リジェネラティブ農業 テーラーメイド化軸に 「健全な土」から バイエルクロップサイエンス・大島美紀社長に聞く(2)2024年12月26日
バイエルクロップサイエンスは11月の事業戦略発表会で土壌の健全性改善への取り組みなどを通じた持続可能な農業をめざす「リジェネラティブ農業」の考え方を打ち出した。同社のめざす事業について6月に就任した大島美紀代表取締役社長に聞いた。
バイエルクロップサイエンス・大島美紀社長
――種子処理による病害虫防除技術についていかがでしょうか。
育苗箱に薬剤を処理することで本田に入らずに病害虫を防除する技術はかなり以前から提供していますが、水稲種子処理「バイエル シードグロース」は、薬剤を種子に直接粉衣する新しい技術です。田植え時期は忙しいため、種子への粉衣処理を冬場の農閑期に行うことで作業時間を分散することもできます。また、市場では殺菌剤と殺虫剤の混合剤が主流ですが、単一成分の薬剤を使用すれば地域に合わせて成分量や濃度も変えられます。これもテーラーメイドの考え方に基づくものであり、処理された種子は直はすることもでき省力化にもつながります。
――「みどりの食料システム戦略」では2050年まで農薬の使用量をリスク換算で50%削減することが目標です。
バイエルの本社があるドイツは、みどり戦略の源流ともなっている欧州のグリーンディールの方向性に沿って開発戦略を立てるため、もともと進もうとしていた方向とみどり戦略が目指す方向は一致しています。同時に、みどり戦略の有無にかかわらず、私たちは農薬メーカーとして安全性の追求は最も重要であると考えています。私たちは研究開発の段階で安全性の基準を高く設定することで、既存の薬剤と同じ効果を持ちながら人と環境への影響を削減する製品を開発してきました。日本においてもADI(一日摂取許容量)に基づいたリスク換算で、2002年比で75%の削減を実現しています。この間、新たに17の有効成分を上市し、安全性の低いものから高いものに順次置き換えるポートフォリオの更新を行っていました。私たちは「新規資材の開発と使用方法の見直し」、「テーラーメイド化による農薬使用量の低減」、さらには「共創によるソリューション開発と新たな価値創出」の三つを柱とし、環境負荷低減と作業者の安全性のさらなる向上に向けて努力を続けていきます。
――みどり戦略では、2050年までの農林水産業のゼロエミッション化も掲げています。
バイエルでは、全世界で2030年までに「作物1キロあたりに排出される温室効果ガス30%の削減」を目指しています。日本では水田を中心に、メタンガス削減に向け「中干し期間延長」を活用したソリューション提案を行っています。ウォーターセル社の営農支援アプリ「アグリノート」や、グリーンカーボン社の中干し延長によるカーボンクレジット認証取得を支援する「アグリーン」とシステム連携することで、中干し延長時における処方提案を通じた最適防除から、カーボンクレジットの創出・申請・登録・販売を一気通貫で実現します。また、2024年にはゼロボード社の協力を得て、「水田雑草 テーラーメイド防除」におけるカーボンフットプリントの算定・可視化を行い、高濃度フロアブル製剤の採用によるボトルの小型化が温室効果ガス削減に貢献することを特定しました。私たちは数値化したデータ分析を通じて、脱炭素と生産者の収益性強化を両立するソリューション開発に注力していきます。
――担い手の減少や大規模化で農家も経営の高度化が求められており、JAグループの果たす役割は大きいと思います。
JAグループは日本の農業にとって必要不可欠な組織でありキープレイヤーです。担い手が減少するなかでの生産性向上、さらに生産物の単価にも反映できる循環をどのように作るか、我々も方向性は同じですから、日本の農業の課題解決に向けてともに取り組んでいきたいと考えています。
とくにJA主体で地域の農業全体のデジタル化などに取り組まないと、将来さらに農地を集約しなければならない時にまた課題となりますから、JAグループの力は今後の日本農業にとって欠かせないと思っています。
おおしま・みき 筑波大学環境科学研究科修了。1992年4月バイエルクロップサイエンス㈱(旧:日本バイエルアグロケム㈱)入社。2015年1月同社管理本部副本部長、7月執行役員管理本部長、20年1月ビジネスファイナンス本部長、24年6月代表取締役社長。
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