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【アグリビジネスインタビュー】食と農の基盤強化を共に FМCケミカルズ 平井康弘社長2023年11月22日

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食料安全保障の強化や持続可能な農業、農村をいかに実現するかが課題となるなか、来年は25年ぶりに基本法の見直しが行われる。農政の転換期を迎え、農薬メーカーとしてどう事業を展開していくか。今回はFМCケミカルズの平井康弘社長に聞いた。

飢えの歴史に危機感

FМCケミカルズ社長 平井康弘氏FМCケミカルズ社長 平井康弘氏

――最初に、改めてFMCについて教えてください。

創業は1883年ですから140年前です。もともとは農業機械メーカーとして出発し、その後、経営を多角化し、最近はアグリビジネス専門の会社に回帰して世界約100か国で事業展開しています。

FМCはこの10年、目をみはる進化を遂げており、様々なパートナーとの提携、買収を重ねてきました。なかでも2017年に旧デュポン社の主要な農薬事業と研究開発部門を取得したことは大変大きく、これによってFМCはアグリサイエンス企業として確固たる地位を築いたのではないかと思います。

米国本社では非常に先見性と決断力を持ったCEOが経営をしています。たとえば昨年2月にウクライナで有事が起きた際、4月には早々にロシアからの撤退を決めました。おそらく業界で一番早かったと思います。反対の声や株主の圧力も相当あって、判断に迷ったと聞いていますが、素早く撤退できたのは決断力と先見性があってこそで、それも弊社の強みと考えています。

――さて、日本の食料・農業をめぐる状況や業界の課題はどうお考えですか。

今、誰もがこの国の食の危機、農業の危機をじわりじわりと感じ始めているのではないでしょうか。日本の急速な人口減少と高齢化で、農村では集落機能が維持できるのかという問題が深刻です。地方社会が今後成り立っていくのかという、この国の根幹の危機が見え始めています。

衝撃的なのは、この国の人口のうち65歳以上の割合が2050年には4割になると予測されていることです。子どもの人口もあわせると半分を超えます。半分以上の人たちを半分以下の人たちでどう養っていくのか、割合だけでなく、絶対数も足りない、「超人手不足時代」の到来です。そのなかで農業も含めた1次産業の生産基盤をどう維持していくのか、日本は今、大きな転換期にあり構造的な変革が必要なのは誰もが認めるところでしょう。

輸入に頼ればいいではないかという論調の方もおられますが、今回のような有事、あるいはコロナ禍のような問題が発生した場合、輸出規制をした国はたくさんありました。これから不確実な時代に入っていくときに、本当に自分たちの食料を外国に頼っていいのかと個人的には思っています。

一方、農薬業界の課題としてはグローバルハーモナイゼーション、規制の合理化、食の安全・安心など様々な対応すべき課題が増えており、農薬メーカーとして、より付加価値を出す活動を進めていく必要があると考えています。

――来年、25年ぶりに食料・農業・農村基本法が改正される見込みです。どのような基本法になることを期待しますか。

これまでの議論にある「食料安全保障の強化」、スマート農業に代表されるような技術による「生産性の向上」、グリーン化といった「持続可能な農業」の実現、輸出促進による農業の「成長産業化」の四つのテーマは大変重たいです。

食料安保については日本だけでなく世界中のあらゆる国の政治的なアジェンダに戻ってきており、国際的な議論の場でも中心的な課題になりました。

38%の日本の自給率が、2050年には19%になるという試算もあると聞き、愕然としたことがあります。「食べ物があるのが当たり前」の時代を私たちは生きてきたわけですが、もう少し長い目で日本の歴史を見ると、「飢えとの闘い」がほとんどの歴史だったと思います。いずれまた元の時代に戻る可能性は十分にあり、この先自分たちの子どもや孫の世代が飢えないか、という危機感は国民的な課題として広く共有される時期にきているといってよいでしょう。

そのなかで議論されるべきは農産物の価格形成です。今は生産者がコスト上昇分を価格転嫁できていないですね。それでは持続可能な農業はできません。フランスのエガリム法も参考に法制化を検討されていると聞いていますが、生産者のためだけではなく、われわれ国民の持続的な食料確保の為にも、生産者が報われるような価格形成の仕組みづくりをぜひ検討して国策に組み込んでいただきたい。

輸出促進による農業の成長産業化については、農産物を「和食」とセットで輸出しようとされてきたのは本当に素晴らしいことだと思います。今から10年前に和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたのは大変な快挙でした。JAグループも関わっていると思いますが、これが推進力になって海外では和食レストランが加速度的に増えて今は19万店舗になったそうです。今では海外の知識人のなかでは和食を食べることが健康にいいというトレンドにもなっています。これによって日本の農産物の輸出が増えていけばいいですし、実際に農林水産物の輸出は1兆円を超えてきました。まだまだ伸びて欲しいです。

一方では国内の和食離れも課題だと思います。ヘルシーな料理だといいながら国内が和食中心ではなくなっているわけですが、味覚は遺伝しないそうですので、小さい時から和食の味、出汁、うまみの味などを覚えることが大切だと思います。そのためにも給食は米を中心にすることが大事で、聞くところによると全国の学校給食にかかる年間予算は5000億円だそうですが、それぐらいは政府が出してもいいのではないでしょうか。国内市場が縮小していくなかでいい投資でもあると思います。

