「水田雑草対策」と「水管理」でコスト削減効果も 北興化学工業2023年7月31日
北興化学工業株式会社が開発した水稲用除草剤「サキガケ楽粒(らくりゅう)」を昨年使用してその効果を実証した茨城県の生産法人「株式会社ファームサンアイ」の一鍬田卓代表取締役から水田の雑草対策について相談を受け、ほ場で調査を実施した。
株式会社ファームサンアイ 代表取締役 一鍬田卓さん(左)、
2023年度の近隣圃場の畦畔から侵入する「ナガエツルノゲイトウ」
茨城県の県南地域の「株式会社ファームサンアイ」は主に水稲乾田直播に取り組んでいるほか、移植水稲を栽培する大規模生産法人で、水田雑草の対策に頭を悩ませている。昨年は、ドローン(MG-1)を活用した「サキガケ楽粒」散布により水田雑草対策の省力化を実証することができた。
一年を通じて、特に乾田直播の雑草対策には手を焼いている。残草はノビエ、雑草イネ、イボクサ、ホタルイ、カヤツリグサ、クサネムなどがあり、最近ではナガエツルノゲイトウの侵入も確認している。ほ場で雑草を確認するとハイクリアランス・ブームスプレーヤーでバサグラン液剤やクリンチャーEWなどを散布して対応していたが、資材高騰で思ったよりコストが掛かっていることが分かった。燃料代や人件費なども考えると経営にも影響を与えかねない。そこで、初期剤や楽粒を含む一発剤で後期の散布剤を最小限にするために北興化学工業のアドバイスを受けながら展示ほを実施した。
一鍬田さんは昨年、乾田直播でノビエ、雑草イネ等が多発したほ場を選定した。耕種的防除として、今年はあきたこまちの移植栽培に切替えて、水稲除草剤の体系処理を試みた。
面積は約40アールで、田植えは4月22日に行った。50㎝×50cmの無処理区枠を4つ入れて、初期剤として本年登録を取得したスタメンフロアブルを4月24日に散布し、ほ場の中央を波板で仕切り、5月8日には左側にノックアウト楽粒、右側にサキガケ楽粒を散布した。薬剤の散布時の水深は5㎝以上を保ち、散布後は水管理を徹底した。除草剤の効果を保つために田面を露出させないことは理解しているが、管理するほ場数が多くなると、水管理の徹底が本当に難しいと一鍬田さんは話す。
【圃場のイメージ】
2023年4月24日散布 スタメンフロアブル(左)、2023年5月8日 左側:ノックアウト楽粒 右側:サキガケ楽粒
北興化学工業の担当者と一緒に調査を行ったところ、無処理区枠に発生した各種雑草に驚かされた。乾田直播や移植水稲のほ場に無処理区枠を入れることはなく、作業として、何気なく除草剤を散布して、効くか効かないかで後期の散布剤を使用していた。水管理と適材適所の初期剤および一発剤を散布することで、効果が安定することを再認識した。一鍬田さんはこの結果を従業員と共有し、見せることが大切と話した。
2023年6月15日の雑草調査結果(左)、無処理区枠 4個の雑草の合計(1平方m)
ノビエ、カヤツリグサ、コナギ、ホタルイ、アゼナなど生重量(1平方m)で476.5gとなり、除草剤を散布しないと、約40アールで4,000平方mに換算すると、雑草だけで約2トン発生することになる。ほ場にこれほどの雑草が発生し、種子が存在することに再度驚かされたという。こうしたことを考えると乾田直播と移植水稲とのローテーションの大切さも理解できた。
展示ほ場では7月11日にあきたこまちも出穂し始めた。一鋤田さんは、雑草の後発生がないため、後期剤を使用しなくて済んだと笑顔で話し、水管理と除草剤の適材適所の使用でコスト削減に繋がることを学べたことも楽しかったと述べた。
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