【クローズアップ:大豆雑草防除体系確立】全作期カバーの防除体系確立――イネ科専用のワンサイドP乳剤販売で BASFジャパン(株)アグロソリューション事業部営業部 古庄康一部長に聞く2021年6月3日
食料資源として大豆の重要性が見直されているが、栽培上のネックの一つに雑草の防除がある。総合化学会社のBASFジャパンは、新たにイネ科雑草専用の「ワンサイドP乳剤」の販売を開始し、ダイズの全作期を自社製品でカバーする防除体系を確立した。同社アグロソリューション事業部の古庄康一営業部部長は「大豆向け除草剤のポートフォリオを強化できた。地域やほ場の条件に応じた適切な防除の提案ができる」と自信を示す。同部長に聞いた。
BASFジャパン(株)アグロソリューション事業部営業部 古庄康一部長
高い選択性と耐雨性
――「ワンサイドP」はどのような特長がありますか。
ワンサイドPは、今年の2月、石原バイオサイエンス(株)と販売について合意し、販売を始めたイネ科の雑草に高い除草効果のある選択性の高い、茎葉処理型の除草剤です。一年生・多年性を問わず、イネ科の雑草に幅広い効果があります。
主な特長は、(1)作物選択性に優れ、広葉作物にほとんど影響を与えない、(2)雑草茎葉部から速やかに植物に吸収され、耐雨性に優れている、(3)有効成分が植物体内を速やかに移行し、根まで枯らす、(4)一年生イネ科雑草だけでなく、ススキ、チガヤなどの大型イネ科の雑草、シバムギ、キシュウスズメノヒエなどの多年性イネ科雑草など幅広い雑草に効果がある――などです。
特に、短時間に吸収されるため散布液が乾いた後の降雨による影響がなく、散布の翌日に中耕しても効果が持続するので使い易い。また高い選択性から豆類、イモ類、野菜などの広葉作物の生育期に、雑草茎葉散布することで、イネ科雑草のみを防除できるなどの利点があります。さらにワンサイドP乳剤は少水量散布の登録を取得しています。従来の通常水量散布に比べ、同じ液量の散布で2~4倍の面積に散布できます。現場で、高い作業効率が期待できます。
BASFジャパンは大豆のほか、さまざまな作物を対象に除草剤を提供しています。なかでも大豆は、作期に応じて、「バスタ液剤」「プロールプラス乳剤」「フィールドスターP乳剤」「パワーガイザー液剤」「BASF大豆バサグラン液剤」などがあります。これにワンサイドP乳剤が加わることで、播種期から生育期まで大豆作期の全生育ステージを通じて必要な除草剤を自社製品で提供する体制が整ったことになり、より適切な提案ができるようになりました。
地域に合わせて提案
――一口で大豆といっても一様にはいかず、国内では気候やほ場の状態など、さまざまな条件下で栽培されています。それにはどのように対応していますか。
そこが除草剤を選ぶポイントです。大豆栽培は北海道のような畑作もあれば、水田転作もあります。また気候風土によって、防除の対象となる雑草は種類も生育状況も異なります。それぞれの条件にあった防除体系が求められます。また経営規模、大豆の用途によって、省力化か、効率化か、生産者によって経営上の目指すところの違いがあります。
大豆生産の生産費に占める農薬の比率は15%ほどです。しかし、農薬は、作業に要する手間や収量、および品質に大きな影響を与え、その選択は経営にとっても重要です。これまで弊社は広葉雑草の防除に必要な除草剤のポートフォリオは十分でしたが、自社の製品で発生後のイネ科雑草に適した除草剤はラインアップされていませんでした。ワンサイドPで大豆の除草を自社の製品でカバーでき、生産者の状況に応じた最適な提案ができるようになったと考えています。
弊社はこの2、3年大豆の作物へのアプローチに力を入れています。それまでは薬剤そのものを単品で扱っていましたが、生産者が直面している経営上の問題に総合的に対応するため、現在は各生産者に合った除草剤のソリューションの提供を行っています。
そのためには大豆栽培農家とのコミュニケーションが必要と考えています。弊社では「Soy Channel(ソイチャンネル)」というホームページで、生産者の体験談を公開しています。ワンサイドPは、発売して日が浅いので、まだ進んでいませんが、自社の他の大豆除草剤では、実際使ってもらって、その成果を共有しています。
また、今年の4月からAIを活用した栽培管理支援システム「xarvio FIELD MANAGER(ザルビオ フィールドマネージャー)」のサービスを水稲と大豆を対象に始めました。これはAIが圃場ごとに生育ステージや病害発生を予測し、作業適期を知らせるなど多様な機能を持つサービスで、JA全農の営農管理システム「Z-GIS」とも連携しています。これも、除草剤のポートフォリオとともに生産者の生産性向上に貢献するソリューションになります。
国産向上のチャンス
――貴社は大豆に力を入れていますが、大豆への事業戦略を聞かせてください。
国産大豆の生産量は20万トン前後で、自給率は6%に過ぎません。私はいつも朝食にみそ汁と納豆を食べています。粒が大きく、味がよく、アミノ酸を多く含む国産の大豆は、健康によい食品です。
しかし国内では栽培面積が少なく、収量も伸び悩んでいます。国は「300A技術」の普及をすすめ、10アール300キロの収量をめざすとしていますが、現状は、その半分にとどまっています。ユーザーの生産法人からは、作り手がいないという声が聞かれます。そうすると限られた生産者に頼ることになります。その経営を維持するためには生産コストを抑え、収量をあげる必要があります。その意味で、大豆の環境は厳しいものの、国産大豆の需要はあるのですから、チャンスはあると考えています。
世界的な大豆の需要は伸びています。特に、輸入量の多い中国と米国の対立で大豆は戦略作物の一つになっています。幸い戦争もなく、日本は大豆を輸入できていますが、ある程度国内自給は必要だと思います。そのためには一定の収量と、価格を確保する必要があります。国内で大豆をつくれる環境を整備しないと、農村の荒廃を防ぐこともできないでしょう。
意欲的生産者を支援
――貴社の「Soy Channel」をみると、熱心な大豆生産者が多く紹介されていますね。
中には地場産大豆の油揚げを復活させるために奮闘された生産者さんの事例があります。3haで「エンレイ」を栽培し、雑草、特にツユクサに悩まされていたが弊社の提案した「パワーガイザー液剤」「バスタ液剤」の体系処理を実践し、成果を挙げています。
このように大豆栽培を支援しながら、産地が元気になるような取り組みに貢献できるよう、弊社としても引き続き取り組んでいきたいと思っています。
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