」 いかそう 人と大地
【今こそ食料自給・国消国産】お茶の概念変えおいしい飲み方追求 地域貢献も ハラダ製茶・原田宗一郎社長(2)2022年10月24日
お茶の概念変えおいしい飲み方追求 地域貢献も ハラダ製茶・原田宗一郎社長(1)から続く
〝黒子〟に撤する
――御社は多くの飲料メーカーに原料の茶葉を供給しているそうですが、そのことはあまり知られていません。
うちは茶の生産と加工だけでなく、いわば茶類製造業です。取引先は、お茶に関係する飲料、外食など幅広く、現在取引先は200社くらいあります。ギフト事業で農協との取引もあり、飲料メーカーとの契約や販売代理業務など、形態はさまざまです。レストランや寿司屋向けのノリやガリなども扱っています。
PB(プライベートブランド)なので、社名はあまり知られていませんが、グループ全体で約400億円近い売り上げがあります。伊藤園に次いで全国で2位につけています。もともと黒子として〝影〟で育ってきた会社なので、「影に撤する」です。会社のイメージカラーも黒で、もともと水色だった社員の制服も黒に変えました。
――ハラダ製茶の経営哲学ですね。一方、海外市場の開拓にも力をいれていますが、展望はどうですか。
2009(平成21)年、ウーロン茶の輸入を始め、同時にシンガポール、13年にブルネイ、インドネシア、マレーシア、香港などへの輸出も行いました。現在10か国ほどに輸出しています。シンガポールでは立ち上げに日本から2人送り込んで、見通しが立ったので、今年撤退します。
「お茶でも」ではなく「お茶を」でコンビニに
――ペットボトルの冷茶がここまで普及するとは想像できませんでした。これからのお茶の消費を伸ばすには、どうしたらいいでしょうか。
そもそもお茶は急須で飲むものと考えるのが間違いです。よいお茶ほどぬるま湯で入れろといいます。高温だと苦味の素であるカテニンやカフェインが出るが、旨味の素となるテアニンは低温の方がいいのです。
ぬるま湯に入れたお茶を、麦茶のようにポットに入れ、飲むときは茶こしで茶滓を除き、温かい茶が欲しい場合はレンジで温めて飲む。レストランでも十分使えるのではないでしょうか。「レンチン深蒸し茶」として提案したいと思います。
飲食店を利用するとき、コーヒーやビールは指名注文ですが、お茶は水分の補給であり、「食事のついで」あるいは「お茶でも飲もうか」という選択肢の一つです。「お茶でも」ではなく「お茶を」といってコンビニに入るようにしたいと思っています。
お茶は、産地がどこか、だれが作ったかなどが、よく問題にされますが、それはお茶を飲んでいる人の内輪の話であって、飲料という限られたマーケットで、われわれがターゲットにするのはマスとしてのコーヒーやビールを飲む人であるべきだと思います。
また、急須にこだわるのはいいのですが、生活スタイルの変化をみて考えるべきです。いまキッチンで食品の残渣を集める生ごみのネットが浅くなっており、急須の茶滓を入れたら一杯になります。急須を使えというなら、台所ゴミの捨て方、キッチンの改良まで提案しないと受け入れられないのではないでしょうか。
――緑茶の魅力、日本茶のおいしさに気づかない人が多い。それがマスの消費者であり、これをターゲットにするという着想は核心をついています。
「国産を食べよう」と言いながら、JAに行っても出てくるのはコーヒー。おもてなしでなく茶はおまけです。「お茶も出さない」あるいは「日常茶飯事」というように、お茶はあって当たり前で、日常化しすぎています。これを直さなくてはなりません。まだ結果は出ていませんが、新しい茶の楽しみ方を東京や静岡でいろいろ試みています。
――ぜひ挑戦していただきたいですね。お茶の話を聞いていて元気を与えられました。本日はありがとうございました
【インタビューを終えて】
静岡の歴史ある製茶会社の社長さんならば年配の方に違いないと勝手にイメージしていたのですが、お目にかかってみるとまだ50歳台の気取らぬざっくばらんな方でした。エネルギッシュなアイデアマンでこれまでにも、さまざまなチャレンジをしてこられ、時には失敗もし、億の金を溶かしてしまい、社内の批判にさらされた等のエピソードも語っていただきました。お茶のおいしさを多くの人に気づいてもらいたいとの熱い思いが伝わってきて、時の経つのも忘れて原田社長の話に引き込まれていました。
(小高根)
ハラダ製茶株式会社
大正6(1917)年創業。昭和23(1948)年株式会社設立。農園での栽培から工場での製茶、小売店での販売まで幅広く手掛ける。農園は拠点の島田市の2カ所と鹿児島県の屋久島にあり、茶園から消費地までをダイレクトに結ぶ起点として位置付けている。グループ全体の従業員は450人で年商約400億円。
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