いずれにしても、万機公論に決すべしで、みなさんが持っている知恵を集めて食と農業の現状と課題にあった力強い政策を打ち出していただければと願っています。

共生意識し活路開く

――今年5月に飼料用トウモコロシへの「プレバソンRフロアブル5」=注1=の適用拡大が実現しました。この意義についてはどうお考えですか。

この件は弊社としても少しでも国の食料安全保障に貢献できればという思いで、全農や生産者、パートナーのみなさんと一丸となって取り組んできました。みなさんのお力添えのおかげで防除シーズン前の緊急登録もでき、生産者のみなさんからも単収がぐっと上がったと聞き、大変励みになっています。

これからも大規模生産者への農地の集積は進むと思いますが、より大規模でも営農を続けられるよう、「規模の限界」を解決できるような、労働時間の少ない飼料用トウモロコシを含めた輪作体系を作ることは大変重要だと思います。弊社では日本農業の生産基盤の維持、食料安保の強化のお役に立てるよう、これからも新剤の開発、登録拡大に投資を続けていきます。

――みどりの食料システム戦略にはどう対応されますか。

環境に配慮した「持続可能な農業」にどう取り組むかは、「生産性の向上」と並んで弊社のなかでも重要な課題と位置づけています。今年の夏は本当に暑く生産者のみなさんも大変だったと思いますが、私たちも地球温暖化、気候変動の影響を肌身で感じています。

米国でも大きな問題になっており、気候変動がこのまま進むと2050年には農産物で7兆円の損失が出るというレポートも出ています。当然、日本の農業も他人事ではないと思います。

弊社では温室効果ガスの排出を「2035年」までにゼロにすると宣言しました。これは結構意欲的な年次目標だと思います。2035年というのはおそらくこの業界では初だと思いますし、米国企業としても初の宣言だったと聞いています。

それからみどりの食料システム戦略とも合致する方向性だと思いますが、弊社では「プラントへルス事業」にも力を入れています。具体的にはバイオロジカルの農薬や肥料、フェロモン、ペプチド技術などに積極的に投資を続けています。

日本でも植物の力を最大限に引き出す高活性腐植酸を配合した秀品サポート肥料として、世界的ベストセラーの「ストラクチャーⓇ」=注2=の販売を開始し、好評を得ています。本年4月には、第2弾の秀穫強化肥料「ギアアップⓇ」=注3=の販売も始め、「ストラクチャーⓇ」と合わせて、播種から収穫まで、植物のライフステージを丸ごとサポートできるようになりました。

効果の高い微生物農薬の開発にも力を入れて日本市場へも導入していきます。弊社の創薬能力は世界でもトップクラスと自負していますが、単に新しい原体を開発するのでなく、新しい作用機作の農薬を開発する能力に強みがあります。弊社には新しい農薬のパイプラインが40以上あり、そのうち新規の作用機作のものは30以上となります。

これらを通じて生産性向上、環境負荷低減、抵抗性対策に貢献し、みどりの食料システム戦略にも合う方向で日本でも開発を進めていきます。

弊社はこれまでも、世界で最も使用されている殺虫剤の有効成分の一つ、サイアジピルⓇ(シアントラニリプロール)やリナキシピルⓇ(クロラントラニリプロール)といったジアミド剤を通じて、パートナーのみなさんと力をあわせて省力化の技術を開発し、生産性向上に取り組んできました。具体的には地域の課題にあった水稲箱剤や、野菜苗に灌注や根回し水で処理できる殺虫剤「ベリマークⓇSC」の省力化技術などです。

これからもイノベーションを通じて少しでも日本の農業、社会に貢献できればと考えています。

――JAグループに期待することをお聞かせ下さい。

JAグループは日本の食と農の「砦(とりで)」だと私は考えています。都会に暮らす国民も含めて、今こそ、「ともに支え、ともに生きる」という「共生」を意識して食と農を守る時代になってきたのではないでしょうか。そういう意味では消費者も自分事として「何ができるか」という意識を持たなければなりませんし、JAグループのみなさんからは日本の食と農の現状についてもっと情報を共有していただきながら、ともに日本の農業の活路を開いていきたいと思います。道は必ずあると信じますし、弊社も微力ながらがんばりたいと思っています。

注1:野菜および畑作物に幅広い農薬登録を持つジアミド系殺虫剤で、独自の作用特性でチョウ目・ハエ目害虫の若齢から老齢幼虫まで齢期を問わず安定した高い効果を示す剤。 

注2:独自製法で高活性腐植酸を配合し根のすみずみまで根毛の発育を促進させる剤。初期生育の向上や秀品期間延長、収量向上が期待できる。

注3:独自製法で極小分子化。葉面吸収に最適化された高活性腐植酸AOAⓇを配合。葉内部の奥深くまで浸達し養分転換、転流を加速し、着花・着果・果実肥大の促進が期待でき、秀品の収量増加と長期どりで、収益の拡大を目指す剤。

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