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リジェネラティブ農業 テーラーメイド化軸に 「健全な土」から バイエルクロップサイエンス・大島美紀社長に聞く(1)2024年12月26日

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バイエルクロップサイエンスは11月の事業戦略発表会で土壌の健全性改善への取り組みなどを通じた持続可能な農業をめざす「リジェネラティブ農業」の考え方を打ち出した。同社のめざす事業について6月に就任した大島美紀代表取締役社長に聞いた。

バイエルクロップサイエンス・大島美紀社長

バイエルクロップサイエンス・大島美紀社長

――大きな転換期にある日本の農業の課題、進むべき方向をどのように見ておられますか。

食料自給率の向上は以前からの問題ですが、今回の基本法改正で食料の安定供給から安全保障へ、農政も一歩踏み込みました。一方、バイエルはミッション「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」のもと、早くからイノベーションとサステナビリティを中心戦略に据えソリューション開発を行ってきましたが、クロップサイエンス部門では気候変動や生物多様性の観点から「より良い収穫を、さらに環境再生を」を事業ビジョンに掲げ、従来のサステナビリティからリジェネラティブ農業へと戦略をステップアップしました。

当社の様々なソリューションは、農政の取り組みとアラインした形で提供できます。それは農薬使用量の削減やイノベーションの開発だけではなく、例えば今回発表したカーボンフットプリントの算定・可視化を通じた「みえるらべる」取得によるブランド化、ひいては生産者の収益性強化への貢献、生産者の顧客である消費者への新たな価値提供にもつながります。参加共創型のオープンプラットフォームを通じて、バリューチェーン全体で適正価格の実現も含めて取り組めることが大きいと考えています。

――カナダの農業者に話を聞いたとき、不耕起栽培こそリジェネラティブだと語っていました。リジェネラティブの考え方についてはどのように定義されているのでしょうか。

世界的な農業大国の南北アメリカ大陸の農場は大規模で、かつ単作が主体です。土壌流亡性の問題があるため不耕起という考えが出てきました。

一方、バイエルが目指すリジェネラティブ農業は一番に土壌の健全性ですが、日本では地形の違いや、降水量も比較的多いことから土壌流亡性の問題はこういった地域に比べると大きくありません。日本ではまず我々がソリューションを持ち、市場規模の大きい水稲分野における課題解決に向け「水田雑草 テーラーメイド防除」中心にリジェネラティブ農業をめざしています。

サスティナブルは環境への負荷を減らすことにとどまりますが、リジェネラティブは再生まで見据えています。私たちは、農業をより生産的で持続可能なものに変革し、トータルでプラスの影響を環境に与えることを目指し、世界的にリジェネラティブ農業を推進しています。同じリジェネラティブでも各社が保有するソリューションによってその定義や注力領域は異なります。バイエルにもバイオスティミュラントや生物農薬はありますが、テーラーメイドという考え方は他社にはなく、そこを軸に生産者とそのコミュニティーの経済的・社会的ウェルビーイングまでを見据えたソリューションを展開していることが当社の特徴として挙げられるでしょう。

――実際の水田を見ると隣り合った水田でも雑草が全く違っていました。

虫や菌は飛んで広がりますが、雑草は種なので隣の水田でも異なる草種が発生することはよくあります。従来は利便性を追求し、複数の有効成分を含む混合剤を使用し1度の作業で全ての雑草を防除するため、過剰あるいは不要な投下量になっていることもありました。テーラーメイドであれば、ほ場に合った薬剤を選ぶことで環境負荷も抑え、除草効果も期待できます。

――そのためにも混合剤ではなく単一成分剤ということですね。そしてレシピはデジタル技術が担うのですね。

単一成分剤は処方に応じて量を調整できます。デジタル技術の「my防除」では雑草の発生状況や田植え時期、水を入れるタイミング、面積などを入力すると、ほ場ごとに合った成分や量・タイミングの処方提案ができます。単年度ではなく何年かかけて不要な農薬散布を減らし最適化することが一つの狙いです。

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