【アグリビジネスインタビュー】農業の未来 技術力で拓く シンジェンタジャパン 小林久哉社長(2)2024年5月13日
先進的な技術を通じて、日本の農業の進化に貢献するシンジェンタジャパン。小林久哉社長に自社の方向や日本農業について聞いた。
【アグリビジネスインタビュー】農業の未来 技術力で拓く シンジェンタジャパン 小林久哉社長(1) より
シンジェンタジャパン 小林久哉社長
環境と生産性を両立
――具体的な事業としてリゾケアの実績、バイオスティミュラントの開発状況などと展望などをお聞かせ下さい。
リゾケアXLは今年も30府県以上で実証される予定です。導入した生産者からは、直播栽培の課題であった苗立ちの確保について「移植と変わらないね」といった評価をいただくほか、作期・労働力の分散にも繋がるという良い解決策を提供できていると思っています。 近年は大規模経営体が増え、100ha規模の生産者になると移植栽培ではおよそ1.5万枚の苗箱が必要になり、苗運びや洗浄は重労働です。リゾケアXLの使用者にはこれらの重労働から解放され、軽労化につながることも高く評価いただくことが多いです。
今後もより多くの方にリゾケアをお届けできるよう、現場に寄り添って我々が直接生産者をフォローしながら販売エリアを拡大していきます。
バイオスティミュラントは、非生物的ストレスに対する植物耐性の強化や養分の利用効率改善が期待でき、植物の健康状態に貢献する重要な事業領域であると考えています。
その皮切りとして、シンジェンタジャパンの最初のバイオスティミュラント製品であるアビオスリーを昨年12月に北海道で先行販売しました。この製品は、主に大豆、てん菜など畑作物に使用することで各種ストレス環境下での生育を改善し、収量の安定化・向上が期待できる製品です。
一方、弊社ではクルーザーMAXXという種子処理用農薬を販売しており、特に大豆で多くの生産者にご使用いただいておりますが、アビオスリーはクルーザーMAXXとも相性が良く、組み合わせてお使いいただくことでより安定した効果が期待できると考えています。
今後の製品についてもバイオスティミュラント製品を独立した製品として捉えるのではなく、農薬を含む栽培プログラムの一部として提案していくことを目指したいと思います。
バイオスティミュラントは農薬ほど評価方法が確立しているわけではないので、生産者に寄り添い、納得いただくことが重要です。展示圃を中心に地道な方法での普及を行っており、これは、リゾケアにも通じる方法です。これまでの農薬の売り方とは違うマインドが必要だと思っています。
――改正基本法とも関連しますが、みどりの食料システム戦略への御社の対応方向についてお聞かせ下さい。
みどりの食料システム戦略が掲げる、食料・農林水産業の生産性と持続性の両立をイノベーションで実現する戦略は、シンジェンタが目指す持続可能な事業の柱と基本的には同じであると考えており、違和感はありません。
具体的な取り組みとしては、たとえば青森県の「ながいも根腐病に対する土壌くん蒸剤の代替防除技術」でのユニフォーム粒剤の使用や、福島県喜多方農業普及所でのリゾケアXLを活用したドローン直播と14日間以上の長期中干しの組み合わせによる水田からのメタン発生量削減など、グリーンな栽培体系への転換サポート事業としての取り組みなどがあります。これにはしっかり取り組んでいきたいと考えています。
――最後にJAグループに期待することをお聞かせ下さい。
JAグループは世界的に見て非常に価値のあるユニークな存在だと思っています。私の海外での経験からしても、JAグループが持っている資材の調達から生産物の販売までの網羅的な機能を全国で提供できる組織は他国ではないのではないでしょうか。
日本の農業は、ビジネスとしてだけではなく社会の一部として機能しており、農村の繁栄と農業の課題解決においてはJAが中心となって主役として活躍していくことを期待しています。また、若い人たちが魅力を感じるような「夢のある農業」「かっこいい農業」の実現に向けた訴求にも注力いただくことを期待します。
我々も日本に根を下ろした日本の農業に貢献していく企業として、生産者に寄り添った魅力的なソリューションを農業現場に提供し続けることでお役に立ちたいと考えています。
【シンジェンタジャパン株式会社】
「植物のちからを暮らしのなかに」という企業目的のもと、100カ国以上の地域で事業を展開するシンジェンタグループの日本法人。2001年ノバルティスアグロ株式会社とゼネカ株式会社が合併し発足。同年株式会社トモノアグリカの株式100%取得、2010年にシンジェンタシード株式会社を吸収合併し現在の体制に至る。生産者向けのソリューション提供を担うアグリビジネス事業、種子・種苗を展開する野菜種子事業、ゴルフ場やシロアリ防除等をはじめとするプロフェッショナルソリューション事業の三つを通じて、人々の豊かな生活に貢献できる総合的な価値提案を行っている。
【略歴】
(こばやし・ひさや)1991年早大政経学部卒。(株)トーメン(アリスタライフサイエンス前身)に入社。2014年アリスタライフサイエンス(株)代表取締役社長・アジア地域責任者。2019年ユーピーエルジャパン合同会社社長兼務。2023年9月1日、シンジェンタジャパン代表取締役社長。
重要な記事
最新の記事
-
新春特別講演会 伊那食品工業最高顧問 塚越寛氏 社員の幸せを追求する「年輪経営」2025年2月5日
-
新春の集い 農業・農政から国のあり方まで活発な議論交わす 農協協会2025年2月5日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】通商政策を武器化したトランプ大統領2025年2月5日
-
「2024年の農林水産物・食品の輸出実績」輸出額は初めて1.5兆円を超え 農水省2025年2月5日
-
農林中金が短期プライムレートを引き上げ2025年2月5日
-
トラクターデモにエールを送る【小松泰信・地方の眼力】2025年2月5日
-
時短・節約、家計にやさしい「栃木の無洗米」料理教室開催 JA全農とちぎ2025年2月5日
-
規格外の丹波黒大豆枝豆使い 学校給食にコロッケ提供 JA兵庫六甲2025年2月5日
-
サプライチェーン構築で農畜水産物を高付加価値化「ukka」へ出資 アグリビジネス投資育成2025年2月5日
-
「Gomez IRサイトランキング2024」銀賞を受賞 日本化薬2025年2月5日
-
NISA対象「おおぶね」シリーズ 純資産総額が1000億円を突破 農林中金バリューインベストメンツ2025年2月5日
-
ベトナムにおけるアイガモロボ実証を加速へ JICA「中小企業・SDGsビジネス支援事業」に採択 NEWGREEN2025年2月5日
-
鳥インフル 米オハイオ州など5州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年2月5日
-
鳥インフル ベルギーからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年2月5日
-
JA全農と共同取組 群馬県産こんにゃく原料100%使用 2商品を発売 ファミリーマート2025年2月5日
-
「食べチョクいちごグランプリ2025」総合大賞はコードファーム175「ほしうらら」2025年2月5日
-
新潟アルビレックスBC ユニフォームスポンサーで契約更新 コメリ2025年2月5日
-
農業分野「ソーシャルファームセミナー&交流会」開催 東京都2025年2月5日
-
長野県産フルーツトマト「さやまる」販売開始 日本郵便2025年2月5日
-
佐賀「いちごさん」表参道カフェなどとコラボ「いちごさんどう2025 」開催中2025年2月5日